フォーエバー・フィーバー Forever Fever

監督:グレン・ゴーイ
出演:エイドリアン・パン、メダリン・タン、アナベル・フランシス、ピエール・プン

1977年、映画「サタデー・ナイト・フィーバー」が大ヒットし、ディスコのブームが世界
中を席巻していた。シンガポールに住む青年ホックは、ブルース・リーとバイクに憧れ
る平凡というかボンクラな若者。スーパーに勤め、口うるさい両親、優等生の弟、夢見
がちの不細工な妹と変わり映えのない暮らしをしていた。そんな彼がある日、仲間た
ちと「サタデー・ナイト・フィーバー」もどきの映画を見に行った。そして、彼の中の何か
が変わった。彼はダンスに夢中になったのだ。ダンスコンテストに出場し、優勝すれば
賞金でバイクが買える・・・。

単純な青春物語のように思えるが、この映画には、それだけでは終わらない「何か
」があるのだ。「サタデー・ナイト・フィーバー」とブルース・リーは本当にこの時代、世
界中を席巻したんだな、とまず実感。ブルース・リーの「ドラゴンへの道」のすべての
振りと台詞を覚えているホック。そんな彼が映画館で「サタデー・ナイト・フィーバー」
もどきの映画を見に行ったとき、なんとジョン・トラボルタ(もちろん、本物ではなく、
全然似ていない偽トラボルタ)が画面から出てきて彼に話しかけてしまうという「カイ
ロの紫のバラ」にあったような展開となる。このときダンスの神様が、この平凡な青
年の中に入り込んだのだった。

ディスコとブルース・リーに夢中、というと、まるで「ブギー・ナイツ」のマーク・ウォル
バーグが演じた役のようだがこの映画のテーマも、「ブギー・ナイツ」同様「どんな人
にも、誰にも負けない取り柄がある」というものだ。そんな彼を支えるのが、映画の
中から出てきた偽トラボルタ。幼なじみの少女メイ。仲間たち。美しいジュリー。優等
生だったはずの弟(途中で妹になってしまう!)や、妹との兄弟愛には泣かされる。
みんなとても一生懸命で輝いている。

その輝きが最大限に発揮されたのが、初めてホックがディスコに足を踏み入れたと
き。ディスコなんて行ったことないし・・と後込みをするホックを、偽トラボルタが励ま
す。美容院で髪をセットし、キラキラ光るシャツ、ぴちぴちのパンツでキメ、ひとたび
フロアで踊り始めたらもう場内は大喝采、驚きとも歓びともつかないため息が漏れ
る。「サタデー・ナイト・フィーバー」でトラボルタが見せたのと同じあの天井を指さす
ポーズから始まる10分間は、まさに至福の時間だ。ホックのことをダサいやつだと
バカにしていた連中も、そして私たち観客も、目を瞠った。ダサくても、一生懸命な
人間はどこまでもキラキラ輝いて見えるのだ。

バイクを得るためにダンスを始めた青年が、ダンスを通して成長し、もっと大切なモノ
に気づく。幼なじみのメイの愛に初めて気づく。弟や妹のかけがえのなさに気づく。
その過程を丁寧に描いてて、楽しいだけでなく、ちゃんと一本筋の通った作品となっ
ている。70年代のディスコ・ヒットの名曲たちも、すべてシンガポールカバーなのが、
かえってアジア的なフェイク感覚でそれっぽい。それに、終盤、ホックは得意のカンフ
ーアクションでビシっとキメてくれて、これ以上ないと言うくらいサービス精神も発揮さ
れている作品となっている。

