深夜特急2002冬「青年はコミケを目指す」
 旅立ちは、風が強く星の美しい夜でした。  同人を始めたとき、心配する母に私は言いました。  「来年の冬までは自分の好きにさせて欲しい」  出かける前日、  「これで終わりにするのよね」  母に背中から問い掛けられ  「うん」  と寂しげに返事をしました。     金曜日のぎりぎりまで働き、台所の洗い上げと炊飯器のセットも済ませ家を空ける 準備は済ませました。いつもそうなんですが、私は出かける前には家族のご飯を作っ たり、買出しなどをしなければなりません。つい先日も友人と出かけるとき、保温鍋 に家族4人分のおでんを作りました…。家には母も祖母もいるのですが、母は薬局で お客さんからの人気ナンバー1なので多忙、祖母は天才的な料理音痴、その息子であ る父はインスタント麺を水から入れる粗忽物…。まともなご飯が食べられるかどうか は私の肩に掛かっているわけで…。かつて同居していた兄は私の顔を見るたびに「飯 は?」それしか言いませんでした…。以前に私が猛烈な頭痛に見舞われて台所に立て なかった時、母は言いました。「晩御飯は出前とろうね」 …母さん、寂しいよ… (北の国から風に読んでください)私は学生時代に友人から「半学半主婦の兼業学生」 「未婚の主婦」等のあだ名をつけられました。  つまり、私はバイトしたり薬屋を手伝って働いて主婦もやって、その合間に一人で 本作ってイベントに参加してHPを更新していたわけで…(同じく北の国から風に)  私の愚痴はさておき、軽く風呂に入り、完全防寒の上出発。自宅から駅まで歩いて 5分の距離なんですが、父が車で送ってくれました。お父さんは心配性?。  駅で待つこと数分、夜行バス「伊良湖ライナー」1号車が2号車に遅れてお出まし。 席につくと。予め持参してきた「座席で首を固定するU字型空気枕」と「耳栓」をセ ットして就寝態勢に。バスには毛布が用意されているのが嬉しい心配り。私は電車や バスで眠ることはあまりしないタイプですが、疲れのおかげか熟睡した様子。なぜな ら、前席の人がリクライニングシートを下げてきたことに全く気付かずに、目覚めた ときに「おや?」と思ったからです。バスの中で夢まで見ました。コミケに行ったら 商業誌のような立派な本ばかりが並んでいて、「モノクロオフセットとコピー本しか ない自分はかすんでしまう」と魘された所で目が覚めると、既にバスは霞ヶ関まで来 ていました。  東京駅に付き案内アナウンスに誘われるままバスに乗ると、6時半近くにサークル 入場口に着いてしまいました。どうやら一番乗りグループになってしまったようです。 サークル入場は7時半からなので待ち時間を早速利用。用意していたミニパイプ椅子 (100円)に座ってこれまた持参のパンとコーヒーで腹ごしらえ。コーヒーはプラ スチック製の保温容器に入れてきたのですが、すっかりぬるくなってました。それで も湯気が立ってるってことは、気温は何度だったんでしょう?    約束の7時半を待たずに入場が許されて、場所に着くと周りに人はなくとても静か。 ここがやがて人ごみでごったがえすとは信じられないほどの静寂でした。  しかし、ここで一つミスを発見!何を忘れていたかというと、イベントの登録カー ドに書き込むのをすっかり忘れてました。しかも、名前の横には印の丸が…。しまっ たああ!でも、そう言えば宅急便で送った荷物の中に朱肉とオリジナル印鑑を入れて いた!そこで荷物を取りに行ってすぐに朱肉で拇印をしたのですが、後にサインのみ で可なのだそうで、拇印は必要ないとコミケスタッフに言われました。スタッフさん は「拇印の方が確実そうな気がするんですが、上の決定はサインで良いとのことでし て」と仰ってました。お手数をかけて済みませんでした。万が一登録カードに判を忘 れたら、サインでも良いそうです。一つ勉強になりました。  そして水智さん、ご来場。水智さまは残念ながら多忙により、新刊が間に合いませ んでした。大阪も同じです。お客様、ごめんなさい。私も読みたかったよう、水智さ んの新刊。さらに残念なことには流さんも冬コミご欠席。あう!  今日が最後になるかもしれないと、私はスケブを持参して好きな作家さんに描いて もらうんだと意気込んできました。1番に水智さんに描いてもらいました。自分だけ ちゃっかり頼んで描いてもらってしまってごめんなさい。水智さんだけでなく、他サ ークルに卒業アルバムのつもりでと無理を言ってお願いしました。ありがとうござい ました。おかげさまでシャン副マニアには垂涎の一冊となりました。私のお宝です。  やがて馴染みのの面々が登場。王様堂、ワイヤーストリップ、そしてシャン副では ないけれど東京ではいつも隣になるミホ副でスペース取得のTOD(敬称略)。  私はやおら地図を引っ張り出し  「今回の配置なんですが、またしても副シャンスペースと引き離されてるんですよ。 夏よりもさらに遠くなってるみたいで…」  と、今回もまた厳しい状況下にあることをシャン副会上層部に報告。  「陰謀だよ、これー」  「副シャンの近くにして下さいって懇願したんですけど」  「私も毎回書いてますけどね」  「私も書いてはみたんですが…」  「嫌がらせ上等ってか?」  でも、上層部はまだ良い方です。