海賊の定義
(written by きくひともじ)

 ENCOUNTER という作品の中でシャンクスが若い頃に乗っていた船が、密貿易 
をメインに活動していた、というくだりはちょっとした拘りの現れです。ピー 
スメインの財源が、モーガニア相手の略奪に依存しているという公式設定に、 
実を言いますときくひともじは納得しておりません。そんな寄生虫稼業で生計 
を立てている連中が、あれほど高らかに、後ろめたさ無く己の信念を掲げるも 
のでしょうか。                              
 どうもシャンクス等赤髪海賊団の面々やエースに、職業殺人者の無用な血腥 
さは似合わない気がしてしょうがないのですね。無論必要と判断すれば鏖殺も 
辞さない割り切りはあって当然ですが、むしろ彼らからは、自分の力は自分で 
コントロールする、もっと露骨に言うなら殺すか殺さないかは自分で決める、 
苛烈な誇り高さを感じます。自分を護るために他者を貶める必要のない、本物 
のプライドに裏打ちされた笑顔。勝手な言いぐさですが、彼らはそんな笑い方 
の出来る、本当の強者、己自身の主であって欲しいと思います。      
 歴史上、海賊・馬賊・山賊などと呼ばれた集団の実態は、多くの場合、国が 
専売している生活必需品(代表的なところで塩)を安価で密売する商人や、独 
自に旅券を販売し、それを所持している旅行者の安全な交通を確保するために 
諸方に圧力をかける旅行業者、場合によっては領主にも楯突く自警団などで、 
国法に反していたり、自分の利益と面子を護るためには暴力を振るったりする 
ために賊扱いされますが、決して単なる略奪者ではありませんでした。むしろ、
法外な値段がついている国家専売の品を現実的な価格で取り引きしてくれたり、
とかく危険の多い旅行中の身の保全に便宜を図ってくれたりと、付き合い方に 
用心は必要ですが結構ヒロイックなところがないでもないアウトロウだったわ 
けです。中国を明朝が支配していた時代、朝貢貿易以外の交易を禁じる半鎖国 
体制が施行されておりましたが、それでは日明間双方で供給が需要に追い付か 
ず、倭寇と称された剽悍無比の海賊達と、似非倭寇と呼ばれた中国の海賊が行 
う密貿易で不足分を埋めていたことは有名です。中国側の交易品目は主に銀貨、
書籍、高度な工芸品、日本からは海産物の加工品や日本刀が主に輸出されまし 
た。あまりに大量に流通したため、大量生産による品質低下も手伝って日本刀 
の相場が値崩れを起こした記録が残っています。              
 このあたり、原作は少年誌を発表媒体とする以上、無用な蘊蓄やピカレスク 
に傾きがちな現実は省くのが正解ではありましょうが、自分で書く段になると 
やはりこの辺が気にかかるわけでして。                  
 そんなことをふまえつつ、道理の極を見極めて剣を抜く彼らを格好良くかけ 
ないかな、というのが当面の野望です。帳簿相手に頭を捻る姿とか、絵になら 
ない姿ばかり増えそうで怖いんですが。                  


MUSEUMへ戻る