もう明け方も近い航海中の船内。副船長室の扉がノックされた。 非常事態か? 副船長は即座に起床した。今まで熟睡していたとは思えないほどはっきりした 声で入室の許可をする。長い船員生活に培われた条件反射だ。 船内の非常事態は見張りがすぐに叫んだりはしない。パニックを避けるため、 まず極秘裏に司令塔に通達され、それから指示が出される。赤髪海賊団は豪胆な 剛の者揃いで、生半なことではパニックになどなりはしないが、危険の多い航海 を繰り返す船乗りたちの常識はきちんと行き届いている。 「よぉ、ベン」 副船長室の戸を開けたのは夜勤明けの呑気なシャンクスだった。その雰囲気か ら非常事態ではないことを副船長は直感的に悟った。 「何の用だ」 シャンクスは答えもせずに副船長のベッドに潜り込んだ。 「おい?シャンクス」 毛布から頭だけを出したシャンクスが答える。 「いやぁ、夜勤明けて自分のベッドに入ったら、それが冷たくってさ。かえっ て目が覚めちゃったもんだから」 冬島に近づく航路の為、天候は冬型に安定して日に日に寒くなってきていた。 雪国育ちで寒さに強い彼が寒いと言うのだから、次に着く島は極寒の地に違いな い。 「じゃあ、そこで寝ればいい。俺はもう少ししたら仕事だから」 副船長はベッドに座ったまま煙草に火をつけようとした。 「それだけ?」 マッチを擦ろうとする手を止めて、シャンクスの声に振り返るとそこには恨め しそうな視線があった。ほっかむりのように毛布を被って拗ねた顔だけを覗かせ ているのがなんともユーモラスだ。 「それだけって…」 「まだ、交代時間まで余裕があるんだろ?」 言うやいなやシャンクスは副船長の首にしがみ付いてベッドに横倒しにする。 「ちょっと暖めてくれよ。そうしたら、ぐっすり眠れる」 「寝つきの良さであんたに敵う奴なんているもんか」 組み敷かれた副船長は反論した。しかし、シャンクスの寝つきの良さは確かに 船内では評判で、「お頭が不眠症になったらこの世は終わり」と船員たちは口々 に言っていた。 顔を至近距離に近づけて、シャンクスは問い詰める。 「勤めから帰った亭主を労わるのは妻の務めだろ?」 「誰が亭主で誰が妻だ…」 「ちょっとだけ付き合ってくれよ。軽くでいいんだ」 シャンクスは副船長の口を唇で塞ぎながら、シャツに手を突っ込んで愛撫し始 めた。 「莫迦っ!朝っぱらから…」 副船長は潜めた声で抵抗するが、シャンクスは聞かない。 「そんなに激しくしないからさぁ」 シャンクスの頭が副船長の下腹部へ移動した。一番感じやすい部分を口に含ま れた副船長が言葉を失う。やがてシャンクスの指がぬらりと奥へ滑り込み、副船 長の腰から背中が熱を持って疼きだす。内部をかき回され、副船長の息が乱れ始 める。 「くっ…… 。…?」 蠢いていた指が動きを止めた。赤い頭は動きもせず副船長の太腿の上に重くの しかかったままだ。 「シャンクス?」 返事の代わりに聞こえてくるのは微かな寝息。 「信じらんねぇ…。何でこんなトコで寝るんだよ…」 副船長は自分の内部に差し込まれた指を引き抜いた。意に反して、彼の内壁は 指が抜けるのを惜しむように絞る。次に太腿に乗った頭をシーツの上に乗せ、彼 をベッドの中心に仰向けに寝かせなおした。こうして体をあれこれ移動させたに も関わらず、まったく起きる気配はない。 人を起こしておいて自分だけ寝るなよ…。 後もう少しという所で中断され、体は疼いたまま熱を持て余してしまった。じ きに来る交代時間までに、体の芯の痺れを静めなければならない。 