理想の結婚 An Ideal Husband

監督:オリヴァー・パーカー
出演:ケイト・ブランシェット、ルパート・エヴェレット、ジュリアン・ムーア、ミニー・ドライヴァー
    ジェレミー・ノーザム

オスカー・ワイルドの戯曲が原作。なんとも軽妙でウィットに富んだ楽しい映画
だ。1890年代のロンドン。アーサー・ゴーリング卿は父親の「結婚しろ」という
小言にも耳を貸さず、優雅で気ままな独身生活を楽しんでいる。親友のロバート
・チルターンの妹メイベルとの結婚話もあるが、優柔不断な彼は、社交界での
遊びに夢中で踏ん切りがつかない。
そのロバート・チルターンは有能な若手政治家。美しく聡明な妻ガートルードと
ともに、ロンドン社交界ではまさに「理想の夫婦」と称されている。しかし、ある
日、彼らの平和な生活に、ウィーンの社交界で名を馳せたチーヴリー夫人が
入り込んできた。
このチーヴリー夫人は実はロバートの過去の秘密を握っていた。この秘密を
ネタに彼を脅迫し、彼女が投資するアルゼンチンの運河計画を議会で後押し
させようとする。しかし、政治家としてのロバートはこの計画には反対だった。
埒があかないと感じたチーヴリー夫人は、このロバートの若き日の過ちをガー
トルードに暴露する。理想の夫が過ちを犯し、しかも彼女に黙っていたことに
ショックを受けたガートルードはロバートを追い出してしまう。そして、二人の仲
の仲裁をしようとしたアーサーだったが、実はチーヴリー夫人とアーサーはか
つて婚約していた仲なのであった・・・。

なんといっても、この映画ではルパート・エヴェレットがとても魅力的だ。軽や
かで優雅な遊び人、まさに独身貴族のアーサー役が見事にはまっている。
「理想の夫婦」の危機に、機転を働かせゴタゴタの末にも彼らを元の鞘に納め
る鮮やかな手腕は見事である。「ベスト・フレンズ・ウェディング」でも見せた
コミカルでダンディなキャラクターが生きている。「理想の妻」ガートルードは
ケイト・ブランシェットが好演。知的で貞淑だけど、ちょっと可愛らしいところも
あって素敵だ。そして、大いなる災難をもたらすチーヴリー夫人を演じるのは
ジュリアン・ムーア。いかにも陰謀を企みそうな、腹黒いけれどもあだっぽい
貴婦人役が似合っていて、悪女の魅力を振りまいている。しっかり者のメイ
ベル役、ミニー・ドライヴァーはキャラクターは比較的合っていると思うのだけ
ど、ルパート・エヴェレットにはあまり釣り合わないような気がしないでもない。

100年前が舞台となっている脚本なのだが、なんとも現代的な感じのする
作品である。大きなテーマとしては、「理想」に縛られていると人間、大切な
ものを見落としてしまうということ。自分たちこそが理想の夫婦だと思ってい
たロバートとガートルードは、それゆえ夫婦の危機を迎えてしまう。彼らは、
チーヴリー夫人によってもたらされた災厄を切り抜けるためのヒントとは、完
璧な人間なんてどこにもいないということだと知る。アーサーという完璧とは
程遠いけどチャーミングの人間の存在によって。

アーサーが語る台詞の一つ一つがウィットに富んでいて、素晴らしい。こん
な汚れた世の中で、清廉潔白な人間として生きていくことがどんなに大変な
ことか、彼は説く。現代にも通じるテーマである。まじめくさった人間ではなく、
一見軽薄な遊び人の彼がそれを言うことによって、説教臭さが取れていて
いい感じになっている。

すべてを丸く収めようとしたアーサーのところに関係者が集まってくるシーン
がとてもスリリングで面白い。ちょっとした勘違いや行き違いで、事態がます
ますややこしくなっていく。そして、ダークな色彩のインテリアがどこか淫靡な
アーサーの邸宅でチーヴリー夫人はアーサーを誘惑する。アーサーは自分の
運命と、チルターン夫妻の結婚生活の行方、さらにはロバートの政治生命を
も賭けた一世一代の博打に出る。ちゃらちゃらしていた印象の彼が、実は男
の中の男であったことを知るところだ。ハッピーエンドになることは予測できて
も、台本の構成が巧みなために、最後までハラハラドキドキさせられ、飽きる
ことはない。

