†飛仔†(書き掛け)

 

「飯、食いたいか?」
 道端に座り込んでいた少年はのろのろと顔を上げた。前髪の長い黒髪に半ば覆われた生気のない黒い目が男をだるそうに見上げる。
「ベッドで寝たいか?」
 両手をポケットに突っ込んだまま、仕立てのいい流行りの型のスーツに身を包んだ、黒尽くめの男は問いを重ねた。少年はぼんやりとその男の切れ長の目を見上げている。かさかさに乾いた唇は半開きだ。
「なんとか言えよ。家出少年だろう? それとも誰か待っているのか?」
 ぺろり、とやけに赤い舌が乾いた唇を舐めた。張り付いた皮膚が僅かに切れ、少年は軽く眉を顰める。
「……ず」
「ん? もっとはっきり言えよ、チンピラ」
 少年は寄り掛かっていた煌々と背を照らすショーウィンドウから身を離した。
「…水」
 男は破顔し、ポケットから両手を抜くとしなやかな動きで少年の両腕を取り、軽々と引き上げた。立たされた少年はしかし、空腹で立ち眩むばかりで自分で立つことも出来ない。
「俺の部屋へ行こう、チンピラ。水はある」
 女か子供でも抱くようにひょいと背に両腕を回して少年を引き寄せた男は、酷く整った白い顔に楽しげな笑みを浮かべた。
「心配するな、襲いはしない。お前は俺の趣味じゃない」
 趣味? と問おうとしたが、乾いた口が音を発してくれない。
 半ば抱えられるように男について歩きながら、少年は体臭のないその首筋に幾つかの小指の先程の穴が空いているのを見た。端子の差し込み口だ。

 


続く?

 
 
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