「対決」

...............高杉 良
...............新潮文庫590円+税
...............ISBN4-10-130319-3


 「青年社長」を読んでから、高杉良作品をいくつか買った。あまり読み進めていなかったのであるが、何となく数日前に電車の中で読み始めたら面白くて一気に読んでしまった。

 某ガラスメーカーの実話をもとに書かれたらしいこの企業小説は、人事権にまで及ぶ強大な権利を持ってしまった労働組合の組合長とその実体を知らぬまま官僚からの天下りでやってきた社長との対決の話である。それまでの経緯を知らないその社長だけでは対決の機運は盛り上がらないわけで、その組合長の一党独裁体制に不満をもっていた一方の主人公の課長代理の奮闘が手に汗を握る。結果的にはなかなか悪は滅びないわけであるが、企業内で繰り広げられるいやらしい政治的な駆け引きを臨場感を持って体験できる。

 ちょうど道路公団のF総裁更迭のニュースをやっていて、独裁体制だったらしいから、まさにこの小説を地で行くような話しだ。内部告発でことが起こり、その告発者が左遷させられるというあたりも小説といっしょ。歴史は繰り返すのね。

 作者Jは会社の偉い人を見て、「その3流政治家的な考え方はなんとかならんか...」などと偉そうなことをよく思っていたのであるが、そういう立場になるとそれはそれで面白いのかもしれない。面白いというよりもそれしかやることがないのかもしれない。

 「人事ほど面白いものはない」という言葉を聞いたことがあるが、そういう権利闘争の犠牲で地方に飛ばされたり、懲戒免職処分にされたりしたら、当事者にとってはたまらない。バブルの頃はこの小説のような話はよくあったらしいから、作者Jの会社でもあったのかも。

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