LINEN WATER


 シャンクスは仏頂面でベッドから天井を眺めている。視線を降ろした先には仰々しいギプスに包まれた己の右足。
 溜息をつこうとした矢先に聞き慣れたブーツの足音が近づいてきた。遠慮がちなノックは眠っていることを考慮
したのだろう。
 「眠っちゃいねぇよ、入れって」
 副船長は小さな木製のバケツを持って部屋に入ってきた。その口には珍しく煙草がない。昼だというのに彼は戸
に鍵をかけた。
 「どうだ?調子は」
 「ホント、しくじったよ。骨にヒビいれちまうなんて」
 シャンクスは珍しく不機嫌だ。
 「あんたは詰めがあまいんだよ」
 ベックマンは苦笑する。
 「説教しに来ただけならとっとと帰れ」
 シャンクスは口を尖らせた。
 「非番に入る前の最後の一仕事が残ってんだよ」
 「仕事?」
 「船医に頼まれた。体を拭いてやってくれ。不機嫌なお頭に近づけるのは俺ぐらいなもんだから、とな」
 シャンクスの仏頂面は直らない。
 「そんじゃ、遠慮なく頼むわ」
 バケツの中の布を絞って、ベックマンはシャンクスの顔を拭いてやる。布は柑橘と薄荷の香りが微かに香った。
 「いい匂いだな」
 「少しリネンウォーターを入れてあるんだ。すっきりするかと思ってな」
 ベンがシャツのボタンを外し始めた。シャンクスはなすがままに任せながらもその口の端が不謹慎につり上がり
始める。そんな視線に全く構いもせず相棒はシャンクスの体を丹念に拭いていく。
 「なあ、終わったら松葉杖持ってきてくれよ。オレも港に降りたい」
 「いいから、病床(ここ)にいろ。用事は言いつけりゃ良い」
 ベックマンの言葉に怒気がこもる。
 「退屈なんだよ」
 返答にも同じく怒気が滲んだ。
 「じゃあ、ここに居たくなるようにしてやるよ。それでどうだ?」
 ベックマンの手がシャンクスのズボン上の股間に伸びた。額が近づき視線がかち合う。
 「そりゃぁ…いいね」
 シャンクスが満面の笑みを浮かべた。
 相棒はズボンと下着をギプスぎりぎりまで下げて腰、脚、尻を拭いた。前の部分が反り立ちながら仕事が終わる
のを待っていた。最後にそれは濡れた布で丁寧にふき取られた。拭き取られたそれをベンが口で包み込んだ。
 シャンクスが銀髪の頭を撫でた。
 「下を脱いでこっちに上がれって」
 ベンは言われるままブーツとズボンを脱いでベッドに上がり、シャンクスに尻を向けるように跨り彼の股間に頭
を埋めた。シャンクスは枕下からいつもの閨房用の油瓶の口を歯で開け、双丘の谷に垂らした。シャンクスの指は
垂れていく油をすくい上げながら、欲望の目的地にたどり着く。するりと入れた二本の指が締め上げられていく。
 「…えっち」
 シャンクスが楽しそうに笑う。
 「うるさい、静かにしろ」
 ベンがシャンクスの中心を強く吸い上げた。
 「ぁッ…」
 シャンクスの口から悩ましげな溜息が漏れた。ベンの口の中に薄い塩味が時々混ざる。
 「そろそろ、良いだろ?」
 シャンクスに促され、ベンは向きを変えてシャンクスの中心にゆっくりと腰を下ろした。
 「あんたは動くなよ?骨に響くから」
 「たまにはいいな、こういうのも」
 相棒の腰が波打つように揺れるとシャンクスの中心が吸い上げられるように締められていく。
 二人の吐息が乱れて次第に激しくなっていった。



 ベンは情交の後を拭き取り、何もなかったかのように冷静な顔に戻っていく。
 「じゃあ、俺は休みにさせてもらう」
 部屋を出る相棒にシャンクスは声をかける。 
 「おい…」
 「まだ何かあるのか?」
 「好きだ」
 シャンクスの表情は真剣だった。
 「馬鹿…」
 ベンはバケツを持って部屋を出る。 
 ”俺も何を甘やかしてんだか…”
 彼は自嘲気味に溜息をついた。


 
訳者後書へ


リニューアルコーナーへ戻る