28.ダウンサイジング


排 気量を小さくして過給機を付けたエンジンに置き換えた車が欧州のメーカーを中心に増えてきました。エンジンのダウンサイジングとよばれていますが、企業で いえば、正社員を必要最低数に抑えて、仕事が増えたときは派遣社員でカバーするということかと思います。VW/AudiのTSI/TFSIが最初に成功した例だそうですが、 BMW+PSA(Peugeot Citroën)、Fiat、Mercedes-Benz、Ford(+Volvo)などからこのカテゴリーにはいるのかなと思うエンジンを搭載した車が発 表されています。国内では日産Jukeの1.6Lターボ車が2010年に販売されましたが、この車はこのカテゴリーにはいるのか?2006年にエコプロダ クツ大賞推進協議会会長賞(優 秀賞)を受賞したマツダのDISIターボエンジン車はどうなのか?スバルの「環境対応ターボ」はどうなのか?このあたりを少し考えてみました。乗り比べること はできないので、公開されているスペックデータから分類を試みます。

下図は燃費性能と出力性能の関係について現在販売されているNAエンジンの車からピックアップしたデータです。AT(含むCVT)の設定がある限りAT車です(というかMTの設定のほうがほとんどない)。横軸は10-15燃費を換算して、100 kmを走るための燃料消費量(L)を(車両重量+55) kgの√で割り算しました。縦軸は最高出力ではなく、普通に走るときの回転数として1500 rpmでのトルク(N m)をとって(車両重量+55) kgで割り算しました。だいたいきれいに整理できました。図の中の数値はそのあたりのNAエンジンの排気量(L)です。車(メーカー)による差もあるのですが、やはり排気量が 性能を大きく左右します。3.5 Lを越えると出力は上がりますが、燃料消費はさほど大きくなっていません。このあたりの車はハイオク仕様で、車の重量から考えると過分の出力を持つエンジンを搭載した値段の高い車になります。


1500 rmpでのトルクはエンジン性能曲線から求めることができますが、この曲線が分からない車も多いので、NA車については最大トルク×(1+その時の回転数/20000)で 近似的に求めました。分かったものについては下左図のようにだいたい近似できます。ついでにターボエンジンの車については、(エンジン排気量/15+最大トルク/その時の回転数 ×740)による推算値と性能曲線から読み取った値を比較したものを下右図に示します。これで許してチョ。



最初の図にターボエンジン搭載車のデータを追加したものが下図です。当たり前ながらトルクの高いところに点が分散します。一番、右上は日産GT-Rで別格です。残り2つのは三菱Lancer Evolution XとスバルWRX STIです。最高出力はすごいのですが、1500 rpmでのトルクを使うとこのようになりました。茶色はその他、国産車のターボエンジン搭載車。水色は輸入車のうちダウンサイジングに該当すると思われる車のデータです。輸入車の場合には10-15燃費は国産車ほど高目にでませんので、実燃費から考えると、はもっと左側にシフトしてもいいと思います。この図だけでは、エンジンをダウンサイジングした場合にどのようになるのかが分かりませんので、車別にNAエンジンとターボエンジンの関係を見てみます。



マ ツダAxcelaは1.5 L、2.0 LのNAエンジン、マツダスピードAxcela は2.3 Lのターボ車です。NAエンジンで排気量が1.5 Lから2.0 Lになると、少し右上にシフトします。Axcela 2.0 Lはアイドリングストップしますので、もしこの機構がなければ2.0のポイントはもう少し右になります。Axcelaターボはずいぶん右上にきますが、排気量が大きくなるので、ダウンサイジングと は関係ありません。ハイパフォーマンスを売りにする車です。

スバルForesterのエンジンは現在のラインナップで 2.0NA、2.0T、2.5Tの三種類あります。2.0 Lの同一排気量でターボ化されると右上に大きくシフトしています。そこからさらに排気量が大きくなると、出力もさることながら燃料消費量もかなり増えま す。Foresterの「環境対応ターボ」も排気量はNAエンジンと同じ、もしくは大きくなるので、ダウンサイジングではありません。



VW Poloは1.4NAから1.2Tへ、Golf 1.6NAは1.2Tへ、Golf 2.0NAは1.4Tへ、 Touranは2.0NAから1.4STへとモデルチェンジでエンジン排気量が小さくなり過給機付きとなりました。下図から分かるように左上にシフトし、燃料消費量は小さくなり、出 力は上がりました。これがダウンサイジング。