上流階級を扱ったコスチュームプレイであるにもかかわらず、少しも古くさく
なく、機知と皮肉に満ちていて楽しい映画だ。オスカー・ワイルドの才能に
驚嘆する次第。

マーサ・ミーツ・ボーイズ Martha Meets Frank, Daniel and Laurence

監督:ニック・ハム
出演:モニカ・ポッター、ジョセフ・ファインズ、ルーファス・シーウェル、トム・ホランダー、レイ・ウィンストン

アメリカ、ミネアポリスに住むマーサは退屈な仕事、安い給料、不実な恋人、
何もない生活に飽き飽きし、人生をリセットするためロンドン行きの航空券を
手に入れて旅立った。彼女は空港で、そしてロンドンの街で3人の男性に出
会う。音楽業界の風雲児ダニエル、元子役スターで現在は売れない役者の
フランク、そしてブリッジ教室の先生ローレンス。3人は魅力的なマーサに恋
をするのだが、実はこの3人は子供時代からの親友だったのだ!

ダニエルは売れっ子プロデューサーだがプレイボーイのように見えて実はマ
ザコンの気がある。フランクはハンサムなのに過去の栄光があまりにも大き
かったためそれ以上飛躍することができず、うだつの上がらないのは自分の
せいではなくまわりのせいだと思っている。ローレンスはいい人だが、あまり
自分に自信が無く、優柔不断。実質的には、残り二人の男性の母親的な存
在だ。そんなちょっとうじうじした男性に比べて、マーサは新しい一歩を踏み
出そうとする勇気がある。自分に下心付きの好意を持ったダニエルからちゃ
っかりホテル代と食費を頂き、気に入った別の男性をその部屋に招待してし
まうしたたかさ。でも、決して嫌味には見えない爽やかさがある。金髪、くるく
る動く大きな瞳がとってもキュートなモニカ・ポッターの魅力が、マーサをとて
も可愛らしく、元気な女の子として印象づけている。
そしてそんな彼女と出会ったことで、3人の男性たちは、これまでの停滞して
しまっていた生活を考え直し、それぞれ前向きに人生をやり直そうと考えるの
であった。

また、この映画は構成がとても巧みなことを見逃してはならない。まずは、
ミネアポリスの空港でマーサに出会い、一目惚れするダニエル。ホテルを
提供したのに約束をすっぽかされたことをフランクとローレンスにダニエルは
嘆く。マーサとの出会いの話を聞いた直後、公園でフランクはマーサに出会
い、話は弾むが、美術館で彼女とはぐれてしまう。そして、その間にマーサ
はローレンスに出会っていたのだった。3人の男性がそれぞれ語るマーサと
の物語、でもマーサは終わりの方まで3人の関係に気づかない・・・。
それと、友情と愛情の狭間にハマって思い悩むローレンスが相談しに行く
カウンセラー役のレイ・ウィンストン、彼がとてもいい味を出している。彼の
正体をめぐるオチは巧みで、思わず舌を巻いてしまうほどだ。

飛行機の中で始まった物語が、飛行機の中で、同じようなシチュエーション
でハッピーエンドとなる。その構成がとっても洒落ていて、ナイス。とってもキ
ュートで前向きな、可愛いラブストーリーだ。この中に登場するロンドンの街
も素敵。マーサのように片道の切符を握りしめて、ロンドンに出かけたくなっ
てしまう。

御法度

監督:大島 渚
出演:松田龍平、ビートたけし、崔洋一、浅野忠信、武田真治、田口トモロヲ、トミーズ雅
    的場浩司、坂上二郎

幕末の京都の徒花として咲いた新撰組。幕府を守る警察的な組織として抗
争と殺戮に明け暮れる彼らの元に、一人の美少年が入隊する。彼の名は加
納惣三郎。「局中法度」「軍中法度」という厳しい戒律の元にあった新撰組の
結束が、その美少年の美しさゆえに嫉妬と噂が渦巻くようになり、崩れていく。

