第十二回 住出勝則


 
 
 

つい最近、ひょんな事でこの住出勝則というギタリストと知り合いになった。
実はこれまで彼については全く知らなかったのだが、
それこそ '70 年代から音楽活動を続けている長いキャリアの持ち主である。
最初は " シグナル " という、知る人ぞ知るフォーク・グループに参加し、
アルバムをリリースしたり、コンサート活動も積極的に行ったそうだ。
その後は多くの歌い手達のバック・アップ・ミュージシャンを務めていたが、
'96 年に日本を離れオーストラリアに移住する事になる。
現在はメルボルン在住で、現地で音楽活動を続けている。
僕が彼に興味を持ったのは、オーストラリアに移ってから
ギター・ミュージックに目覚めたという事だ。
彼はこれまでに、最新盤を含めて3枚のギター・ソロ・アルバムを
自主制作でリリースしている。
海外で生活しながら好きな音楽活動を続けるのは大変な事だと思うが、
CDを聴く限りその事がプラスになり、楽曲やギター・プレイに反映されているように思う。
つまり上っ面のギター・ミュージックではなく、
実にドッシリとした本物のギター・ミュージックなのだ。
日本でソロ・アコースティック・ギタリストと呼ばれているプレイヤーを
何人か知っているが、皆、自分のアイデンティティがはっきりしない、
ただ耳障りの良いギター・ミュージックを奏でているだけである。
だから彼らのプレイには音に色艶がないし、表現というものが解っていない。
これでは真のリスナーには何も伝わって来ないだろう。
(ミーちゃん、ハーちゃんには支持されるだろうけど、
アーティストとはアイドルじゃあないのだから。)
住出君の作品を最初に聴いた時、あまり日本的なものは感じられなかった。
でも100%欧米的なのかといえばそうでもない。
タッピングやボディ・ヒッティングと言った新しい奏法が多用されているけど、
よく聴くと独特の乗りがあって、欧米人のグルーヴ感とは微妙に違っているのだ。
リズミックな楽曲でも心地良い隙間がある。
こんなプレイの出来る日本人のギタリストに初めて出会った。
そして何よりも感じるのは、ギター・プレイが唄っている事だ。
歌心のあるソリストに出会ったのは久しぶりである。
一度オン・ステージでの彼のプレイを聴いてみたい。
 


 

この " Ain't Life Grand " は住出君の4枚目のアルバムで、
2002年の春先に東京のスタジオでレコーディングされている。
前作の " Shadow Dancer " がリリースされたのが 2001 年なので、
約1年ぶりのアルバムという事になる。
アルバムのトータルなイメージは、住出君お得意のスラッピング・ギターが
縦横無尽にフィーチュアーされていて、
その日本人離れした乗りは前作以上に素晴らしい。

今回は彼の昔からの親しいエンジニアがレコーディング・エンジニアを務めていて、
これまででベストのサウンドに仕上がっている。
住出君は所謂、肉弾き(爪を使わない)のフィンガー・ピッカーなのだが、
そのハギレの良さが見事に生かされているレコーディングである。
個人的には3曲目の " If I Know The Way " のようなジャズ・バラードや
ラスト・ナンバーの " This Side Of Eden " のような不思議な曲が好きである。


 

住出勝則

" Ain't Life Grand "

Solid Air Records  SACD 2030



 

  1. Ain't Life Grand
  2. Acoustic Funk
  3. If I Know The Way
  4. Gentle Persuasion
  5. Don't Turn Me Off
  6. Homecoming
  7. Breathless
  8. Afterglow
  9. It Takes Two
10. Groove Thing
11. This Side Of Eden


 
 

最近になって日本に帰国し、再度コンサート活動などを再開されてるので、
今後ライブなどでより身近に彼のギター・ミュージックに接する事ができるでしょう。
又、彼のウェブ・サイトも新しくなったので、
以下のアドレスをチエックしてみて下さい。

http://www.h5.dion.ne.jp/~sumide/
 

住出勝則さんのCDはプー横丁でt取り扱っています。
http://www.h2.dion.ne.jp/~slice/pooh/