2003年に観た映画

暫定的な本年度、今のところベスト10。

猟奇的な彼女
インファナル・アフェア
リベリオン
ラスト・サムライ
戦場のピアニスト
ヘヴン
ヴァイブレータ
ボウリング・フォー・コロンバイン
トーク・トゥ・ハー
10 ロード・オブ・ザ・リング二つの塔
11 シティ・オブ・ゴッド
12 過去のない男
13 アバウト・シュミット
14 ナイン・ソウルズ
番外その1 ドリームキャッチャー
番外その2 ファム・ファタル
ワースト
ぼくんち
昭和歌謡大全集
めぐりあう時間たち

12月

ルールズ・オブ・アトラクション(12月7日、シネクイント)☆☆☆1/2

フォーン・ブース(12月8日、新宿アカデミー)☆☆☆1/2

ポロック 二人だけのアトリエ(12月13日、シャンテ・シネ)☆☆☆1/2

ヴァイブレータ (12月20日、シアターイメージフォーラム)☆☆☆☆1/2

昭和歌謡大全集(12月21日、シネ・アミューズ)☆☆1/2

ラスト・サムライ(12月30日、川崎チネチッタ)☆☆☆☆

11月

さらば龍門客桟 (11月1日、東京国際映画祭 シアターコクーン)☆☆☆☆

キル・ビル Vol.1 (11月2日、川崎チネチッタ)☆☆☆1/2

トゲ (11月2日、東京国際映画祭 渋谷ジョイシネマ)☆☆☆1/2

嫉妬は我が力 (11月3日、東京国際映画祭 シアターコクーン)☆☆☆1/2

春夏秋冬…そして春 (11月22日、東京FILMeX 有楽町朝日ホール)☆☆☆☆☆

PTU  (11月22日、東京FILMeX 有楽町朝日ホール)☆☆☆

地球を守れ! (11月22日、東京FILMeX 有楽町朝日ホール)☆☆☆1/2

鏡の中へ (11月22日、東京FILMeX 有楽町朝日ホール)☆☆☆

オール・トゥモローズ・パーティズ (11月23日、東京FILMeX 有楽町朝日ホール)☆☆☆

10月

10億分の1の男 (10月2日、シネセゾン渋谷)☆☆☆☆

アダプテーション (10月2日、シネマライズ)☆☆☆1/2

偶然にも最悪な少年 (10月3日、丸の内東映)☆☆1/2

ロボコン (10月5日、シャンテシネ)☆☆☆☆

座頭市 (10月7日、丸の内プラゼール)☆☆☆1/2

蛇イチゴ (10月8日、シネ・アミューズ)☆☆☆☆

パンチドランク・ラブ (10月8日、恵比寿ガーデンシネマ)☆☆☆☆

デブラ・ウィンガ−をさがして(10月9日、新宿武蔵野館)☆☆☆☆

アララトの聖母 (10月10日、シャンテ・シネ)☆☆☆☆

S.W.A.T (10月10日 丸の内ピカデリー2)☆☆1/2

密会 (10月11日 ユーロスペース 中平康レトロスペクティヴ)☆☆☆☆

リード・マイ・リップス (10月11日 シネマライズ)☆☆☆1/2

フリーダ (10月16日、Bunkamuraル・シネマ)☆☆☆1/2

インファナル・アフェア(10月17日、川崎チネチッタ)☆☆☆☆1/2

恋は邪魔者 (10月26日、新宿武蔵野館)☆☆☆

9月

HERO-英雄- (9月7日、川崎チネチッタ)☆☆☆☆

ファム・ファタル (9月8日、川崎チネチッタ)☆☆☆

ウェルカム・トゥ・コリンウッド (9月8日、川崎チネチッタ)☆☆☆1/2

人情紙風船 (9月15日、新文芸坐)☆☆☆☆

パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち (9月16日、川崎チネチッタ)☆☆☆1/2

