「田中耕一という生き方」
...............黒田龍彦
...............大和書房1,500円+税(図書館)
...............ISBN4-479-39099-5
「田中さんフィーバー」だったのは早くも2年以上前なんですね(受賞の知らせは2002年10月09日)。当時は「一般企業の研究者なのにすごいなあ」と同じ研究開発職に就く者としてただただ感心していたような記憶があります。
それから例の「田中さんフィーバー」で田中さん像が伝わってきました。そういったニュースソースを注意深く精査していたわけではないので「あーやっぱりちょっと変わった人なんだなぁ」くらいに思っていました。
この本は田中さんの生い立ちから、田中さんの成し遂げたこと、質量分析という技術の重要性、などがわかりやすく書いてあります。上に書いたような偶像はあくまで偶像であって、(この本に書かれていることが真実だとすれば)田中さんの素顔を知ることができます。
田中さんの実母は田中さんを生んだ後亡くなり、その事実を知らされずに叔母夫婦に我が子のように育てられた田中さんは、大学入学の時にその事実を知ります。その時は3日間部屋にこもり口をきかなかったそうです。それから東北大学へ進み、実母の死を常に思い「病気を治す」ために役立ちたいという思いを強く持ったと言います。
そういうこともあって、エンジニアとして医療に貢献できる医療精密機器の島津製作所へと進みます。田中さんが発明した「たんぱく質を分析する方法」によって血液検査からその人の体調を知ることができるようになるかもしれないということです。
この本を読むまでは「ひたすらに研究ばかりしているだけで、商売などは不得意な人」なのではないかと思っていましたが、そうではありませんでした。発明を商品化するためにイギリスの関連会社に出向していたこともあるし、装置の据え付けのためにアメリカに長期出張したこともあるそうです。そういう意味では「研究ばかりしていて会社の利益には貢献しない研究者」とはやはり違うようです。だからこそ(ではないか?)きちんと評価され、ノーベル賞受賞となったのでしょう。
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