監督:スティーブン・ヘレック
出演:マーク・ウォルバーグ、ジェニファー・アニストン、ジェイソン・フレミング、ドミニク・ウェスト、
ティモシー・スポール
OA機器の修理工として働く実家住まいのしがない青年クリス。唯一の生きがい
は、憧れのハードロックグループ「スティール・ドラゴン」のコピーバンドで本物そ
っくりに熱唱すること。そんな彼がある日突然、本家スティール・ドラゴンの新規
ヴォーカリストに大抜擢される。ただのロック・ファンから一躍スターダムに登りつ
めたクリスは有頂天になるが、やがて何かが違うことに気づく…。
実際にあったジューダス・プリーストのヴォーカリスト交代劇を元にしているとい
うことだが、音楽性は全然違う(こっちはもっとポップだ)。首になってしまった元
ヴォーカリストがゲイだったという設定は本物と一緒だけど。ロブ・ハルフォード
役のジェイソン・フレミングは、妖しげなキャラがはまっていて最高に笑える。
ただ、実際にジューダス・プリーストのファンで来日公演にも行ったことがある私
なので、かなり複雑な思いで見てしまった。う〜んあれでは、へヴィ・メタルのア
ーティストはみんなセックス、ドラッグ&ロックンロールで生きているとしか受け取
られないではないか。あと、元ラッパーのマーク・ウォルバーグにメタル青年をさ
せるのはかなり無理がある。ボンクラな主人公のキャラには合っているけど、長
髪似合わないし。本人も、最初はヘヴィ・メタル野郎の役は嫌だったらしい。結局
クリスもハードロックの世界から抜けて、グランジ系に走るのであるのはそのため
か?
でも、ヘヴィ・メタルに青春を捧げた身には、かなり嬉しいところもたくさんあった。
「スティール・ドラゴン」のメンバーの豪華なことといったら!ザック・ワイルドなん
てギターの神様みたいなモンですよ。マーク・ウォルバーグのヴォーカルの吹き
替えはジョフ・スコット・ソト(イングヴェイ・マルムスティーンのヴォーカリストだった
人ですな)で、曲もキッスやデフ・レパードなど、有名どころを多く使っていて懐か
しいことこの上ない。売れないバンド同士の争いとか、ロック・スターの妻の苦労
とか、クリスが転落して血まみれになったことで、却ってコンサートが盛り上がっ
たりとか、いろいろと笑えるネタはあった。ロックに興味のない人手も十分に楽し
める、ウェルメイドな作品だと思う。同じくロックをテーマにした映画としては大傑
作の「スティル・クレイジー」にも出演している、マネージャー役のティモシー・ス
ポールも浮草稼業の悲哀を感じさせて良かった。
なんだか本筋とは全く違う話ばかりをしてしまったので軌道修正。マーク・ウォル
バーグ演じるクリスは、スティール・ドラゴンのコピーバンド(オマージュと自称し
ているけど、コピーはコピー)をやることに固執していて、実際にライブを行うとき
も、ギタリストが本家と違うギターソロをやることにも反対して大喧嘩となるほどだ
った。そして、コピーバンドで行くか、オリジナルをやるかという方向性の違いで
バンドを首になった矢先に、スティール・ドラゴンのヴォーカリストとして抜擢され
る。
面白いのが、アマチュア時代はコピーであることに固執していたクリスが、いざス
ティール・ドラゴンのメンバーとなったら、やがて自分のオリジナルの曲を書きたく
なって、ベテランぞろいのメンバーにその曲を渡そうとすることだ。で、当然のよう
に却下された彼は、やがてスターの地位を捨てて、オリジナルの音楽を追求し始
めることになる。ビッグなバンドの歯車となって初めて、スターであることよりも、
やりたいことが大事であること、そして、オリジナリティの大切さに気づいたという
わけだ。
ロックとはかくあるべし、という高邁な理想を掲げていたとしても、ショービジネス
であることには変わりはなく、みんなの憧れであるロック界、スターダムというの
も、いろいろとドロドロしているという内実を見せる映画だ。しかしながら、それで
も、ロックは最高に素敵なものである。そして、華やかな世界の中でも自分を見
失わないで、理想の音楽を追求していこうとする人間がいるというのは、これま