リベンジャーズ・トラジディ (9月23日、ユーロスペース)☆☆☆1/2

トーク・トゥ・ハー(9月24日、渋谷シネパレス)☆☆☆☆

インファナル・アフェア (9月25日、東京国際フォーラム・ジャパンプレミア)☆☆☆☆1/2

名もなきアフリカの地で (9月27日、シネスイッチ銀座)☆☆☆1/2

8月

マイ・ビッグ・ファット・ウェディング (8月2日、川崎チネチッタ)☆☆☆1/2

ナイン・ソウルズ (8月3日、テアトル新宿)☆☆☆☆

10話(8月3日、ユーロスペース)☆☆☆☆

エデンより彼方へ (8月9日、日比谷スカラ座2)☆☆☆☆

婿殿 (8月10日、インド映画フェスティバル)

アショカ (8月10日、インド映画フェスティバル)

DDLJ 花嫁は僕の手に (8月10日、インド映画フェスティバル)

永遠のマリア・カラス (8月17日、みゆき座)☆☆☆☆

夢精期 (8月30日、シネマコリア)☆☆☆1/2

ベアーズ・キス (8月31日、シネセゾン渋谷)☆☆☆1/2

中毒 (8月31日、シネマコリア)☆☆☆1/2

7月

めぐりあう時間たち (7月6日、渋谷シネパレス)☆☆☆1/2

極道恐怖大劇場 牛頭 (7月12日、ぴあフィルムフェスティバル)☆☆☆☆

ドッペルゲンガー  (7月12日、ぴあフィルムフェスティバル)☆☆☆☆

セクレタリー (7月27日、シネマスクエアとうきゅう) ☆☆☆☆

6月

現代やくざ 人斬り与太 (6月8日、三百人劇場 追悼特集「映画監督・深作欣二」)☆☆☆☆

仁義の墓場 (6月9日、三百人劇場 追悼特集「映画監督・深作欣二」)☆☆☆☆

県警対組織暴力 (6月9日、三百人劇場 追悼特集「映画監督・深作欣二」)☆☆☆1/2

X−メン2 (川崎チネチッタ)☆☆☆1/2
マトリックス・リローデッド (6月15日、ヴァージンシネマズ六本木ヒルズ)☆☆☆1/2

アバウト・シュミット (6月22日、新宿武蔵野館)☆☆☆☆

ぼくんち (6月22日、シネスイッチ銀座)☆☆

BORDER LINE (6月28日、ユーロスペース)☆☆☆1/2

二重スパイ (6月28日、渋谷東映)☆☆☆1/2

大脱走 (6月29日、渋谷東急2)☆☆☆☆

5月

星に願いを。 (5月1日、川崎チネチッタ)☆☆☆1/2

シカゴ (5月1日、川崎チネチッタ)☆☆☆☆

ベッカムに恋して (5月5日、シネスイッチ銀座)☆☆☆☆

ガン&トークス (5月10日、新宿武蔵野館)☆☆☆1/2

アイ・スパイ (5月10日、新宿武蔵野館)☆☆☆

少女の髪どめ。 (5月 シネスイッチ銀座)☆☆☆☆

黒薔薇の館 (5月21日、三百人劇場 追悼特集「映画監督・深作欣二」)☆☆☆☆

黒水仙 (5月 渋谷シネマソサエティ)☆☆☆1/2

8Mile (5月 川崎チネチッタ)☆☆☆☆

4月

戦場のピアニスト (ロマン・ポランスキー) (4月1日、川崎チネチッタ)☆☆☆☆1/2

エイドリアン・ブロディの演技は、完璧としかいいようがない。無力ゆえの悲しみと、その代わりに神に与えられたピアノの才能、その才能を愛した多くの死者の助けで、どうにか生き延びた男の葛藤をやせ衰えた身体とその大きな瞳で体現している。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン (スティーヴン・スピルバーグ) (4月2日、渋東シネタワー)☆☆☆1/2

