< 麹をつくる

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米麹出来合いの加工品が巷にあふれるようになった昨今、麹を見かけることも少なくなってしまいました。 昔はどこの町にも麹屋さんがあって、お米をもっていけば、いつでも好きなだけ麹に作ってもらえたそうです。 それだけ麹は日々の食卓にに欠くことのできない食材だったのです。現在では、味噌や醤油や漬物を手作りする人が減ったために、麹は家庭の台所から姿を消してしまったわけですが、にもかかわらず私たちが日々口にしている日本の伝統的な調味料やお酒は、ほとんどすべて麹を使って作られていることに変わりはありません。毎日美味しいお味噌汁を吸えるのも、煮魚やお刺し身を日本酒や焼酎の晩酌で美味しくいただけるのも、すべて麹サマのおかげなのです。

麹は、米などの穀物に麹カビという微生物が取りついたもので、米麹はいわば「カビご飯」みたいなものです。ただ、どういうわけかこのカビは、穀物の成分をいろいろに分解してより栄養価が高くて美味しいものに変化させてしまうという、人間にとってありがたい特殊能力を持っているのです。顕微鏡なんてなかったはるか昔から、そうした目に見えない微生物の力を発見して、それを巧みに利用して、大豆、米、麦と限られた種類の穀物から、これほどの味のバリエーションを創り出してきた私たちの祖先というのは、本当に偉大としかいいようがありません。



麹づくり大作戦

麹菌さえ手に入れば麹も自分で作れるということを知り、挑戦してみました。麹ができるまでまる2日かかるけれど、思いのほか手順は簡単。麹のぽんわかした香りも心地よく、なかなか楽しい作業です。

麹作りには、米や麦など麹の材料を蒸すための蒸し器と、まる1日は35度程度の温度を保つなんらかの方法が必要です。 私はこのために保温器を手作りしました。といっても、ただの発泡スチロールの箱の中に電球を取り付けただけの簡単なもの。でも冬場でも20W位の弱い電球で充分に30度は保てるので、パンの発酵にも使えてとても重宝しています。(しかし素人の手作りゆえ安全性に問題あり。夜間や外出時は使わないようにして、夜は箱を風呂の湯船に浮かべて保温しています。)
その他にも毛布でくるんでコタツに入れたり、湯たんぽやアンカを使ったりと、いろいろな方法があると思われます。 それに必ずしも一定温度を保たなければならないというわけでもなく、温度が低ければ麹の成育が遅れるというだけようなので、あまり神経質にならなくてもいいようです。実際、電気もなにもなかった昔の農家では、蒸して種つけした穀物をムシロで覆い、寒いときには布団を被せておくなど簡単な方法で作っていたようです。(もっとも、この方法は量が多くないとうまくいかないかもしれません。)

注 ・・・ 以下は決してお手本ではありません。あくまでも素人の実験記録なので、自分も作りたいと思われる方は、このページの最後に挙げた参考図書などをご参照ください。


材 料

穀物 米麹 ・・・ 普通はうるち米の精白米を使用。玄米はフスマの皮の部分に麹カビがつきにくいので、そのまま作るのは難しいようですが、ひき割りにするといいそうです。私は試しに3分づきくらいで試してみましたが、白米と変わりなく麹ができました。
麦麹 ・・・大麦の 押し麦ではない丸麦を使用。自然食品店などで入手可能。
雑穀麹 ・・・ キビ、アワ、ヒエでも麹ができるようです。うるち性のものを使用。
種麹(麹菌) 国内で何ヶ所か専門の種麹業者があるようですが、私はビオックさんから購入しました。自家醸造用の小袋を郵送してくれます。40gの種麹で20〜40kgの麹ができるとあるので、使用量はだいたい米1kgに対して1〜2gくらい?



作り方(米麹:写真は五分づき米約1kg)


1. 米を洗って水につける。この浸水時間は水温によっても違うが、冬だったら最低一晩たっぷり浸けておいたほうが良さそう。 米を蒸す
2. 1の米の水をよく切り、蒸し器に入れて強火で蒸す。この蒸しぐあいが素人にはよくわからないのだが、米が透き通って、親指と人さし指の間ひねってみて芯がなくなるまで。かといって柔らかく蒸しすぎてはいけない。時間は吸水時間や新米か古米かでも大きく違うし、蒸し器の性能でも変わると思うが、このときはその年にとれた新米を30分くらい蒸した。(もう少し蒸したほうがいいと思います。)
3. 蒸しあがったら寿司桶などに移し、しゃもじで混ぜながら冷ます。人肌くらいの温度になったら、いよいよ種つけ。種麹はちょっと多めに米1kgに対して小さじ1/2杯くらいをまんべんなく振りかけてよく混ぜた。 種麹を混ぜる
4. 種つけを済ませたら、さらし木綿を固く絞って敷いたザルの上にまとめて移す。さらに上からも湿らせたさらしやタオルなどを被せて、30〜35度くらいのところにおいて保温する。カビなので、じめじめしてあったかいのが大好きなのだ。ザルの下にはお湯の入った皿を敷いて蒸気を与え、上からもときどき霧吹きで湿気を与えてやるようにする。 また、空気も必要なので、酸欠状態にならないよう発泡スチロールの箱は必ずフタをずらしておく。 保温する
5. 仕込み後20時間くらい経つと、麹のいい香りがしてきて、米の表面にうっすらと白い粉をふいたようになる。この状態になったら、米をほぐして平ザルやタッパーなどの容器に小分けして移し替える。やっぱり湿らせたさらしを敷き、米を平らに(2、3cmくらい)敷きつめ、上からもさらしを被せて乾燥を防ぐ。麹が育ってくると自ら熱を発するので、今度は高温になりすぎないように注意する。 詰め替えて保温
6. 仕込んでから2日半くらいで、ひとかたまりになった麹ができあがった。手に持つとほわっと軽い。米麹というと白いイメージがあるのだが、仕込み時間が長くなると、麹カビの胞子が出て、こういう黄緑がかった色になってしまうようだ。念のため種麹屋さんにたずねてみたら、胞子が出ても食用にはまったく問題ないとのことでひと安心。ちなみに胞子の白い種麹もあるらしいので、いつか試してみたい 出麹
(写真は2001年2月)

使った米とほぼ同量くらいの麹ができあがりました。スーパーで売っている乾燥麹と違って、生麹は日持ちがしないので、すぐに使うか、味噌にする場合は冷ましたらほぐして塩を混ぜておきます(塩切り)。
麹を使った食品のご紹介 ・・・・・ 味噌甘酒、酒まんじゅう、酒種パン

※ 生麹は冷凍保存が可能です。ポリ袋などに小分けにして、2、3か月は問題なく使用できるようです。私は7か月経ったものを甘酒にしてみましたが、しっかり甘くなりました。ただ、酵素の力は時間が経つに従って弱くなるので、麹の使用量は多めにした方がよさそうです。(2007.1追記)

《参考図書》
『秘伝 発酵食づくり』 林弘子 著(晶文社)
麹からはじまって、味噌、酢、醤油、さらにはチーズにいたるまで、いろんな発酵食品の作り方が満載です。著者の体験談なども興味深く、読み物としても面白い。
『手づくりの健康食品−発酵利用のすべて−』 中野政弘 著(農文協)
少し古い本ですが(1979年発行)、製法はもちろん発酵のメカニズムについても科学的にわかりやすく書かれていてためになる本です。


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