「私たちが好きだったこと」

...............宮本 輝
...............新潮文庫514円+税
...............ISBN4-10-130712-1


 会社の最寄り駅が名古屋駅である関係上、名駅周辺の本屋さんによく足を運ぶ。以前はテルミナ地下の三省堂が好きだったけれど、改装してからは本の並びが悪くなったような気がする(極めて個人的に)。最近は大名古屋ビルヂングへ続く地下街の入口にできた小さな三省堂に寄ることが多くなった。地下街の一画だから雑誌類と文庫が中心の店で、会社の帰りに文庫コーナーを覗くことが多い。

 ここの文庫本に、ちょっとした解説の紙が付き始めたのはいつからだろうか?この間気づいたときにはいくつかのお奨め本という形で、店員さん?のコメントがつけられていた。その中の1冊がこの本で、「こんな結末はないよなあ・・・」っていうようなことが書いてあった。ようするにハッピーエンドではないのだなと思って手に取った。宮本輝の本を読むのは初めてだったけれど、1ページ目を立ち読みして、その文章に魅かれるものがあった。

 ちょっとした偶然とイタズラ心から初対面にしていっしょに暮らすことになった男2人、女2人。当然それぞれカップルとなり、いろんな事が起こる。根底に流れているのは「誰かのために東奔西走する自分」ということだろうか。主人公与志の言葉を借りればこうなる。

「他人のために生きようと願ったわけでもなく、そのようであろうと努力したこともないにもかかわらず、私たちは他人が困っていると、なにか手助けをせずにはいられない。」

 そんな4人の共同生活は与志の自立?とともに終わりを迎える。三省堂の解説に書かれていたように主人公の与志と愛子は別れてしまうのだが、それはそれぞれが自分を見つけたということとも言え、それで良かったんじゃないかなあとも思った。

 映画にもなったみたいで、良く売れた本なのだろう。たしかにおもしろい話ではある。一気に2日くらいで読んでしまった。

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