メルセデス-ベンツE2502.5Nから1.8T(直4ですが)へ置き換わり、燃費がかなり向上しています。 BMW+PSAの1.6 Lの直噴ターボエンジンをシトロエンは国内販売車C4Picassoに搭載しています。2.0NAの10-15燃費は測定されてないようなので、欧州複合モードと1.6Tの10-15燃費の関係から推算しました。この車の 場合も左上にシフトしています。

小さな排気量のエンジンに置き換えて、基本的な燃料消費を抑え、最高出力はともかくも、過給機で低回転数でのトルクを増やしてしかもフラットとし、ガソリン直噴によるノッキング防止で過給機を付けても圧 縮比を10近くに保つことで、燃料消費量を低減したのがダウンサイジングエンジン共通項のようです。また、NA車と併売するのではなく、その車のメイングレードのエンジンを 置き換えて、総量としても燃費向上の効果を上げて、さらに継続させていくことまで含めてダウンサイジングとよぶべきだろうと思います。



ツインチャージャーのエンジンとしてかつて日産March Super Turboがありました。1989年のラインナップを見るとNAエンジンは1Lでツインチャージャーは0.9Lなので、これはダウンサイジングか?下図にマニュアル車で比較しました。もともと競走用の車がベースであるし、右上にシフトするので、ダウンサイジングとは関係ありません。それにしてもこの出力は最近のエンジンと比べるとかわいいものです。

マツダの開発した直噴ターボエンジンに「環境性能とZoom-Zoomな走りを高次元で両立した」DISIターボエンジンがあります。2.3 Lのこのエン ジンを搭載したMPVは2006年にエコプロダクツ大賞推進協議会会長賞(優 秀賞)を受賞しています。3 LのNAエンジンを搭載した車と比べると、左上にシフトしています。これはダウンサイジングか?その後、3.0NAはラインナップから外れ、2010年に2.3Tも廃止され、 今は2.3NAのみが残っています。継続しなかったことと、そもそも2.3NAで間に合っていること、ついでにこのエンジン、Axelaに搭載さ れてハイパフォーマンス車となっていることから、個人的にはダウンサイジングではなかったと思います。

日産Jukeの1.6Tも直噴ターボエンジンを搭載しており、「優れた環境性能を誇るエンジンであり、出力は2.5L、燃費は1.8L相当」と なっています。しかし、Jukeはベース車は1.5NAであり、ターボエンジンはこれより排気量が大きくなっているので、ダウンサイジングではなくパフォーマンスを楽しむ車です。下図でも右上に シフトしています。「出力は2.5L、燃費は1.8L相当」であるならば、2.0 Lを置き換えることによって、出力も燃費も向上するので、ダウンサイジング。日産ならばSerenaの2.0 Lエンジンを置き換えると面白いように思いましたが、重たいSerena 2.0NAとJuke 1.6Tの10-15燃費は同じです(Serenaのアイドリングストップ装置のない仕様での比較)。1.8 L相当というよりも2.0 L相当です。

結論、国産初のダウンサイジングエンジンの名誉ある席はまだ空いている! か?



そ の後、畑村耕一氏の「博士のエンジン手帖(三栄書房)」にて、世界初のダウンサイジングエンジンは、マツダのEunos800に搭載されていたことを知り ました(生まれてないのでそんなこと知らない)。凄いことに2.3Lミラーサイクルエンジンにスーパーチャージャーで低燃費ながら3Lの性能を持つエンジ ンだそうです。同じようにグラフにしてみました。このエンジンの1500rpmでのトルクは不明のため、他のSC過給を参考に仮定しています。比較は同じ Eunos800の2.5NAと同時期に販売されていたマツダSentiaの3.0NAです。見事に左上に移動しています。


当 時は米国でもかなり注目を浴びていたようです。開発には多くの苦労があったと思いますが、技術の 流れを変えるところまでいかず、残念ながら10年持たずに消えてしまいました。

結論、将来、国産ダウンサイジングエンジンが主流になったときに、そのルーツと呼ばれるものはまだ登場してないぞ
それとも、国内ではハイブリッド車がますます進化するのか?


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