物語の核となる加納惣三郎を演じる松田龍平はなるほど、独特の美貌を誇っ
ている。現代的な容貌ではないが個性的な顔をしていて、確かに魔性を感じ
させる。「ファム・ファタル」という表現があるが、彼はまさにその男性版だ。
裕福な商家に育った彼が新撰組を志した理由とは、「人を斬ることができる
から」。惣三郎は、戒律を破った隊士の首を顔色一つ変えずに斬ってしまい、
まわりをうならせる。が、土方歳三は、惣三郎は人を斬り、血が噴き出す感
触に酔っているのではないかと疑ってかかるのだ。それは一つの愛情表現
ですらあるように思える。

そんな惣三郎にまず惚れるのが、同期入隊の田代彪三で、「衆道」という男
色の道に彼を目覚めさせる。しかし、他の隊士たちも、みな惣三郎の美しさ
の虜となり、それは総長の近藤勇も例外ではなかった。若くて男前な田代
だけではなく、年老いた隊士井上までもが彼に惹かれる。滑稽だけどもと
てもせつない愛情なのだ。そうやって新撰組という殺人集団が、美少年の
色香に狂わされていく様が官能的に描かれていく。まさに「やおい映画」
といえる作品である。

中でも印象的なのが、ねっとりとした視線で惣三郎を見つめ、彼に激しい想い
を抱く隊士・湯沢だ。田口トモロヲ演じる湯沢は、惣三郎が愛しているのは
田代であるということを知りながらも彼に迫る。惣三郎と湯沢のラブシーンは
とても強烈だ。男の嫉妬がこれでもかとばかりに描かれていてとても痛い。
そんな熱すぎる思いが、やがて湯沢の命取りとなるのだった。

幽玄と言える美に酔わされるのが、湯沢殺しの犯人と目された田代が斬殺
されることになる河原でのシーンだ。田代を待ち受ける惣三郎を見守る土方
と沖田総司。クールな沖田が語るのは、「雨月物語」の中の「菊花の契」と
いう物語。信義を守ろうとして命を落とした男が、その契りの相手のところに
霊となって現れるという美しい話だ。沖田は、これは衆道の交わりを結んだ
男たちの物語だという。土方の目に浮かぶ、新撰組の男たちの幻想。闇の
中の美しい幻影と、愛した男を今まさに斬ろうとする惣三郎の姿がだぶると
ころは息を呑むほどのエロスを感じさせる。

映画全体を包む妖しさ、これがこの作品の最大の魅力。たった一人の少年
の魔力が、人を斬ることに歓びを見出す男だけの集団の中に巻き起こす噂
と混乱の様子は面白い。ただチャンバラの場面はかなり物足りないし、
物語のもう一つの核となるべき田代の登場する場面が拍子抜けするほど少
ないのは残念。果たして、田代と惣三郎の関係とはどんなものだったのかは、
観る者が想像力を働かせるしかない。その謎の部分を残したのは、おそらく
大島渚の作為によるものだとは思うし、これもまた「うまさ」なのかもしれない。

HEART

監督:チャールウ・マクドネル
脚本:ジミー・マクガヴァン
出演:サスキア・リーヴス、クリストファー・エクルトン、リス・エヴァンス、ケイト・ハーディ

ゲイリーは飛行機で運搬業をしていて、妻のテスはテレビ局のプロデューサー。
心臓の悪いゲイリーは妻が浮気をしているという妄想からテスと諍いを起こし
心臓発作で倒れる。車椅子の生活から快復するには、心臓を移植するしかな
い。その間に、彼の心臓のことが気になって夫と性生活を営むことができない
テスは作家のアレックスとの情事に溺れる。
そんなある日、ゲイリーに心臓を提供できる人が現れた。麻薬中毒のニコラが
起こした交通事故で脳死状態に陥った若者ショーンが、ドナーカードを持ってい
たのだ。心臓を移植されたゲイリーは元の生活に復帰できるほど回復したが、
妻がアレックスと浮気を続けているのではないかと猜疑心の虜になる。一方、
ショーンを失った悲しみから立ち直れないのは、母親のマリア。若くして彼を
産んだマリアは、息子に深い愛情を持っていたのだ。彼女の元に、ショーンが
心臓提供者であったことを突き止めたゲイリーが訪れる。そして、さらなる悲劇
の幕が上がったのだった。