た一つのキラキラ輝く夢を見せてくれているものなのだ。そして、今日もロックは
私達の魂を奪うようなパワーで耳に響いてくる。
監督:滝田洋二郎
出演:野村萬斎、伊藤英明、真田広之、小泉今日子、今井恵理子、夏川結衣
時は平安京。暗黒の世を鎮め、この世との調和を取る「陰陽師」と呼ばれる男た
ちがいた。当代きっての陰陽師・安倍晴明は最近、都のあちこちで物の怪たちが
うごめき始めたことを感じていた。「都の守り人」と予言された、生まれたばかり
の敦平親王の身に異変が起きたことを告げに、右近衛府中将・源博雅が晴明の
屋敷に駆けこむ。晴明は親王に強い"呪"がかけられていることを察知し、この謎
と呪を解くために、不思議な女・青音を呼び寄せ、帝がいる内裏に向かう。しかし
親王に込められた呪は、これから晴明たちの前に起きる想像を超えた出来事の
前兆に過ぎなかった…。
安倍晴明役を野村萬斎にキャスティングした時点で、この映画の成功は約束され
たのではないか、と思う。あの立ち居振舞いの美しさ、森の中を走っていくときの
重心の全く動かない優雅な動き。そして、妖しげな流し目。朗々としてキレのいい
発声。おほほほ笑いも似合い過ぎているほど。美女をはべらして横座りしている
姿の色気も素敵で、もう最高である。道尊との対決シーンのひらひら舞う様子も、
彼だからこそ、さまになるのだ。それに対する悪役の真田広之も、実に楽しそうに、
生き生きと徹底的に腹黒く悪い奴を演じている。主役と悪役がよければ、あとの
俳優がへたくそだろうと気にならない。
問題のほかの役者。博雅役の伊藤英明はもともとあまり上手い人ではないが、
この役では、ほとんど馬鹿にしか見えないほどのお人よしの博雅が意外と似合っ
ている。口をぽかんと開けての演技は、演技なのか地なのかはわからないけど、
晴明に惚れられるほどの心の清らかさは表現できている。(どう考えても、晴明と
博雅は愛し合っているってことだよね) 密虫役の今井恵理子。う〜んどうしようも
ないといえばどうしようもないのだが、所詮は人間ではなく式神なのだから、演技
というものが必要でない役だから、しょうがないか。瓜の女というチョイ役に、実は
演技の上手い宝生舞を使うんだったら、彼女を密虫役にしたほうが良かったので
はないかとも思ってしまうが。小泉今日子は不老不死の存在にしては老けすぎだ
が、ちょっと色っぽいシーンがあったので、まあいいだろう。(何が?)
さて、お話のほうだが、B級伝奇スペクタクルの王道を行っていて、ツッコミどころ
は満載だが、楽しめる出来になっていると思う。こんな娯楽作品に作家性とか、
登場人物の心理描写などを求めても無意味ということをよくわかって作っている。
夏川結衣が鬼に変貌するところの特殊メイク(原口智生特製)に関しては賛否両
論あると思うが、所詮漫画的なファンタジー世界なので、これくらいおどろおどろし
くやってよいのではないか。なぜ道尊があんなにも帝を恨んでいるのか、安部晴
明に対抗意識を燃やすのかも説明はされていないけど、真田広之のノリノリの演
技を観ているうちにそんなことはどうでもよくなってきた。
夏川結衣演じる姫のあまりにも哀しい恋心とか、青音と萩原聖人演じる早良親
王との時空を超えた愛とか、晴明が博雅に寄せる友情というよりは明らかに愛
情、などもちゃんと描かれている。中でも、一度は倒れた博雅を抱きかかえて、
あのクールな晴明が涙を流して取り乱す姿には、思わずこちらまでほろりとして
しまった。
伝奇スペクタクルものにしては、最後の晴明vs道尊の対決が地味じゃないかと
いう説もあるようだ。が、いくら晴明が一種の超能力者とはいっても、天変地異を
起こすことが出来るとか、指先から光線を放つとか派手なことが出来るわけでは
ない。ひらひらと優雅に舞って道尊の攻撃をかわし、呪文をサッと唱えては飛び
回る晴明の姿を観ているだけでも満足できるし、ちゃんと盛り上がりを見せてドキ
ドキさせてくれるので十分なのではないか。シリーズ化されるということなので、
今度は野村萬斎のどんな妖しい魅力を見せてくれるのか、今から楽しみである。
