オレはサディストとかそういう嗜好とまではいかないが、好きな相手ほど悪戯してみたくなる
悪い癖がある。そういった欲望はどうも相手に抱く愛しさや性欲に比例するようらしい。
副船長を立った姿勢のまま壁に押し付けて後から犯しながら息を荒げて、「我慢できねぇ、奥
で出すぜ」なんて言ってみる。勿論それは嘘で演技だ。そう言えばあいつはこっちを向いて困っ
たような顔で「やめてくれ」と目で訴える。その時の懇願の表情が堪らなく色っぽくて可愛い。
ただし、どんな手でも頻繁に使うと演技だとバレるので間隔をあけてたまに使うのがコツだ。
だが、この前のはちょっと行き過ぎた。からかう以前の問題だったのだ。あいつの言う「業務
上の過失」とやらにキレてしまい、怒りに任せて強姦してしまった。
それからと言うもの、あいつの態度がどことなくぎこちないと言うか硬い。仲間には分かりよ
うもない小さな差異だが、オレはその違いをやるせない程に気付いてしまう。オレへの恐怖もあ
るだろうが、罪悪感が大きくのしかかっている為に態度が硬化しているのが何とも痛々しくてな
らない。
と、言うことでオレはちょっとした悪戯…もとい荒療治に打って出ることにした。
船長室。船員の一人がでハンマーで壁を打ち鳴らしている。
「ここさ取り付ければ良いんかい?お頭ぁ」
「おう、ばっちり。手間かけさせたな」
「これぐれぇはお安い御用だけんど、突然こんなモノ貸してぐれなんて、どしただよ?」
「オレの酔狂は今に始まったことじゃないだろ?すぐに返すよ」
「ま、慌てて返すようなものでもないけんどもよ」
極北訛りの船大工は工具を抱えて船長室を出て行った。
シャンクスは右手と足の指と口を使って布の角に結わえると、その布を船大工の取り付けた物
の上に覆い被せた。
シャンクスは副船長の姿をデッキに見つけた。彼は船縁で海を見ている。幸い近くに誰も居な
い。シャンクスは気配を消してそっと近づく。
「副ちゃん」
副船長の肩がビクリと小さく跳ねた。
シャンクスは気を使い、そっと小声で問い掛ける。
「尻の具合どうよ」
「…治った。腫れも痛みもない」
副船長は海を見つめたまま極力の小声で答えた。
「じゃ、今夜オレの部屋な」
副船長は項垂れるように首を縦に下げた。シャンクスが見た彼の顔には「何をされても文句は
言えない」とでも言い聞かせるような諦めの表情が滲んでいた。
只今、副船長は罪悪感モード真っ最中でシャンクスの命令に逆らえない。それはシャンクスも
良く理解していた。
シャンクスの部屋に副船長が忍んで来た。
「分かってるよな?」
シャンクスは全裸でベッドの上で肢を開いて座っている。部屋は大きなランプが点いていて明
るいままだ。
「ああ…」
副船長は服も靴も脱いで、ベッドの上に乗った。いつもなら彼は部屋の明かりを落とすことを
要求する。だが、今はシャンクスに逆らう気になれないのだ。何も言われていないのに、彼は四
つん這いになってシャンクスの股間に顔を埋めた。その姿は狼が群れのボス狼に許しを乞うてい
る様にも見えた。
副船長はシャンクスの雄自身を唇と舌で懸命に慰める。シャンクスは枕の下を探り、紐を掴む
とそれを引いた。布が落ちる音に驚いた副船長は振り向こうとしたが、シャンクスの右手が彼の
頭を押さえた。
「毛布が落ちただけだ。気にすんな」
副船長は勃ち上がってきたシャンクスの雄を口に頬張った。
シャンクスは布に隠れていた物を見つめた。四つん這いになった恋人の下半身が映っている。
彼が設置させた物は大きな鏡。シャンクスは何も知らないまま無防備に映し出される恋人の下
肢を見つめた。
シャンクスは再度、枕の下を探って小瓶を取り出すとコルク栓を口で器用に開けた。何の前
触れも無く副船長の尻の谷を目掛けて注いだ。液体が注がれた腰はビクリと跳ねる。シャンク
スは小瓶を放り出すと、谷を流れる粘性の高い液体を指で掬うように下から上に滑らせた。そ
の指をまた下に滑らせゆっくりと上下に擦る。後と前の間の谷は器官こそ無いが実に鋭敏な箇
所であることをシャンクスは知っている。そこを揉み解すように念入りに擦っていると、副船
長の雄もまた頭を擡げて来るのが鏡から良く見えた。そこを見計らって、彼は勝手知ったる彼
の内側へも指を滑り込ませた。鏡に映る指遊びはシャンクスの興奮をさらに高めた。彼の指が
深く入るにつれ、彼の下腹で為されている奉仕作業はおろそかになる。
「もう良いぜ、ベン。反対を向いて四つん這いになれ」
言われるがまま向きを変えたベンはその場で全身を硬直させた。
鏡…!?驚きのあまり動けずにいると、高く上げた自分の尻にシャンクスの反った雄が触れる
のが見えた。シャンクスは遠慮なく一気に奥まで自身を押し入れた。咄嗟に下を向いたが遅か
った。獣の姿勢で犯される自分の姿を目で捉えてしまった。目で現場を見てしまったことで否
応なしに感度が倍増してしまっている。羞恥と快楽が彼の頭を目まぐるしく回る中、考えたく
ない考えが浮んだ。
まさか…今までのも…?