スピルバーグの作品とは思えない、驚くほど軽やかでキャッチィな映画。オープニングもお洒落。割と能天気な題材なのにダークな色調のカミングスキーのカメラで遊んでいるのだが。クリストファー・ウォーケンとトム・ハンクスという二人の父親に愛されるディカプリオは本当に高校生に見えるとともに、いとも簡単に人を騙せてしまう天才詐欺師にもちゃんと見えるところが立派。息子に悲しいほど愛されるうらぶれた父親を演ずるウォーケンの素晴らしさといったら!ナタリー・バイとのダンスシーンが素敵で、しっかり泣かせてくれる。出番の少なさが勿体無い。クリスマスとか、パイロットの制服とか、クリスマスのたびに電話してお互いに孤独を癒すという設定や小道具の使い方も見事だし、さすがに手馴れたものだけど、見終わってみるとウォーケンのダンスばかりが記憶に残る。

抱擁 (ニール・ラビュート) (4月4日、シネスイッチ銀座) ☆☆☆☆

100年前と現在の恋の重ね合わせ方が実に巧い。19世紀の恋人たちが、手紙で身を焦がす想いを雄弁に綴り禁断の恋に苦しんでいるのに、現代の二人は恋の邪魔になるものなど何もないのに一歩を踏み出すのに躊躇するのが面白い。そしてためらう二人の言動のリアリティも大したもの。文学史上のミステリーと恋愛を交錯させ、その上発見を横取りしようとする人が出てきたりと、単なる文芸映画ではなく娯楽性も十分あるのは、さすが才人ニール・ラビュート。アーロン・エックハートも相変わらず演技が達者で、オクテで優柔不断だけど魅力的な研究者に実体を持たせてくれる。

クローサー (コーリー・ユン)  (4月7日、シネマスクエアとうきゅう) ☆☆☆1/2

『チャリエン香港版』という予想に反して、徹底的にハードな展開に驚愕。こんな可憐な姉妹相手にここまで本気で戦うのか、こいつらは。中でも、終盤の倉田保昭vsヴィッキー・チャオの戦いは血みどろで容赦がなく、あまりにも凄すぎる。白い衣装に血糊がべったりのバイオレンス描写もなかなかのもの。ハリウッドでは絶対こんなことできまい。スー・チーもカレン・モクも見せ場がこれでもかとあって、この際緩急の差が無さ過ぎとか設定のツッコミどころあり過ぎとかスーチーのアクションは他の二人より落ちるとかそういうことには目をつぶろう。ウェットな部分とハードな部分は適度なバランスが保たれているし、もちろんお色気も。娯楽アクション映画として十分合格点はあげられる。

過去のない男 (アキ・カウリスマキ) (4月10日、恵比寿ガーデンシネマ) ☆☆☆☆

いつもの飄々としたカウリスマキ節炸裂の作品なのだが、「コンテナ暮らしの貧しい家族」「過去も名前も失ったほとんど浮浪者同然の男」「いまだに恋の経験が無い中年女」といった、世間的に見れば不幸な人々がこの上なく幸せな日々を送る様子を温かく描いていて、失業中の身にはしみる。地味な救世軍の職員カティ・オウネンが寝る前にロックを聴いていたり、救世軍の演奏者たちがご機嫌なロックンロールを演奏していたりと音楽の使い方も素晴らしい。細かいギャグも冴えわたりつつ、素敵な人情話を見た思いがする。

キープ・クール (チャン・イーモウ) (4月11日、新宿武蔵野館) ☆☆☆1/2

チャン・イーモウにしては珍しいロマンティックコメディかな、と思わせて驚愕の展開になだれ込んでいく、テンポのよさが気持ちよい。キレた男をなだめるはずが、と立場がスルッと逆転してしまったりする可笑しさ。クローズアップを多用しすぎの画面はかなり鬱陶しいが、メリハリや画面転換の妙、ライブ感覚はあって楽しい作品になっている。ヒロイン美しいけど前半で退場になるのはちょっと勿体無い。