70年代。今から見るととてつもなくダサい服装や振り付けも、あのときは最先端だ
った。ダンスコンテストでは、もちろんトラボルタと同じ白いタキシード。甘酸っぱい
青春の匂いがする。シンガポールという、映画作りはさほどこなれていない国の作
品だがストレートで、楽しく、笑って泣ける作品だ。ホック役のエイドリアン・パンの
踊りやカンフーは非常にキレがよいし、ジュリーのゴージャスなアジアン・ビューテ
ィーぶりも素晴らしい(ちょっと松田聖子に似ているけど)。映画の構成もメリハリが
効いていて、まったく退屈することはない。いい映画だ。目新しい物語ではないの
に、愛情を込めて丁寧に作ればこんなに素晴らしいものになる、という見本のよう
な作品だ。この楽しさは、あの時代の「サタデー・ナイト・フィーバー」やブルース・
リーのように、全世界的に通用するものだからだ。熱くて、爽快で、涙と笑いが満
載。これぞ、エンターテインメント!「映画」ならではの楽しさだ!騙されたと思って
観て欲しい!私はこの映画を観るのが3回目なのだけど、これはもう何回観ても
最高に楽しめ、新しい発見がある作品なのだ。

この映画の特集を組んだ映画館主・Fさんの「DAY FOR NIGHT」へ

MONDAY

監督:サブ
出演:堤真一、西田尚美、山本亨、松雪泰子、寺島進、安藤政信、大河内奈々子、塩見三省
    野田秀樹、小島聖、大杉漣、麿赤児

平凡なサラリーマン高木は、ある日ホテルの一室で目が覚めた。黒い礼服を着てい
る。しかし彼はなぜ自分がここにいるのか、全くわからない。少しずつ記憶を呼び醒
ますうちに、自分が泥酔した上でとんでもない事件に巻き込まれていることに気が
つく。すべては、同僚の葬式から始まったことだった…。

酒の上での失敗というのは、お酒を飲むことのある人だったら必ず一度や二度は思
い当たるものだと思う。記憶をなくしている間に、とんでもないことをしでかしたことだ
ってある人は多いのではないか。この映画は、その「酒の上での失敗」を大げさに、
面白おかしく描いたことで、多くの人の共感を得ようとしたものだ。しかも、許容範囲
内ギリギリ、もしくは超えてしまっているあぶないギャグが多い。

冒頭の葬式のシーンが大傑作。まず故人の遺影が、よく理髪店に飾ってあるヘア
スタイルの見本の写真で、妙に斜に構えているのが笑える。そこから理髪店の場
所はどこだったかなど、参列者は葬式だというのも忘れて会話を始めて勝手に盛
り上がっている。次に棺の配置が北枕ではないとみんなで棺を担いで置き換える。
そこへ医師から電話がかかってきて、故人の体に埋め込まれたペースメーカーの
電源が入ったままで、火葬すると爆発するので配線を切って欲しいと。白いコード
を切ればいいと言うのだが、ペースメーカーの配線は2本とも赤!爆弾が仕掛けら
れたのと同じようなシチュエーションで、どっちかを選んで切らなくてならないのだが
間違った方を切ってしまい、故人の目が開いたかと思ったら爆発!参列者がみんな
後ずさりするシーンのおかしさといったら!

しかしこの後はややもたつく。人の話を全然聞かない高木の恋人西田尚美はなか
なか笑わせてくれるけど、クラブで泥酔し、美女とセクシーな踊りを踊ってヤクザと
親しくなり、しかしそのヤクザを謝って射殺するくだりまで、もっとキレのある演出で
なくてはならないのにどうもテンポが悪いのだ。そしてオヤジ狩りのバカップルを制
裁した後ホテルに籠城し、そこでまた彼を包囲するSWAT隊員までも射殺してしまう
段になると、ちょっと洒落にならなくなってくる。笑えないというか。

ホテルで自分が起こした事件が大騒ぎになっているのに気がつき、ついに遺書を
書こうとするが遺書の内容がすごくおかしい。やたら家族が多くて、しかも兄弟の
名前が太郎とか二郎とかで、さらに「庭の桜の木はうどんこ病に気をつけて」とか
恋人に「もっと人の話を聞けばもっと素敵な人になると思う」なんて書いていたりし
て笑わせてくれる。それから自殺を図ろうとするが、ショットガンの銃身が長すぎて
失敗。このくだりも面白いんだけどね。