映画は、血塗れのバッグを抱え、自身も血を浴びたマリアが電車に乗っていると
いう強烈な映像から始まる。こんな凄まじい様子の彼女に、周囲の人が気づか
ない様子が、彼女の、バッグの中身=息子ショーンの心臓への過剰なまでの
愛情、執着を象徴している。
マリアの、息子への愛情は並はずれたものであった。10代でシングルマザー
となり女手一つで育て上げたショーン。ボクシングの選手として、イギリスの次
期オリンピック代表にも決まっていた彼は、自慢の息子であった。彼女にとって
若くて強くて美しい息子は、恋人のような存在だった。息子への彼女の愛情は、
彼を失った後でも、この世に唯一残った彼の心臓への愛情という形で生き続け
る。予告編を観ると、まるでマリアは息子の心臓の持ち主であるゲイリーを愛す
るようになったのではないかと思ってしまうのだが、物語はそこまで単純ではな
い。たしかに、マリアはまるでストーカーのようにゲイリーにつきまとう。でも、そ
れはあくまでも、彼がショーンの心臓の持ち主であるからつきまとっているに
過ぎない。唯一生きているショーンの臓器の近くにいたいという母としての愛情
が為せる行動なのだ。テレビ局の仕事が忙しいため冷凍食品で済ませ、ピルを
飲んで避妊しているテスを非難する行動も、息子の心臓を宿しているゲイリーを
気遣うあまりのことである。

マリアの、息子ショーンと彼の心臓に対する激しすぎる愛情が縦軸とすれば、
横軸はゲイリーとその妻テスとの関係となる。ゲイリーは心臓が悪いことで、
自分の性的能力にコンプレックスがあり、またテスは心臓の悪い夫とのセック
スに熱中できない。ゲイリーは妻を愛しているが猜疑心の塊となっている。テス
はアレックスとの情事に溺れているが、それは彼のことを愛しているからではな
く単に肉体的に満たされないからそのはけ口として浮気をしているだけだ。ゲイ
リーが回復したらもうアレックスの存在は不要になったはずだった。しかしアレッ
クスは、テスを愛しているわけではなかったけれども、女性を征服するのに無上
の歓びを見出す男で、テスにつきまとう。ゲイリーとテスは愛し合っているにも
関わらず、実はお互い身勝手な存在でもある。そんな彼らの関係は、マリアの
出現で崩壊へと向かうのであった。マリアの存在は、実は単なるきっかけだった
のだ。しかも、悲劇の扉を開けたのは、提供者の母がマリアであったことを突き
止め、彼女の元を訪れたゲイリーなのである。

心臓というのは、不思議な臓器だ。心臓が止まれば人は死ぬ。心臓がなければ
人は生きていくことはできない。しかし、医学の進歩と共に、脳死も人の死と認
められるようになった。そして、脳が死んだ後でもまだ動いている心臓が、他の
人間に移植され、生きている体で再び鼓動を打つことができるようになる。その
ように医学の進歩を象徴する存在でありながら、同時に「心」を象徴するもので
もある。人は心がときめくと心臓をドキドキさせ、悲しいときには胸が痛くなる。
医学的にそれはどのような仕組みになっているのかわからないけど、感情の
宿る臓器でもあるのだ。それだけに、ショーンの心臓を移植されたゲイリーが、
まるでショーンの心まで移植されたようにマリアは感じてしまったのだった。
また、ボクシングの選手であったショーンの心臓を移植されたと聞いて、ゲイリ
ーは自分が人一倍頑健になったと思いこむ。

心臓移植手術の場面で、ゲイリーやショーンの心臓がピクピク動く生々しい様
子。心臓を抜かれ、縫合の痕も生々しい、でもまだ生きているかのようにも見え
る息子の遺体を抱くマリア。彼女の血と肉を分けた息子への悲しいまでの思い
が見て取れる。そして、血塗れの姿でショーンの墓に彼の心臓を埋めようとする
マリア。かなりグロテスクなシーンでもありながら、どこか荘重な、ギリシア悲劇
を思わせる端正さがある。心臓移植という現代的なテーマを扱いながらも、息子
への深い愛情、心という普遍的なテーマを描き出している。そして、あまりにも
意外な悲劇の行方には驚いた。好き嫌いはかなり分かれると思うけど、片時も
目を離せない緊張感を持った力強い作品だ。