リベリオン (カート・ウィマー) (4月13日、渋谷東急3)☆☆☆☆

この映画は癖になる!ついに2回目に行ってしまった!2回目で、クリスチャン・ベールがいかに成熟した俳優かと言うことを改めて認識。無表情の中に感情を押し込め、感情を努めて押さえ込んでいる中にも思わずポロリとこぼれる細やかな感情の表出が実に見事。ガン=カタ アクションの真髄もリピートするとなんとなくわかってくる。DVD発売が待ちきれませぬ。

裸足の1500マイル (フィリップ・ノイス) (4月14日、シネスイッチ銀座)☆☆☆☆

オーストラリアのアボリジニ強制隔離政策という歴史の暗部にスポットを当てた作品だが、その蛮行を非難することよりも、母親に会いたい一心でとてつもない旅に出た女の子たちの知恵と勇気を描くことを主眼にしているのが成功している。素人という少女たちの瞳の輝き(特にヒロインのモリーは凄い)や表情が素晴らしいし、凄腕の追跡人や白人たちをかわすために頭脳を駆使していくところは気持ちいい。14歳という年齢ですでにハードボイルドのヒロインのようだ。また、オーストラリアの雄大な大地、どんよりとした空を翔ける鷲や砂漠の中の足跡、まるで棒切れのようになって立ちすくむ少女たちの姿を詩的に捉えたクリストファー・ドイルのキャメラも格別。

許されざる者 (三池崇史) (4月17日、シアターイメージフォーラム)☆☆☆☆

『新・仁義の墓場』ほどの圧倒的な狂気は無いが、スタイリッシュでしかも叙情的という三池の美点が現れた佳作。惜しむらくはビデオ撮影で夜のシーンがぼやけていること。日本映画としては、俳優陣の充実振りが半端じゃない。美しすぎる加藤雅也を始め、端役でも強烈な個性の遠藤憲一、不気味なスナイパー平田満、長門弘之と津川雅彦の兄弟共演、『アカルイミライ』でのキャラを引きずった藤竜也、最近三池組の常連美木良介、二役で登場し相変わらず不敵で狂っている石橋蓮司、軽やかさが素晴らしい北村一輝とまあ列挙していくだけでももうすごい。そして常に組織にたてつき、どんな犠牲があっても己の美学を全うしていく男たちの生き様は美しい。

エニグマ (マイケル・アップテッド) (4月18日、試写) ☆☆☆

クレヨンしんちゃん/嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード (水島努) (4月19日、川崎チネチッタ) ☆☆☆1/2

2作が奇跡のような大傑作だっただけに、今回の水島監督による"子供にウケるギャグ路線”は賛否が分かれるところ。たしかにぶりぶりざえもんとか、劇画タッチとかお子様に受けていて、正しいクレしん映画になっていた。自転車チェイスシーンの疾走感もさすがに手馴れたもの。しんのすけの自転車に乗れたシーンは正しい子供の成長話になっていて胸が熱くなったし。大神源太(今回一番美味しいキャラ)とかキルゴア大佐のようなマニアックなギャグで大きなお友達にもしっかり目配せ。ただし、ギャグはおかしくても全体のお話の骨格が弱くラスボスの意図もよくわからなかったのは説明不足で残念。観ている間は楽しいけど、作品としての完成度は次回作に期待するべし。

シカゴ (ロブ・マーシャル) (4月20日、川崎チネチッタ) ☆☆☆☆

は控えめではあるが、悪趣味一歩手前の華やかさで、殺人が最大のショーとなるショービジネスの虚飾をギラギラと描いていて、この上なく楽しめる。キャサリン姐の気持ちいいほどの毒婦ぶり、図太さ、いざとなったらなりふりかまわぬ潔さ、そしてド迫力の開脚と、完璧なまでのスターのオーラが眩しい。迫力では完全に負けているけど、レニー・ゼルウィガーの頭が足りなくて妄想に走りがちだけど腹黒くしたたかな部分、リチャード・ギアの薄っぺらさや哀しいほど善良なジョン・c・ライリーと役者陣は充実。歌って踊るところと芝居の切り替えも巧いし、心に残る映画ではないけど一瞬の至福を味わえるエンターテインメントとしては超一級品。観ている間はしびれっぱなし。

