火車

...............宮部みゆき
...............新調文庫 857円+税


 宮部みゆきのファンが多くいることは知っていたが、前にたしか「人質カノン」を読んでそんなにおもしろいと思わなかったような気がする。そしてしばらく空白があり、少し前に彼女が原作の映画「RPG」を見て、ちょっとおもしろいかもと思ったような気がする。そしてこの作品で当たった。おもしろい。平成6年(1993年)の山本周五郎賞受賞作。やはり山本周五郎賞はすごいのだ。

 東野圭吾の「白夜行」や「幻夜」、それから、この間読んだ山本文緒の「落花流水」も同じような形式と言えるだろうか。ある一人の(あるいはある家族の)人生をずっと追って行く。その人生には犯罪あり、不倫あり、反道徳行為ありとドラマが繰り広げられる。その中でもこの作品は、派手さはないが、玄人好みと言うか、現実的と言うか。

 「自分の過去を消すために他人を殺し、その他人になりすます」というたまに聞く犯罪がストーリーの中心をなす。しかしながらその犯罪そのものでなく、その犯罪をするに至った(せざるを得なかった)幸薄い主人公の人生を一皮一皮めくっていく。そこにあるのは怖さや憎しみというよりも、この社会に隠されていいるだろう悲しさか。昭和の終わり頃に社会問題となったサラ金問題が題材に使われている。

読書日記目次へ