「生命燃ゆ」

...............高杉 良
...............新潮文庫552円+税
...............ISBN4-10-130315-0


 誰かのエッセイで「卒業していく大学生に読ませたい本」と書かれていた本。だんだんと残りページが少なくなるにつれて、涙が止まらなくなった。

 石油コンビナートのコンピュータシステムに文字通り命をかけた主人公 柿崎。
 いわゆる仕事中毒の柿崎。
 糖尿病で視力がほとんどなくなっても働きつづけた柿崎。
 白血病を発病しふらふらになっても指示を与えつづけた柿崎。
 入院して生死をさまよっているときも、病室で妻に専門書を読ませつづけた柿崎。

 解説にも書かれているように、今の時代では
  「自分の自己管理もできないほど働いて、ばっかじゃないの。」
と言われてしまいそうである。
 でも、こういう話が好きなのだ作者Jは。

 ただの仕事中毒というだけでなく、上司からも、部下からも、もちろん妻からも信頼され、人望も厚かった。昭和50年頃という時代背景もあったのだろう。

 主人公の柿崎が病に倒れ、妻には白血病であることが告げられる。会社の後輩たちが輸血のために集まってくる、その数は80人を越えた。自分の死期を感じたのか、妻と二人の娘を病院に呼び、

「俺は、どんな、ことでも、つねに全力で、やって、きた。だから、未練はあるが、悔いはない。弘子も、陽子も、物事に、対して、つねに一生懸命であって、ほしい。お父さんが、できなかった、分も、勉強、してくれ。学ぶことの、尊さを、わかってほしい。お母さんを助けて・・・」

という言葉を残して帰らぬ人となる。

 昭和電工の大分石油コンビナート設立での実在の人物をモデルにした企業小説。

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