デアデビル (4月20日、川崎チネチッタ) ☆☆☆

ベン・アフレックは顔がでかい上に短足、有能な弁護士には見えない。ジェニファー・ガーナーはニューハーフ顔。主人公の苦悩を見せようと頑張ってはいるものの、脚本で心境の移り変わりなどが描けてなくて一歩及ばず。ただし、あほな悪役を楽しそうにノリノリで演じているコリン・ファレルを見ているだけで元を取った気がしちゃうし、ジョー・パントリアーノの記者もいいね。盲目のデアデビルに見える感覚の世界を表現したCGはなかなか良い。

魔界転生 (4月21日、試写)☆☆☆1/2

エロティックな部分、妖しい部分は麻生久美子が一人で担っていて、基本的にはロールプレイングゲームのような単純な娯楽活劇。チャンバラの部分はカット割が多くて物足りないけど、魔界衆が消えるシーンの映像的な処理はとてもユニーク(少し『ブレイド』に似ているけど)だし徳川家康の転生シーンはさすがに目を瞠った。草原を渡る妖気や城に十字型の雷が落ちるところもカッコいい。窪塚洋介は生前の姿は良かったのだけど転生してからは突っ立っているだけで存在感なし。佐藤浩市はさすがに魅力的だけど脚本の描きこみ不足で深みはない。加藤雅也の使い方もあまりにももったいない。

愛に関する短いフィルム (4月23日、Bunkamuraル・シネマ)☆☆☆☆1/2

偶然 (4月23日、Bunkamuraル・シネマ)☆☆☆☆

終わりなし(4月23日、Bunkamuraル・シネマ)☆☆☆1/2

わたしのグランパ (4月25日、渋谷東映) ☆☆☆1/2

ギャングスター・ナンバー1 (4月25日、試写)☆☆☆1/2

WATARIDORI (4月26日、川崎チネチッタ) ☆☆☆1/2

鳥が飛んでいく姿を下からではなく、横や上から見るのが初めてだったので、とーっても新鮮。傷ついた鳥が寄ってたかって蟹に食べられちゃうシーンは「残酷大陸」って感じだったが実は演出だとさ(ちょっとだけ白ける)。ほかにも登場するさりげない残酷描写は素敵。これだけの映像を作るのにどれくらいカメラを廻したのかな、とか卵から育てたらしいけどどうやって育てたのかな、とかいろんなことを想像するのも楽しい。ディスカバリー・チャンネルのドキュメンタリーとそう変わらない気がしなくもないけど、お勉強にもなるし貴重な映像なのは間違いない。

THE EYE  (4月26日、川崎チネチッタ) ☆☆☆☆

単なる幽霊ホラーと侮ることなかれ。たしかに日本固有のものと思われていた“足のない幽霊”が出現したのはビックリしたけど。幼い時に失明して“目が見えることとはどんなことか知らなかった”人間が目が見えるようになってきたところの映像表現の巧みさや、前作『レイン』でも印象的だった回想シーンのリリカルな処理など、センスは非凡なものがある。難病の少女のエピソードも感動的だし“目が見えること”すなわち幸せなのかどうか、とか世界の美しさについてなど、いろいろと考えさせられる映画でもある。

ドリームキャッチャー  (4月27日、川崎チネチッタ) ☆☆☆1/2

スティーヴン・キングの全4巻の原作を2時間に収めなくてはならなかったため、詰め込みすぎの印象は否めず、すべてが駆け足で進んでしまっていて情感もへったくれもない。しかーし!この出来損ない感がとっても面白いのである。最初の化けモンが出演するところのトイレの描写を延々と引っ張りまくったり、ウンコ・オナラ・ゲップ・チンコの下半身尾篭ネタの応酬とあきれ返るほどのあほらしさ。ブチキレたモーガン・フリーマン(もっともっとやって欲しかったが)と善良なトム・サイズモア。そこへ、4人の男たちの幼年時代の友情物語が絡んで、妙ちきりんだけど心温まるお話になっていると思う。「アーイ・ダディッツ!」は最高。