「ったく…、この人は…」 ふと見るとシャンクスの股間に緩くではあるが立ち上がっているものが見えた。 副船長はシャンクスに毛布をかけてその中に潜り込み、彼の股間に顔を埋めた。 頬張って舌を這わせると口の中で強張り始めた。 頭は眠ってても、ここだけは起きてるもんなんだな。 口に含んだ時と大きさが変ってきた頃、副船長はそれから離れて枕元にある小 さな木箱に手を伸ばした。小さな平たい袋、男性用避妊具が中に入っている。避 妊具は潤滑剤付きのもの。以前シャンクスが、 「どんなのがいい?つぶつぶ付きとかいぼいぼ付きなんてものまであるぞ」 と、副船長にアンケートを取った。その時、彼は赤くなりながら小さく呟いた。 「潤滑剤付きのノーマルなやつ…、粒とかはなくていい…」 それを手馴れた手つきでシャンクスに被せ、副船長はシャンクスの腹の上に股 がった。 背中から手を回し、自分の中へ屹立したシャンクスの男を少しずつ収めていく。 ゆっくりと体を沈め、深く収める。腿がシャンクスの腹に触れ、完全に彼の上に 座ると眠る彼を起こさぬようゆっくりと自分の腰をゆらし始めた。 性交というよりは自慰行為をしているようで、恥ずかしさと後ろめたさが彼を 苛む。だが、こうした衝動は下手に我慢するよりも、頂点に上りつめた方が早い。 呑気に眠っている男が起きたりはしないかと心配しながら、副船長は見下ろす。 あんたがいけないんだぞ。あんなトコで止めて寝るから… やがてゆるゆると頂点へ向かうかと思った矢先、尻を突然鷲づかみにされた。 「はぁっ!?」 嬌声じみた声が洩れた。下を見るとシャンクスがにんまりと笑っている。 「…ぁ…」 恥ずかしさのあまり副船長は首や耳まで一気に赤くなった。 「いーい眺めだなぁー」 シャンクスは笑いながら右手で副船長の尻を摩る。両手があれば、両手で撫で 回していたに違いない。 「まさか…、あんた眠ったフリをしてたのか?」 副船長は気まずさと恥ずかしさに耐えながら訊いた。 「いや、あんまり気持ち良くって目が覚めた。でも、そうだな。そういう手も あったか。今度からやろう」 「馬鹿っ!」 逃げようとする副船長をシャンクスは尻を掴んで止める。 「俺が悪かったって。ここまでキたんだ、一緒にイこうぜ」 シャンクスは勢いよく腰を真上に突き上げた。 「あっ…」 副船長の体がのけぞる。ベッドの軋む音がリズミカルになってくるにつれ、荒 い呼吸の中に嬌声が混じる。 副船長の雄は行き場のないままシャンクスの臍の上でしなっている。シャンク スはそれをそっと手で包み込んだ。 「はっ…」 副船長が小さく身じろぎした。シャンクスは副船長の顔を見上げた。 「いくぞ」 「んんっ…」 体が望む通りに穿たれて副船長は自身を波打たせて頂点に至った。 部屋に静寂が戻った頃、空が白み始めた。 シャンクスは心底嬉しそうな笑顔、他の人間から見ればどう見てもいやらしげ な笑みをにたにたと浮かべてベッドに寝そべっていた。シャンクスの視線の先に は身支度を整える副船長の姿がある。 「ありがとな、お前のおかげでいい夢が見られそうだ。Good night, honey.」 「何がGood nightだ、もう朝だぞ」 副船長が振り返ると、シャンクスは既に夢の中だった。 「ったく、身勝手なんだから…」 副船長はシャンクスの頬をつまんだ。シャンクスはそれでも起きない。間抜け に伸びた頬を見て副船長は小さく吹き出した。 冷えてくる外気を感じた副船長は、タオルケットをもう一枚シャンクスに掛け てやると、部屋を出て音を立てぬように扉を閉めた。