シャンクスは体を前に倒してベンの背中に寄りかかった。
「ご想像の通りだよ。可愛いアンヨも見えてたし、アンヨの間もばっちり拝めたぜ」
シャンクスの低い囁きはベンの背中をぞくりと這った。自分の体を震わせるのが羞恥なのか
快楽なのか、最早彼にも分からない。
シャンクスからベンの顔は見えなかったが、彼の耳が赤く紅潮するのは見えた。
体の奥でずるりと引き抜かれる感触にベンが声を上げかけた時、シャンクスの体が彼から離
れた。それに従って彼の男根も離れる。
「…?」
ベンは後を向いた。シャンクスは両脚を真っ直ぐ前に投げ出して座っている。
「ここに座んな」
シャンクスは堂々と勃った自分の中心を指差した。
ベンは後を振り向いたまま動けない。鏡の前から今すぐにでも逃げ出したいが、腰から下は
事の継続を切望している。
シャンクスはベンの熱く疼く中心に食指を一関節分だけ差し込んだ。
「いくら何でもこれだけじゃ物足りないだろう?」
そう言って、差し込んだ指先だけを回して彼の疼きを弄んだ。
ベンは言い訳を見つけた。「これは前回の過失の罰なのだから、従わなくてはならない」と。
そう言い聞かせ、彼は行動に移った。片手をシャンクスの腿に置き、残った手を後に回してシ
ャンクスの中心を手に取って自分の中に収めていく。シャンクスの男根は奥深くまで容易に収
まった。それは慣れがもたらした結果でもある。
ベンは膝をずらして右足から前に運ぼうとした。その膝をシャンクスの右手が掴んだ。
「脚は閉じるな」
シャンクスは掴んでいた右膝から手を離すと彼の顎と頬を捉えて鏡に向かわせた。
「ほら、よく見ろ。繋がってる部分まで」
ベンの眼は横に逸らされている。
「見てるか見てないかは良く見えてんだぞ」
肩越しにシャンクスの目が映っている。暗い欲情の火が灯る眼差しだ。
ベンは恐る恐る視線を下に落とす。一瞬見えたがそれ以上は見るに耐えなかった。情交の最
中の男性器は粘液に濡れながら赤く怒張していて、人の体と言うよりは海の軟体生物のようで
グロテスクだ。生々しい光景は僅かでも目に焼きついてしまう。
ベンは顔を紅潮させ潤んだ目でシャンクスを見る。
「シャ… …何だっ…、こっ んなっ…」
荒い息の中で言葉が続かない。何だってこんな真似を?とでも彼が言わんとしているのはシ
ャンクスにも分かった。
「よーっく見て覚えるんだよ。お前がオレのモノで、オレにいっつもこんな事をされてるっ
てことを覚えな」
ベンは目を瞑って頭を振った。
「こらっ…、目を閉じるなっ…」
シャンクスの息も荒い。
「 … もうっ…あっ、、ぁ〜〜っ!!」
目を閉じて甘い呻きを漏らしながら、ベンの背が弓なりに反っていく。絶頂がすぐそこまで
来ている。ベンの手は掴む所を探してシャンクスの腕に爪を立て、左手はシャンクスの肩を指
だけでかろうじて掴んだ。ベンの中のシャンクスも絞られていく。
「うっ、来たぁ…」
シャンクスも目を閉じて快楽に身を捩らせる。
「…!!っっ」
先に達したのはベン。果てて力の抜けていく恋人の体からシャンクスは自身を引き抜いて、
溜め息とともに放精した。
シャンクスは飲料水代わりの薄いラムの水割りの瓶を手にした。コルクを噛んで抜き、情事
の熱で乾いた喉を潤した。
「お前も口渇いたろ?飲むか?」
振り向くとベンは頭から毛布を被って包まっている。まるで春巻きのようだ。シャンクスは
思わず小さく吹き出した。可愛いっ!可愛すぎるぞ、ベン!彼は春巻き状態のベンに布の上か
