「砂の山陵」

...............梓林太郎
...............光文社文庫457円+税
...............ISBN4-334-73531-2


 今までの梓林太郎とは少し趣きが違う。「登山ルートで殺人」というネタも尽きてくるのかもしれない。誰かが「梓氏は山で何人殺す気だろう」と書いていたけれど、転換期かもしれない。

 山仲間3人に誘われて強盗事件を起こした青野は、家族を捨て逃亡生活に入る。いつ警察に嗅ぎつかれるかという不安を常に持ち、サラリーマンを装おって毎朝決まった時間にアパートを出て、夜まであてもなく時間をつぶす生活。
 そんな中デートクラブで知り合った20以上も年の離れた真弓と暮らし始め、一見幸せな家庭を築いていく。その一方で真弓にも過去を隠し続けなければいけない。純真無垢な真弓はその生活を疑うこともない。

 ある時真弓の願いを聞き入れ、いっしょに山に登る。ところが霧の山中で道に迷い、真弓とはぐれてしまう。普通なら遭難届けを出すところだが、逃亡中ということからそれもできない。そのため真弓は死んでしまう。その呵責に悩み、生きる希望も失う青野。
 結局その遭難事件から足が付き逮捕されてしまう。

 捨ててきた本当の妻から警察に差し入れがあり、逃亡中に助けた人からも手紙が届く。

 犯罪は犯罪。でも人間としての愛情はそれとは別の話。そんな所を書きたかったのであろうか...

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