監督:フランク・オズ
出演:ロバート・デ・ニーロ、エドワード・ノートン、マーロン・ブランド、アンジェラ・バセット
泥棒稼業を始めて25年のニック・ウェルズは、この世に開けられない金庫などないと
いうほどの達人。そろそろ引退し、長年の夢であったジャズ・クラブの経営に専念し
恋人と暮らそうととえていた。そんな時、長年のパートナーであるマックスから、不可
能としか思えない盗みの話を持ちかけられる。地元モントリオール税関の金庫に保
管されている、フランス王家の秘宝である金の杓を盗み出すというもので、報酬は
400万ドル。ニックはこれを最後の仕事とすることを決めた。ニックは街で障害者を装
う若い男に遭遇するが、この男こそ、今回の仕事で手引きをするジャックだった。だ
が、この三人の間には不協和音が流れる。果たして、一世一代の「ビッグ・スコア」
は成功するのだろうか?
なんとも渋い映画である。舞台となるモントリオールは、カナダでもフランス語圏の
街ということもあって、ヨーロッパの都市のようなシックなたたずまい。デ・ニーロ扮
するニックが経営するクラブもとても洒落ていて、しかもカサンドラ・ウィルソンが出
演するような一流ジャズクラブである。実際劇中でカサンドラのヴェルヴェットのよ
うな歌声を聞くことが出来て、思いがけず得した気分になった。
ニックはそろそろ泥棒稼業から足を洗おうと考えていた。こんな一流のクラブのオー
ナーになれてしまうほどの金は稼げたし、年も年だ。長年の恋人と静かな暮らしが
したい。しかも、恋人はアンジェラ・バセットが扮する、とびっきりのいい女だ(デ・ニ
ーロの有色人種好きを知っていると、にやりとするようなキャスティングの妙だ)。
しかし、人間の欲望というものにはキリがない。ジャズクラブ開店にかかった費用の
ための借金を早く返したいと思ったニックは、「危ない橋は渡らない」「決して地元で
は仕事をしない」「仲間は持たない」というこれまでの信条を破ってまでも、この仕事
を引き受けることになった。
すっかり年取ってしまって太ってしまい、正直あまりたいした役割ではないマーロン
・ブランドは置いておいて、この映画の見所といえばデ・ニーロとノートンという新旧
演技派のぶつかり合いだろう。ノートンは知的障害者のふりをしている男で、最初
から最後まで、信用できる男なのかどうかわからない胡散臭さを振りまいている。
本当は彼はどんな奴なのか、というのが映画の大きなポイントになっているのだが、
今回はややオーバーアクトで、演技巧者が逆に鼻につく感じ。割と早い段階で正体
もわかってしまうし。それに対して、さすがにデ・ニーロは余裕と風格を感じさせる、
控えめだがしっかりとした演技に説得力をもたせている。恋人やジャズが大事で、
自分の住む街に愛着があるという、どっしりとしたキャラクターにも好感が持てるし、
実際にジャズが好きなデ・ニーロだから、さらにリアリティがある。
税関に勤めているジャック=ノートンが手引きをして、杓を盗み出す実行犯はニック
=デ・ニーロというわけだが、この盗み方が実にアナログ的なのだ。何重にもかか
っているセンサーを避けるために、ニックは天井をつたって逆さ吊りになって盗み出
そうとする。この場面はアナクロ的であるがゆえに、逆に手に汗を握り緊張感が最
大限になるところである。いかにもプロフェッショナルの泥棒の仕事という感じで、
ここまで来ると職人技だ。この姿勢は、大スターになって、いい年になっても、こう
やって肉体を酷使しているデ・ニーロ本人に通じるものがある。この二人が、お互
い疑心暗鬼になったり、信用したりという関係性の緊張感もある。
派手さのかけらもない、だけど雰囲気はたっぷりあるクラシックなサスペンスとなっ
ているのはいい。今時こんな古きよきフィルム・ノワールという感じの映画は少ない
ので、かえって新鮮に思えた。ただ、結末のつけ方はちょっと乱暴で、しかもすぐに
想像がついてしまうオチなのは少々残念。