終盤、警官隊に包囲されたときにいきなり銃反対のメッセージを演説し始めたりす
るのにはちょいと引いてしまった。そして、なんだか妙に真面目になってしまって
すっきりしない、カタルシスのない終わり方へ。
悪魔に取り憑かれたという設定になってきて、白塗りの大駱駝艦が出てくるのも、
ひねりが無さ過ぎる。
よって、「ところどころはおかしいし、田口トモロヲや西田尚美などの脇役の使い方
も面白いけど(例によってみょうちきりんな変装をしていてテレビに大学教授役で出
てくる田口トモロヲは期待通り)、テンポが悪くてイライラさせられ、しかもなんだか
納得のいかない締めくくり方になってしまったのは残念。どうせ酔っぱらいの大バカ
話だったら、もっとバカに徹した方が良かったのでは?美女役の松雪泰子がさほど
魅力的でなく、肌がやたら汚かったのもマイナス。

スーパーフライ Superfly

監督:ゴードン・パークスJr
出演:ロン・オニール、カール・リー、ジュリアス・W・ハリス、シェイラ・フレイジャー

コカイン売人のプリーストは、50人の密売組織のトップにまで登り詰めた。ロールス
・ロイスを乗り回し、シックなファンションでキメて金や女にも不自由しない。しかし、
いつまでもこのような生活が続かないと思っていた彼は、最後の賭けに出る。30キ
ロのコカインを100万ドルで売りさばき、愛する女とこの貧民街を出て自由になりた
いと思ったのだ。

28年前に作られたこの映画は、映画そのものよりも、サウンドトラック盤が圧倒的に
有名だ。昨年、惜しまれながらもこの世を去ったニュー・ソウルの旗手カーティス・メイ
フィールドが手がけ、全米ナンバーワンに輝いたのである。カーティス本人も、プリー
ストの兄貴分でありドラッグの仕入れ元であるスカターが経営する店で歌っている、
というシチュエーションで登場する。何曲も大ヒット曲が生まれたというこのサウンド
トラックは確かに素晴らしい。カーティスの哀愁を帯びたファルセット・ヴォイスは耳に
残る。映画のために作られたレコードのため、登場人物の心情が細やかに歌われて
いて、非常に効果的だ。

この映画は、当時のブラック・スプロイテーションと呼ばれる一連のブラック・ムービー
の一本であるわけだが、単に黒人マーケットを当て込んだというだけではない作品だ。
監督はこのたびリメイクされた「黒いジャガー」(Shaft)の監督ゴードン・パークスの息
子。メジャースタジオと折り合いがつかず、資金はハーレムに住む売人やポン引きか
ら調達したそうだ。そのためか、当時のファッションや生活が克明に記録されている。
体にぴったりとしたスーツ、ベルベットなど最先端のファッションでキメたプリーストは、
今から見てもとてもお洒落でカッコイイ。バスタブの中でのベッドシーンなどは、黒人
の艶やかな肉体が強調されていて、息を呑むほど美しい。

ここでは、「Black is Beautiful」のほかに、「白人の支配から逃れる」というのが最大
のメッセージとなっている。プリーストのコカインの仕入先であるスカター。彼は一度
はこの世界から足を洗おうとし、クラブを開店する。成功していたかに見えた彼だが、
結局は売人たちと手を切れない。プリーストは、そんな彼を見て、この街を出て行くし
かないと決意したのだ。しかも、スカターは白人たち、それも腐敗した警察官たちから
コカインを仕入れていた。白人に支配されているも同然であるし、彼らに不要だと見な
されたら消される。

プリーストの相棒エディは、計画が成功したときには100万ドルの利益を山分けする
ことになっていた。白人が彼らに仕入れルートを確保してくれると約束し、エディはこん
なおいしい話はない、街を出ていく計画は白紙にしようと主張するが、プリーストには
そんなことは我慢ならなかった。彼は黒人としての誇りを賭けて戦うことになったのだ。

基本的には低予算のB級ムービーだが、作品に息づく情熱を感じることができる。白
人に媚びを売らずかっこよくタフで美しいブラック・ピープルを見ることのできる、なかな
か得難い作品だ。決してカーティス・メイフィールドの音楽が素晴らしいというだけの作
品ではない。

また、この作品は映画会社ではなく、一介のソウルミュージックファンが作品に惚れ
込んで素人でありながら配給したものである。その情熱を、映画の中でも感じることが
できる。