上層部の2サークルはお誕生日席と呼ばれる目立 つ場所ですが、曲がり角の私はシャン副スペースの中でも死角とも盲点とも言うべき 配置。王様堂、ワイヤーストリップを見てうちのスペースに気付きもせずに(いや、 興味ないから寄らないだけか?)去られてしまうこと多数。心の中で「うちもシャン 副なんですー!」と叫んでますが通じた試しはありません…。  今コミケでは児童ポルノ法で波紋が起きているのだが、我々はと言えば。  「児童ポルノって私たちには関係ないというか、相手にさえしてもらえない感じで すよね」  「あの若者漫画の中からわざわざオヤジキャラをチョイスするからマイナーになっ ちゃうんだよね」  「メジャーだと描き尽されてるし、萌えないし、マイナーだと売れないし」  マイナーの苦悩を切々と話し合う私たち…。   そして明らかになるシャン副サークル絶滅の危機!私はまだ描ききれていないので 止めたくはないのですが「ゲイの為なら老母も泣かす〜♪」と芸の道選んだ人でなし になりきることも出来ずイベント参加は自粛ムード。王様堂のミル姉さんは「海賊本 は売りたいけど新刊なしでイベントに参加するのが辛い」と悩み、ワイヤーストリッ プではジャンル替えのご様子。シャン副は絶滅の危機に瀕していた。プロジェクトX  話しているうちに、会場時間を迎え場内は大量の人が流れ込んで来ました。  今回は、あのナースマン副船長フィギュア(当HPのMUSEUM「11/4の幻」を参照) を連れて行ったのですが、周囲の人にウケました。お客様だけでなく、コスプレイヤ ーたちにもウケました。ゼフ(のコスをした男性)を「すごい…」と唸らせたり、ク ロコダイルとロビンに笑われたりと、目立たない場所なりにもアピール出来たようで す。中には「これ欲しい〜」と叫んでくださる方も。正直欲しい人にあげたいとは思 っていますが、彼には1月5日のミル姉さん代理としての任務が控えてますので…。  始めの一時間はお客様が来なくて「夏コミは全然だめだったからなぁ、今回も駄目 かなぁ」と不安になりましたが、お客様が来てくださいました。メールや掲示板で予 め「コミケに行きますね」とご連絡を頂いていた方々が本当に来て下さったことが嬉 しかったです。北は遠くシャン副最北支部のお友達から、四国からのネガ様に初めて 差入れを頂いて感激しました。応援メッセージを送ってくださった方も来て下さいま した。「更新を楽しみにしてます」との言葉が私を奮い立たせてくれます。  常連様だけでなく、新しい出会いもありました。新刊のエース×副はネットで知っ てる人しか買わないだろうと思って表紙はかなりシンプルにしました。それでもHP のことは知らなかったけれど「エース×副には賛成です」というお客様が即お買い上 げになりました。「エースは絶対副を狙ってたんだと思いますよ」とのお言葉。ああ、 奇跡に近い偶然だ。砂の中から宝石を見つけたような気分になりました。  先にも書きましたが、私の同人活動は一人ぼっちでゼロからのスタートで、周囲の 理解をほとんど得られぬまま、忙しい間を縫ってぎりぎりのものでした。それでも、 続いたのは、皆様からの感想やご意見があったからです。私の作品は同人誌を紹介す る商業誌には掲載されることもなく目立たず苦境にいます。その悪条件が、自分の目 で見て自分の考えと意見で本を選んでくださるお客様を獲得することに繋がったこと は私にとっては幸いでした。人気のあるものに闇雲に群がることのない、自分の意志 を持った人たちから頂く感想や意見は、何よりも次の作品の糧になっています。  逆に某大手サークルが逆カップリングを描いたことで読者から非難を浴びて、描き たいけれど描けなくなってしまったという話をミル姉さんから聞きました。しかし、 心の狭い読者さんたちだ。私なら憧れの作家様には好きなものを好きなだけ書いても らいと思いますけどね。  同人活動の幸せって何だろう…?、と深く考えさせられました。  今回は買う楽しみも有りました。某サークルの銀はがし籤に当たり、景品をGet! その銀はシャンクスの裸体の上に塗られていて…、もう皆さんお分かりですね。  午後2時を回り「コミケに行きます」とメールを下さったお客様が全員見えたので、 これで一段落かな、と私は帰りの支度に取り掛かりました。なんだかんだで宅急便に 荷物を預けたのが2時半。今回の帰路には海賊らしく船で、と水上バスに乗り込んで、 東京駅に向かいました。水上バスは海風が冷たいけれど眺めがいいし気持ち良かった です。橋の下を通るのがちょっとスリリング。浅草桟橋からJR浜松町駅までは少々 歩きますが空いているので気になりません。夏の行列の末に乗った電車とは雲泥の差 でした。  帰省ラッシュで帰りの新幹線は大混雑かと思いきやそうでもなく、悠々と帰宅する ことが出来ました。  お客様も少しずつではありますが増えつつあり、ようやくコミケを楽しむ余裕が出 て来たような気がします。お越しくださいましたお客様、私にお付き合いくださいま したサークルの皆様、本当にありがとうございました。  イベント直参部門は自粛ムードなのですが、来年の夏コミは委託コーナーにて新刊 を出すつもりです。これからの私の活動については、INFORMATIONで後日お知らせしま す。
LIBRARYへ戻る