沖に停めたレッドフォース号艦内の会議室では副船長の指導の下、航海士たちが海図を製作していた。
ドカーン!
轟音が室内の空気をビリビリ震えさせた。
「敵襲!?」
その場にいた殆どの船員たちが身構えた。
「いや、俺たち以外の気配はないな」
副船長が見えない船外の動きを察知して伝えた。
「俺が見てくるから、そのまま続けてくれ」
彼は煙の軌道を残しながら船室を後にした。
甲板では野次馬が集まっている。副船長は野次馬たちの視線の行方を追った。視線の集中する先に帆桁の
間を猿のように飛び回る赤い髪の人影。騒ぎの原因はやはり船長にあるらしい。副船長は古参幹部たちのい
る群に歩み寄った。
「どうした?」
「副船長、それが…」
幹部は事の次第を説明した。副船長の顔が次第に歪んでいったかと思うと目と口があんぐり開いた。
「子供か!」
「ですヨネ〜」
側で肉を毟るルウが合いの手を入れた。
「ヤソップさんが捕縛団(網が飛び出す特殊砲弾)や麻酔弾で狙っても避けられちまう始末なんでさ」
黒い短髪の大男エイプがぼやきを溜息で締めくくる。彼の脇にいた大猿が両肩をすくめてみせた。
「もう立派な中年だってのに、身体能力がさらに上がってるな…」
副船長は呆れながらも感心した。
「やっぱり、力ずくでってのは無理だろうな」
艦内一の頭脳の持ち主が紫煙と共に結論を出す。
そこにいた船員たちが最後の頼みの綱と見込んで一人の男に視線を集中させた。彼もそれに気づかぬ男では
ない。何かを諦めたかのような顔で彼は答える。
「…説得する方法が無いワケではないがな…」
「本当っすか?」
幹部たちが副船長への期待にどよめく。
「何とかして船長室まで追い込んでくれ。部屋に入ったらその場を離れろ。俺が良いと言うまでは近づくな」
「アイアイ!」
その場にいた全員が返事と同時に動き出した。
必死に逃げる船長は追い込まれているとも知らずに自室に飛び込んだ。
バタンと閉めた扉の後ろから背の高い相棒が現れ、シャンクスは驚いて飛び上がった。副船長は間髪を入れず
ドアに閂をかけた。
「聞いたぞ。歯の治療が嫌で逃げ回ってたんだって?」
呆れ顔で副船長は問いかけた。シャンクスは口を尖らせる。
「治療はするよ!するけどさ、でもそれは今日じゃない」
副船長の無い片眉がつり上がる。
「何で今日じゃ駄目なんだ?」
「そういう気分じゃねぇの!」
シャンクスは膨れっ面を背けた。
「子供か…」
副船長は大きな溜息を吐いた。
シャンクスが相棒を横睨みする。
「お前、アイツらに言われてオレを歯医者んとこまでつれてく気なんだろ?そうはいかねぇぞ」
船長の牽制を副船長は鼻で笑う。
「そんな事するだけ時間と労力の無駄だ」
「へ?じゃあ、なんでお前ココにいんの?」
シャンクスがぽかんと口を開けた。
「船員たちに追いつめられてる船長殿を休憩ついでに慰めてやろうかと思っただけさ、ただの気紛れだ」
副船長独特の余裕と色気を含んだ返答にシャンクスは思わず生唾を飲んだ。
「…そっ、そんなウマイこと言って、油断させてルパンダイブしたオレに麻酔注射するつもりだろ!」
シャンクスは動揺しながらもそっぽを向いた。
「何だ?ルパンダイブって…そんな事考えちゃいねぇよ」
副船長は本当に分からないという表情を浮かべた。
「本当か?」
シャンクスは疑ぐり深い視線を相棒の瞳に向ける。ベックマンが両掌を見せ、何も持っていないことをアピー
ルした。
「じゃあ、気が済むまでボディチェックでも何でもすればいいさ。それで?俺が脱ぐ?あんたが脱がせる?」
選択肢を迫る口調がやけに挑発的で、シャンクスの心はかなり傾いた。
「…それじゃ、脱いでもらおうかな」
口の端をつり上げてシャンクスが答えた。
ベックマンはまず重いブーツを脱ぐ。彼のサッシュにいつもの銃は既に無かった。腰のサッシュを外すと、
そのまま床に落とす。次に黒いシャツを捲り上げて捨て、カーゴパンツも下ろして全裸になって見せた。シャンク
スが信じられない事態に呆然としながらも恋人の
裸を見つめる。
「…」
「で?どうする?」
ベックマンがシャンクスの頬にそっと手を添えた。
「いや、待て!油断したオレに眠り薬を口移しで飲ませるつもりなんじゃ」
「今日は変に疑い深いな」
副船長が頭を掻いた。
「口に薬仕込んでないか調べさせろ」
「どうぞ」
シャンクスは恋人の口に指を挿し入れた。歯茎の隙間に指を滑らせると、からかうように恋人の舌が彼の指を
絡めとる。シャンクスの息が次第に荒くなってきた。彼はシャンクスの手を取って口の中から指を引き抜き提案する。
「どうせなら、奥まで調べろよ。もっと簡単な方法があるだろ?」
ベンはその場に跪き、シャンクスのサッシュ下に手を添えた。もう十分に硬く反り立ったものを彼は手で探り
出して剥き出しにした。