ら抱きついた。
「そーか、そーか。そんなに恥ずかしかったのか〜v」
巨大春巻きがシャンクスの腕の中でモゴモゴと動いた。
「およ!?」
「この恥知らずっ!」
声と同時に布から出てきたのは高速の拳。
「がっ!」
拳はシャンクスの左頬に命中こそしたが、反射的に体を引いて逸らしたので深いダメージに
は至らなかった。間髪入れずに次なる拳が彼を目掛けて飛んでくる。
「この馬鹿っ!悪趣味っ!破廉恥漢っ!変態っっ!!」
罵詈雑言の一言と同時に拳が飛んでくる。シャンクスはそれを受けたり避けたりするうちに
ベッドの上に仰向けに追い詰められた。
拳を止めたベンを見上げると、彼は顔を紅潮させていた。シャンクスを恨むような目には涙
が滲んでいる。
「この前のことは確かに俺が悪かったさ…。だからって、こんな!…こんな恥ずかしくて死
にそうな真似させることないだろっ!俺だって、俺だって他の男に犯られたくなんかなかった
んだからっ」
堰を切ったように激しい口調。彼も自分の感情をここまで露にした事はなかったに違いない。
シャンクスはベンに優しく微笑んだ。ベンの顔が驚きに止まる。
「分かってるよ。そんな事はオレが誰よりも分かってる」
シャンクスはベンの頭を抱き寄せて、頬擦りする。
「ごめんなぁ。一番辛かったのはお前なのに、あの時のオレは頭に血が上っちゃってて、お
前の気持ちまで気が回らなかったんだ。ごめんな」
ベンはシャンクスの肩の上で黙っている。
「言っとくけど、オレはもう怒ってなんかいないんだぜ?とっくにな」
首をひねってシャンクスの顔を見るベンに彼は優しく笑ってみせる。
「だったら、なんでこんな事したんだよ…」
納得いかない様子で彼が睨み返す。
「本音吐いたらすっきりしたろ?」
「…あ」
ベンは呆気に取られた。
「気持ちを押し込めすぎるのはお前の悪い癖だぜ?すっかり吐いたら後は忘れちまえ。あれ
は事故だったんだ。だから、忘れろよ」
「忘れろって、あんた簡単に言うけど…」
「あのヤローとの事を考えてる暇があったらオレの事を考えろや。それでオレの事で頭を一
杯にしたら、いつものオレたちに戻ろうぜ?」
シャンクスはふふっと笑って自分の額を恋人の額に当てた。
「あんたって人は…」
ベンの表情が驚きから苦笑と呆れの混じった笑顔に変わった。だがその笑顔には心からの安
堵があった。久しぶりの相棒の笑顔にシャンクスの胸も温まった。
「じゃあ、いつものオレたちに戻った所で、ヤりなおそうか」
ベンが顔を赤らめながらしかめた。
「…鏡の撤去の方が先だ」
「灯りを落とせば鏡も気にならないだろ」
シャンクスがランプに手を伸ばすと、ふいにベンの手がその先に伸びて灯りを消した。
暗闇の中、唇を重ねて来たのはベンだった。その唇を食むように捕らえて舌を絡ませてシャ
ンクスは答える。いつもはお堅い恋人から求められ、シャンクスは先ほどの疲れも忘れて瞬時
に奮起した。
闇の中で表情は見えないが、灯りが消える瞬間に垣間見えたベンのはにかんだ笑顔がシャン
クスの頭を占めていた。例え、他人がこいつの体だけを奪ったとしても、こいつが求めている
のはオレだけなんだ。シャンクスは幸せな気持ちに昂ぶる。
甘く乱れる吐息しか聞こえない闇の中、二人の影は一つに融けていった。
翌日、あいつはいつもの副船長に戻っていた。こうなればなったで、また別の悪戯をしてみ
たくなっている自分がいる。オレの悪い癖はどうにも治りそうに無い。