赤い月の夜 (4月28日、有楽町朝日ホール イタリア映画祭)☆☆☆1/2

サイドウォーク・オブ・ニューヨーク (4月30日、シアターイメージフォーラム)☆☆☆1/2

離婚率の高さ以外はNYのシングルも東京のシングルも大差はない?エドワード・バーンズの人間観察眼はさすがに大したもので、特に五番街で開業していてへザー・グラハムが奥さんで若い愛人もいるのにやたらとちんこのサイズを気にするスタンリー・トゥーチの金持ち歯医者とか、バーンズとロザリオ・ドーソンの微妙なすれ違いとか、とーってもリアルで、シニカルなところはウディ・アレンっぽい。がウディと違うのは、バーンズが二枚目であること。その中で、ボンクラのデイヴィッド・クラムホルツととっても愛らしいブリタニー・マーフィのカップルの恋はとびきりキュートで素敵。

きみの帰る場所/アントワン・フィッシャー (4月30日、日比谷スカラ座) ☆☆☆☆

きわめてオーソドックスな作りながら、決して押し付けがましくなることなく、素直に感動の涙を流せるとても好ましい作品に仕上がっている。アントワンを励ます精神科医もまた家庭の問題を抱えていたり、普通は語るのを避けて通ってしまう性的な問題にも正面からぶつかっているし、アントワンのあまりにも悲しい少年時代の回想シーンの処理も非常にうまい。悲惨な部分もあるのに、デレク・ルークの好演もあって暗い印象は微塵も受けず、観る者に希望を与えてくれる映画だ。デンゼルの次回作が楽しみ。

3月

ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 (ピーター・ジャクソン) (3月1日、渋谷パンテオン)☆☆☆☆☆

何度観ても凄いものは凄い!今回は特にゴクリの素晴らしすぎる演技に舌を巻く。二つの人格の演じわけもさることながら、生身の俳優の形を使っての表情の変化を観ているとこの憐れなクリーチャーに思いっきり感情移入してしまう。あまりにもセクシーなアラゴルンの馬の動きとか、実はちょっとリチャード・ギアに似ているファラミア、きれいだけどケツあごのエオウィンと、小ネタ満載なのもさすがオタク監督ピーター・ジャクソン。つかみの部分であるガンダルフ落下シーン(しかし、このじいさんが一番強いよな)でのボロミアの姿に涙。

Kissing ジェシカ (チャールズ・ハーマン=ワームフェルド) (3月2日、テアトルタイムズスクエア) ☆☆☆☆
28歳で恋人を見つけられずちょっと焦っているマジメなキャリア女性が、恋人募集広告で知り合ったのは魅力的な女性だった!というわけで、等身大の女性の恋と人生が軽快にユーモラスに語られる素敵な映画。リルケの詩の引用、ダメダメなデート相手たち、そしてユダヤ家庭の家族の絆、女同とも友情とも取れる関係といった要素を巧みに使い、オクテなジェシカが自分の殻を破っていく様子が気持ちよく描かれている。恋に人生に悩む女の子には必見!主演の二人の女優が書いたという脚本がテンポがよく、キラキラした台詞がたくさんちりばめられている。

モーヴァン (リン・ラムジー) (3月9日、シネマライズ)☆☆☆

自殺した恋人の書いた小説を自分の名前で発表し、死体を切り刻んで捨てちゃうモーヴァンという女の子の行動は、モラルには反しているのに、見ているうちにそれが当然取るべき行動であったことが理解できてしまうという恐るべき作品。自分に正直に生きていくと言うことはどういうことなのか、その問いを観客に突きつけているという意味では、ナイフのような鋭さを持っている。ただ、あまりにも心理描写を排して音楽に心情を語ることを委ねるという試みは、100%成功しているとは言いがたい。「ボクと空と麦畑」でも観られた、リン・ラムジーの“言葉ではなく映像を通して語る”という優れた才能は確かに感じられるので、音楽と脚本の部分は今後頑張りましょう。

