「黄色いドゥカと彼女の手」

...............文・原田宗典 絵・沢田としき
...............ミリオン出版1,200円
...............ISBN4-88672-046-3


 話しかけるきっかけは、やはりバイクのことがいいだろう。
「いいバイクだね」
 というのは当たり前すぎる。もう少し専門的な・・・・・例えば、チェーンの張りが足りないということや、前輪の山が減っていることなどがいい。K・Kはちょっと驚くかもしれない。しかし少なくとも痴漢を見るような目つきはしないはずだ。二人の間に停まっている二台のバイクが、彼女の心を和らげてくれる。最初は一言でいい。ぼくという人間が同じ大学に通っているのだということを、知ってもらうだけでいい。僕は毎日同じ場所、つまりCBXの隣に自分のバイクを停める。そして二人は少しずつ仲良くなっていく。
(「ただ眺めるだけの頃」より)

 バイク好きがバイクを見ているというのは本当で、同じような経験をしたことがある。と言っても残念ながら相手は女の子ではなかったけれど(笑)。

 北海道をツーリングした時の話。「幸福駅」で休憩していたときに、尾張小牧ナンバーのヤマハに乗ったやつが話しかけてきた。「このCB、図書館のところに停めてますよね」と。一瞬何のことかわからなかったけれど、大学の図書館の南側の同じところにいつもバイクを停めていたことを思い出した。彼は同じ大学で、作者JのCBを見て知っていたんだ。確かにナナハンは目立つし、ピカピカのCBも珍しかったのかもしれない。そんな不意な会話にちょっとだけビックリしたことを覚えている。まあ、逆の立場でもCBは記憶に残っていたと思うが。話しかけるかどうかは別として。

 こんな思い出を蘇らせてくれるような短篇ばかり。今ではバイク雑誌を手に取ることもなくなってしまったけれど、確か、ビレッジバンガードがまだ天白の1店舗だった頃に、バイク本コーナーで見つけて装丁の美しさと表題のカッコ良さに魅かれて買ったんだと思う。

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