第三十六回 ウー・ファン

何年か前に行着けのCDショップでたまたま彼女のCDを見つけ、
その確かなプレイと、その中国古筝の美しい音色に感動してしまった。
1998年にリリースされた" 上海的夢幻 " というそのアルバムは、
彼女の2nd アルバムで、僕の好きな " 何日君再来 " が入っていたので
興味を持ったのだ。
バイオによると、中国の上海に生まれた彼女は9歳から中国古筝を習いはじめ、
それも王晶元という中国古筝の第一人者から手ほどきを受けたという。
その後、上海音楽学校に入学し、古筝を中心にピアノや西洋音楽のセオリーなどを学び、
1990年に同校を首席で卒業したという。
そして日本にやって来た彼女は京都の立命館大学に入学し、
勉学の合間をぬって各地でコンサート活動を続け、その音学性の素晴らしさもあり、
多くの人達から絶賛される。
1996年に大学を卒業した彼女は、より積極的に音楽活動を初め、
同年に東芝EMIから1st アルバム " 筝心 " をリリースし、メジャー・デビューする。

これまでに5枚のアルバムをリリースし、最近はコンサートにも力を入れているようで、
とてもエネルギッシュな活動をしているが、願わくば自身の作品をもっと発表して欲しい。
そして日本人に近いような感覚での作曲やプレイはして欲しくない。
シンセのK、オカリナのS, 雅楽のTといったエセ・アーティスト達の
上っ面だけのオリエンタル・ミュージックが良い例だ。
彼らの音楽からは民族の持っている血とか魂というものを感じる事が出来ない。
それらは単なる耳障りの良いビジネス・ミュージックでしかない。
彼らの音楽にはどうして隙間というものがないのだろう。
隙間から感じられる余韻とかワビ、サビというものが日本人にとって最も大切なものなのに。
西洋音楽との融合を否定するつもりはないが、彼らは何か勘違いしている。

ウー・ファンさんの作品やプレイを聴くと、何か魂を揺さぶられるというか、
心底ホッとする。そんな彼女こそ本物のアーティストと呼べる。
頭の中だけが気持ち良くなってもだめなのだ。
ヒーリング・ミュージックだか何だか知らないけど、
ミュージック・ビジネスが作った中身のない音楽にはもううんざりだ。
 


 

この " 花様芳華 " は2002年にリリースされたウー・ファンの新しいアルバムで、
初めて本人がプロデュースしている。
これまでのアルバムは中西俊博、東儀秀樹といった面々がプロデュースしていて、
あまり彼女が生かされていなかったという印象が強い。
彼女の作品やプレイにはあまり大袈裟なアレンジは必要ないと思うのだが・・・。
そういった意味でこの新しいアルバムはとてもシンプルで、
僕としては初めてじっくり聴く事が出来た。
ただ願わくば、東芝EMIに一言、彼女のサウンド・メイキングを
もっと深い所で取り組んで欲しい。
何故なら中国古筝という伝統楽器のレコーディングというのは、
ただ綺麗なサウンドに仕上げれば良いというものではない。
彼女の息づかいや指のタッチまでが再現されて、初めてウー・ファンという
中国古筝のプレイヤーがアーティストと呼べる存在になる。
生身の人間がプレイする楽器のレコーディングについては、
その辺りが最も難しいし、大切な部分でもある。
それにしても彼女のプレイする21弦筝は、日本の琴とは何か違う。
それは技術なのか、民族の血なのか僕には判らない。

個人的には阪神淡路大震災で亡くなった、彼女の姉さんを想って書かれたという
" 彩虹橋 " や " 終曲 " が好きだ。


伍芳

" 花様芳華 "

東芝EMI TOCT-24742



 

  1. 彩虹橋
  2. 終曲
  3. PURPLE SUNDOWN
  4. 童心 ーFANTASIA-
  5. 紅楼夢
  6. Dong Zu Wu Qu
  7. 竹田の子守唄
  8. 流星
  9. 但願人長久





ウー・ファンの全てのCDは東芝EMIからリリースされていて、
普通のCDショップで手に入れる事が出来ます。