ボウリング・フォー・コロンバイン (マイケル・ムーア) (3月12日、恵比寿ガーデンシネマ)☆☆☆☆1/2

単にアメリカにおける銃の問題を扱った作品かと思いきや、アメリカ建国までの人種差別と暴力に満ちた歴史、テレビで不安と恐怖を垂れ流されることによって、間に流されるCMの効果を高めるという手法を取るメディア、それらがアメリカの好戦的な国民性を作り上げているのだという種明かしが実に鮮やか。もっともクレバーで理性的な発言を行っているのがマリリン・マンソンだというのも、目から鱗が落ちる思い。“社会問題を扱いつつも徹底的にエンターテインメントである”のが勝因か。SAGで脚本賞を取ったことから、これは贋ドキュメンタリーぽいが。

007/ダイ・アナザー・デイ(リー・タマホリ) (3月14日、丸の内ルーブル)☆☆☆1/2

なんとも贅沢なバカ映画。バカ度では、近年の007映画の中でも屈指の作品。遺伝子交換でアジア人(金正男?)が白人に化けたり、必然性もなくキューバやらアイスランドらや出かけてきたり、ボンド14ヶ月間も北朝鮮にとっつかまっていたわりにはたくましくすぐに元の髪型に戻ったりと、ゴージャスで楽しくもあほらしく愛すべき作品になっている。エッチでバカっぽいアバンタイトルだけでクラクラしちゃうもんね。意外と活躍しないハル・ベリーと、せっかくの美味しいキャラ“整形失敗しちゃった”リック・ユンはもっと活躍を見たかった気も。

小さな中国のお針子 (ダイ・シージエ) (3月17日、川崎チネチッタ) ☆☆☆1/2

文化大革命時の中国の山奥の農村で、再教育のために送られてきたブルジョワ青年二人と、無学なお針子との恋のお話。山奥に鳴り響くヴァイオリンの調べや書物の言葉たちは美しく、水のモチーフは官能的。バルザックに影響されて奇抜な服を作り始めるお爺さん、村長さんの歯を治療するときのドタバタなど、ユーモラスで茶目っ気あふれる部分は楽しい。ただ、フランス製映画であることもあって、どうしても“西洋文化によって啓蒙してやる”という部分と“綺麗過ぎる”風景や人物ばかりのエキゾチズムが見て取れてしまうところがちょっと残念。青年二人の描写は丁寧なのに、お針子は表層的でありきたりな描き方なのも気になる

青の炎 (蜷川幸雄) (3月18日、川崎チネチッタ)☆☆☆1/2

ロードレーサーで疾走する二宮和也を捉える息苦しいカメラワーク。よく動くカメラ、ロングショットをはさむ撮影が実に巧みな映画だ。そして、アイドル3人の意外なまでの好演(鈴木杏はあたりまえとしても)。甘い点も多いが、アイドル映画として敬遠しておくには惜しい、観る者に心の痛みを感じさせる映画。少年が一人で世界と戦っているつもりになっているところの追い詰められ方、終盤の美術部室でのシーンや、映画そのものの幕切れ方も見事。ただし、現代性というものは見事に欠落していて、いつの時代の話だ、という気もする。

同い年であること、課外すること (キム・ギョンヒョン)(3月22日、ソウルパラゴン)

すみません、旅の疲れと字幕なし韓国語映画だったということもあってラスト30分しか観ていません。

クラシック (クァク・チェヨン) (3月23日、ソウルスカラ座)☆☆☆☆

「猟奇的な彼女」のクァク・チェヨン監督の新作。現代と30年前、二つの時代の恋人たちを描いているのだが、端正でノスタルジックで美しい物語。ぜひ日本語字幕つきで早く観たいっ!