監督/脚本/製作:ブライアン・ヘルゲランド
出演:ヒース・レジャー、ルーファス・シーウェル、シャニン・ソサモン、ポール・ベタニー
ローラ・フレイザー、マーク・アディ
14世紀。貧しい屋根葺き職人の息子ウィリアムは、彼が仕えていたエクター卿
になりすまし、トーナメントで見事優勝を決める。勝利の味を知った彼は、一生平
民の人生はご免だ、騎士になって自分の運命を変えると誓う。貴族名を名乗って
大会に出場したウィリアムは、連勝を重ねる一方で、試合を見守る美しい貴婦人
ジョスリンのハートを奪う。ウィリアムは勝利を重ね、故郷ロンドンでの世界選手
権に臨む。決勝戦を前に、生き別れた父と12年ぶりの再会を果たすが、その姿
をライバルのアダマー伯爵に見られ、貴族ではないことがばれてしまう…。
決してつまらない作品ではないのであまり悪くは言いたくないのだが…。売り物
の一つである馬上槍試合に迫力がなく、しかも最初のうちは同じような鎧を着て
いるせいで、敵味方もわからないのはなんとかなら ないものか。「グラディエータ
ー」のように燃えないのだ。そもそも馬上槍試合そのものが、一刺しで決まって
しまうものなので、バリエーションのつけようがないというものなのだから仕方な
いのだが、いかんせんアクションが単調である。
この映画の売りの一つとしては、中世が舞台になっているのに、ロックを使った
り、現代風の味付けをしているということだそうだが、冒頭のクイーンの「We
Will
Rock You」にあわせて手拍子、ウェーブを作ったりとさながらサッカーの応援の
ように試合を観戦しているのは一瞬面白いと思ったのだ。が、本当に現代風な
のってその部分だけで、あとは普通のスポ根青春映画だった。しかも、本筋の
ストーリーはオーソドックス過ぎて面白みに欠ける。どうせだったら、もっと無茶
くちゃやってくれなくちゃ。
現代風にしようとした要素としては、お姫様の設定というのがあって、舞台が
フランスだというのに、エキゾチックで個性的な顔立ちをしており、また、ファッ
ションが非常にアヴァンギャルドなのである。だけど、主人公にしても、お姫様
にしても、どうしてお互い愛し合うようになったのかがよくわからなかった。その
上、このお姫様ったら、非常にわがままでキツイ性格なのである。あの「私の
ために○○して」はないでしょ。傲慢バカ女。逝ってよし。女子マネージャー的
なキャラクター、鍛冶屋の娘ローラ・フレイザー(『タイタス』で両手首と舌を切り
落とされた可哀想な美少女)のほ うが100倍可愛いのにヒース・レジャーの目
は節穴だ。しかも、貴族でないことがばれて、処刑されそうになったウィリアム
を助けに来ないなんて。
脇のキャラクターはそれぞれ味わいがあって、特に、試合の前のMC役として、
大袈裟な前口上を述べるチョーサーは最高に面白くて素敵だ。いかにもボンク
ラっぽい二人の仲間も楽しい。彼らのやり取りだけは本当に楽しくて、この部分
にもっとフォーカスを当てれば面白くなったのではないかと思う。悪役のアダマ
ー伯爵を演じるルーファス・シウーウェルの、暗い大きな瞳も非常に印象的で、
ヒース・レジャーなんて正直言ってたいしたことのない役者に対する悪役にする
にはもったいなさ過ぎる。父親との再会シーンにも非常にほろりとさせられるな
ど、本筋に付随する部分は良く出来ている映画なんだが。
「ROCK YOU」なんて邦題がついているのだが、音楽のセンスは良くない。良
かったのはシン・リジィの「The Boys Are Back in Town」とAC/DCだけで、ク
イーンの使い方なんて超ダサいの一言で泣きそうになった。しかも、最後の「
We Are The Champions」はクイーンの演奏によるものではないし。後半はか
なり面白くなるのだが、1. お姫様 2.アクションの見せ方 3.音楽の使い
方でマイナス点と なったのだった。映画そのものではないのだが、邦題もダ
メ。(というかSPEの最近の邦題のつけ方は最悪で耐え難い) だって、原題
の「A Night's Tale」ってまんまチョーサーの小説の題名なのにね。