「はっ!?…」
シャンクスは最も鋭敏な箇所を熱い口内に取り込まれて身震いした。彼の眼下には信じ難い光景が広がっている。
”真っ昼間から全裸でフェラって、どんだけサービスしてくれるんだよ!?いつもこうならいいのに…”
予想外の快楽にシャンクスの疑念や理性は風前の灯火同然だった。だが、忘れるなよと言わんばかりに口内の
炎症がチクチクと彼の右頬と顎を突く。
「口に仕込んでないのは分かった…」
シャンクスが銀髪に指を差し入れてそっと恋人の頭を自分の体から離した。
シャンクスは枕の下や毛布の下に何も無いか確認してから、恋人の腕を掴んでベッドまで引っ張った。
「どこまで疑えば気が済むんだ?」
ベンは苦笑しながら仰向けになる。
「乗っかったトコを麻酔注射されたら嫌だからな」
シャンクスは恋人の上で体を伸ばし、ベッドの棚から男同士の情交に欠かせない二品を手に取る。
ベンがシャンクスの手から小さな四角の薄い包みだけをそっと指で挟んで取り上げた。
「これはつけなくてもいいぜ」
ベンは余裕の笑みを見せる。
「お前、とうとう子ども欲しくなったのか?」
シャンクスが真顔で驚いた。
「出来るか!」
恋人が顔を赤くしてツッコミを入れた。
シャンクスは片手と口で開けた潤滑剤を恋人の腹の上に絞り出す。ベックマンの表情が微かに乱れた。腹の上で
擽るように指に絡め、前に反り起った二人分を一掴みにして擦る。
ベンは長い脚を開いてシャンクスの腰に回した。
「時間がないんだ、さっさと来い」
シャンクスの鼻息が荒くなった。
「だからぁ、そういう時は『早くぅ』って、言えって」
ほくそ笑んだシャンクスが滑る指で後ろ側を馴らし始めると、ベンの呼吸に僅かな嬌声が混ざっていく。
挿入られる瞬間のベックマンは顔を横に背ける。そこだけはいつもの光景と変わらなかった。何もつけていない
シャンクスの中心は直に恋人の熱さに触れた。
快楽に目を閉じたシャンクスの表情を相棒は悟られぬよう密かに下から伺う。
腰を入れて穿ち出すと二人の息が上がる。数回の波の後、シャンクスは突然動きを止めた。彼は額に脂汗を浮か
べて苦悶に顔を歪めている。
「いっ痛ぇ…、半端なく痛え!」
シャンクスの右顎を槌で殴られるような凄まじい痛みが襲った。痛みは脈と同じリズムで早鐘を打つ。
「悪い!これ以上は無理!」
シャンクスは相棒から体を離そうとした。だが、相棒はシャンクスの体を脚で絡め取ったまま、器用に上下を
反転させた。シャンクスの柱はまだ硬さを保ったまま相手の体内に在った。
「どうした?いつものようにイかせてくれよ」
ベンは挑発するように騎乗位で腰を揺らした。
「無理!痛たたたた!!」
暴れるシャンクスの上でベンは苛み続ける。目の端に涙を浮かべるシャンクスに、彼は覆い被さるように体を
前傾させた。垂れる銀髪を指で掬い上げながら彼は語りかける。
「もう何年前になるかな。あんた、痛がる俺に無理矢理のし掛かってきたよな?あの時、俺は処女だったのにさ」
上からは痛みの波、下からは快楽の波、耳からきわどい言葉責めを受けてシャンクスの頭は混乱で破裂寸前だった。
「ぅっ‥わっ!分かったから降りてくれ!治療でも何でもするから!」
シャンクスが情けない声で降参した。
ベンは体を離すと錠剤と水筒を差し出した。
「ほら、痛み止めだ」
シャンクスは錠剤を口に放り込まれ、為されるがまま水筒の水を飲んだ。薬は信じられない早さで効き目を現し、
次第に痛みが治まってきた。体を丸めてうずくまっていた彼は顔を上げてベンに抗議する。
「…お前、こうなることが分かってて『つけなくていい』とか言ったのかよ!こんの性悪!」
「普通に考えれば分かりそうなもんだけどな」
何事も無かったかのように服を着終えたベンは暢気に一服しながら答えた。
「それで何時治す?明日か?明後日か?」
ベンが意地の悪い笑みを浮かべながら質問した。
「今日中だ!それで文句ねぇだろ!」
シャンクスはキレながら答えた。
シャンクスは自ら歯科医の待つ医務室に駆け込んだ。その様子を目の当たりにした船員たちは「奇跡だ」「副船長
マジックだ」のと口々に囃し立てた。
シャンクスは船縁に座り、氷嚢で頬を押さえていた。副船長が様子を見に来た。
「どうだ?」
「完治は数日後だってさ…」
シャンクスはふてくされながら答えた。彼は向き直って相棒を睨む。
「治ったら覚えてろよ?たっぷり仕返しさせてもらうからな」
「ああ、そうだな。俺からも快気祝いにサービスしてやるよ。色々と」
ベックマンは一瞬だけ艶めかしく微笑んでその場を去っていった。
シャンクスはしばらくその場から動かなかった。いや、動けなかったのだ。体の一部が言うことを聞かなくて。
”色気もここまでくると凶器だな…。どこまでリーサルウェポンなんだよ、アイツは…”