WiLD ZERO

監督:竹内鉄郎
出演:ギターウルフ、遠藤雅、シティチャイ・クワンチャイル、稲宮誠、仲条春香

最近「おバカ映画」という表現方法がはやっているらしい。「馬鹿」に「お」を
つけることで、「こんな馬鹿な映画を見る私っておっしゃれ〜」って言いたいが
ための表現なんじゃないの、と意地悪な私は思ってしまう。しかし、「おバカ
映画ブーム」を吹き飛ばすような超弩級馬鹿映画が登場した。はっきり言
ってどうしようもない「バカ映画」である。しかしこの馬鹿さ加減にものすごい
パワーを感じさせるのだ。

ギターウルフというバンドがある。私はよく知らなかったのだが、90年代にあ
って未だに皮ジャン、サングラス、リーゼント、バイクといういでたちで、単
純なロックンロールを聞かせるアナクロなバンドである。あまりにもアナクロ
なため、なぜか日本よりも海外で人気があるらしい。メンバーの名前からして
ギターウルフ、ベースウルフ、ドラムウルフだからほとんどお笑いである。

彼らの活躍を描いた映画だが、どういう映画かと説明すると、「マーズ・アタッ
ク」と「ゾンビ」と「クライイング・ゲーム」と「フロム・ダスク・ティル・ドーン」とい
った要素をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせて、「ロケンロール」で味付けしたような
ものだ。ヅラがバレバレの極悪ライブハウスオーナー、頭の悪そうなロケンロ
ール少年、謎の美少女、峰不二子のような脚の長いセクシーな武器商人、
UFO、火を噴くバイク、そして大量のゾンビが登場する。

ストーリーは単純だ。ギターウルフの大ファンだった少年エースが、悪徳ライ
ブハウスオーナー「キャプテン」と喧嘩し、銃を突き合わせるギターウルフの
危機を救う。ギターウルフはエースに、「何かがあったら俺達を呼べ」と笛を
プレゼントする。バイクでギターウルフのライブに向かった彼はガソリンスタン
ドで美少女トビオに出会い一目惚れ。しばらくして、彼はゾンビの大群を見か
け、トビオを助けにガソリンスタンドへ戻るが、思いがけない彼女の秘密を知
ってしまう。びびった彼は一度は彼女を置いて逃げ出そうとするが、笛を吹
いて助けを求める。笛の音を聞いたギターウルフは仲間をゾンビに食われて
しまったアベックや女武器商人の山崎と合流。UFOの大群が地球を襲い、
街からは人の影が消える。がらんどうになった街で、山崎、悪徳ライブハウス
オーナー、そしてギターウルフがゾンビたちと対決するのだった!

前半はとってもタルい映画。いろんな登場人物が出てくるのだが、最初のうち
は彼らの間にどのような繋がりがあるのかよく分からない。おまけに見るから
に低予算だし役者の演技も下手糞だ。しかし大量のゾンビが登場する頃から
俄然面白くなる。いかにも安っぽいゾンビメイクには笑いを誘われる。彼らはタイ
人だそうだ。エースを奮い立たせるギターウルフの決め台詞は「ロケンロール
!」。ゾンビに襲われ、思わずひるんだエースの前に登場するギターウルフの
幻影がシャウトする「愛に男も女も国境もあるものか!ロケンロール!」には
大爆笑。ゾンビとの血みどろ対決シーンでも涼しい顔をしてリーゼントを梳かし
つけているベースウルフとドラムウルフ。そしてラストの、UFOの親玉をやっつ
ける場面では、これまでの映画人生が根底から崩れ落ちるような馬鹿パワー
が炸裂して、衝撃的だ。そうだ、愛とロケンロールが地球を救うのだ!

トビオの台詞が極端に少なく、台詞も不自然だと思ったら、彼女を演じるのは、
ロケ先のタイのクラブでナンパした美少年で、日本語も喋れないのでアテレコ
したらしい。低予算も、ストーリーのなさも、演技力の無さも、すべて「ロケンロ
ール!」の決め台詞とギターウルフのアナクロな存在感、炸裂する馬鹿パワ
ーでカバーできてしまって、とんでもなくインパクトの強い作品に仕上がってい
る。