「マドンナ」
...............奥田英朗
...............講談社1,400円+税
...............ISBN4-06-211485-2
ずっと前に買って、標題になっている「マドンナ」だけを読んで、ほかっておいた。先日直木賞の発表の折「奥田英朗」という受賞者の名前を聞いて、「どこかできいたような?」と、この本を思い出した。
標題のマドンナは「いかん、部下を好きになってはいかんのだ」という帯に踊る紹介文のとおり、自分の部下として異動して来た女性に課長が恋をしてしまい、部下の若い社員とライバル関係になってしまう悲喜劇。結局は、別に好きな人がいることがわかってしまうので、少しセツナイのだけれど。
四十二歳の春彦は結婚して十五年になる。その間三回、部下の女を好きになった。ただし一度も関係をもったことはない。春彦の場合、いい子だなと思った瞬間から夢想がはじまる。頭の中で恋愛物語を楽しむ。ただそれだけだ。
取り出した機会に、その他短編も呼んでみたが、なかなかに絶妙の話がとても正確な描写で描かれている。「賄賂と慣習」、「杓子定規と馴れ合い」など会社生活をしているとどうしても直面する(一生気付かない人もいるが...)問題の狭間で揺れ動く中年課長の悲哀が題材とされている。
また、普通の男性作者の企業小説だと、女性OLからの視点があまり描かれることはないのだが、この本では女子社員のちょっとした一言がとてもうまく描かれている。また、家庭での出来事と会社での出来事をうまくダブらせることでリアルさを出している。さすが直木賞作家か。
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