第三十八回 ユーリ・ナウモフ


 

このロシア生まれのギタリストの事を知ったのはつい最近のことで、
それも6月にライブ・コンサートで来日するので、
僕にゲストとして出演して欲しいという連絡が入ったのである。
早速、彼のCDが送られてきたので、とりあえず聴いてみる事にした。
彼は9弦のスティール・ストリングス・ギターを愛用していて、
エフェクターを多用したそのサウンドは懐かしさと新しさが同居した非常にユニークなものだった。
最近ではソロ・アコースティック・ギター(エレクトリック・アコースティック・ギター)に
ディレイをかけるギタリストはほとんど居ないと思っていたので、
彼のソロ・プレイはとても新鮮に聞こえたのである。

1962年にロシアのシベリアで生まれた彼は、8歳からギターを弾き始めたそうだ。
旧ソ連時代は西側の音楽を聴くことは許されていなかったので、
密かにアンダー・グラウンドで出回っていたビートルズやレッド・ツエッペリンのテープを
愛聴していたという。
その後、ミュージシャンとして活動を始めたのはいいけど、
いつもKGBから監視されていたという。
それでも安全に活動できる場を探して、セント・ペテルスブルグやモスクワまで移動したそうだ。
でもいつもアンダー・グラウンドで活動する事に疲れた彼は
28歳になった1990年にアメリカに移住することを決意する。
現在はニューヨークに住んでいて、地元のクラブなどを中心にして活動しているようだ。

これまでに4枚のアルバムをリリースしていて、1986年に初めてのアルバム
" 1000 Day Blues " を旧ソ連でリリースし(後の1997年にアメリカでCD化されている)、
1996年には2枚目の " Violet "、そして2000年には初めてのライブ・アルバム
 " Moscow Boogie " をモスクワでライブ・レコーディングしている。
ここで取り上げている " Guitar Stories " は2001年にリリースされた、
彼の4枚目のニュー・アルバムである。
1曲目の " Sneaky Blues " は彼のトレード・マークとでも呼べそうな豪快な
アップ・テンポの楽曲で、ディレイ効果を巧みに使っている。
3曲目の " Water " での曲想やギター・プレイはエイドリアン・レッグに通じるものがあり
、細かいアルペジオを上手く組み込んだ小作品である。
5曲目の " October " はいかにもヨーロッパのアーティストが書いた楽曲で、
その哀愁を帯びたメロディが印象に残る。
8曲目の " To the Angel of St. Petersburg " では彼の個性的なヴォーカルが聴ける。
全体に楽曲によっては、彼自身のオーヴァー・ダビングによるサウンド・メイキングが成されていて、
彼のマルチ・プレイヤーとしての才能を垣間見る事ができる。
それにしても9弦ギターといい、何とも不思議なギター・ミュージックを聴かせてくれる
ユーリ・ナウモフというギタリスト。今後、注目して良いかも知れない。


Yuri Naumov

" Guitar Stories "

Yuri Naumov  YN 03


  1. Sneaky Blues
  2. Swinging Cat
  3. Water
  4. Ping Pong Blues
  5. October
  6. Night Pub
  7. Night on the Highway
  8. To the Angel of St. Petersburg
  9. Breaking from the chase
10. December night by the fireplace
11. New York, 5th Avenue
12. April Night




ユーリ・ナウモフのCDは自主制作盤なので入手は困難だと思いますが、
彼のオフィシャル・ウェブ・サイトがあるので、
そこに4枚のアルバムの購入方法が書かれています。

http://www.russianblues.com