ヘヴン (トム・テイクヴァ) (3月24日、シャンテシネ)☆☆☆☆1/2

なんという美しい映画だろう。純粋な、見返りも何も求めない愛によって罪深い女性が浄化され、天に上っていく姿が崇高に映る。光と影のコントラストが絶妙な映像、研ぎ澄まされたダイアローグ。ケイト・ブランシェットとジョヴァンニ・リビシという全く違った二人がまるで双子のように同じ運命をたどって行く道程を説得力をもって見せてくれる、ふたりの静かで力強い演技。自分の運命をどのように選び取っていくのか、深く考えさせられるシンプルだが哲学的な作品。

戦場のピアニスト (ロマン・ポランスキー) (3月25日、川崎チネチッタ)☆☆☆☆1/2

戦争において、武器を持って戦わなくても、ただ逃げ回って生き抜くということだけでも一つの戦いだということを思い知らされた作品。いつも窓から傍観者のように戦いを見つめ続け、何も出来ないわが身をもどかしく思い息を潜めるエイドリアン・ブロディの、静かな哀しみに満ちた演技が素晴らしすぎる。平穏な暮らしをしていたユダヤ人家族が、少しずつ人間としての尊厳を奪われていく様子、唐突で理不尽な残虐行為も死も淡々とドキュメンタリーのように撮影されることで、よりその恐ろしさが際立ってくる。そして月光の中でのショパンの少しずつ激しくなっていく美しさ…。ホロコーストで死んだユダヤ人、戦後ソ連で死んだドイツ将校、彼を助けるために死んでいったすべての名も無き死者たちへの鎮魂歌のような映画。

アカルイミライ (黒沢清) (3月27日、シネ・アミューズ)☆☆☆1/2

未来に希望をもてず、ただただ淡々と生きているフリーターの生態のリアルな描写にまず目を瞠らされる。そしてちっとも美しくない東京の寒寒とした風景が、陰影を強調した粗いデジタルビデオの映像で綴られるところの倒錯した美。浅野忠信の刑務所入りまでの畳み掛けるような暴力的で社会的な逸脱感が満載の描写、浅野とオダギリの同性愛めいた不思議な関係のあたりまではすげ〜と思って見ていた。でも、藤竜也とオダギリの抱き合うところはちょっと違和感が。いずれにしても、今回は黒沢清にしてはとてもわかりやすい作品に仕上がっていながら非常にかっこええわけだが、もう少しクールで突き放したものをどうしてもこの作家に期待してしまうのだ。

24アワーパーティピープル  (マイケル・ウィンターボトム) (3月27日、シネセゾン渋谷)☆☆☆1/2

ニューオーダーの『ブルーマンデー』をリアルタイムで聴いて熱狂した世代としては、懐かしさいっぱい(ただしニューオーダーそのものはほとんど登場せず、ジョイ・ディヴィジョン中心)。知っている固有名詞がたくさん出てくるところは興奮するし、一つのムーヴメントが誕生する瞬間の熱狂は肌で感じられる作品となっている。でも、果たしてこのマンチェスターサウンドを知らない人が観ても、楽しめるかどうかは疑問。トニー・ウィルソンという稀代のトリックスターが、時折カメラ目線で、彼自身の目というフィルターとバイアスのかかったムーヴメントを語るという手法はとても楽しい。一つの栄枯盛衰物語でありながら、感傷的にもならず、ちょっと斜に構えた感じも照れくささを隠すようでかわいい。世の中には勝者と敗者がいるけど、勝てなくても記憶に残った者の勝ちであり、そしてこの映画の中には愛すべき敗者がたくさんいる。

実録・安藤昇侠道伝 烈火 (三池崇史) (3月28日、新文芸坐) ☆☆☆☆

『DOA』のハチャメチャぶりと、『荒ぶる魂たち』のナルシスティックなロマンティシズムが(脚本は『荒ぶる…』の武知鎮典)合体して、これまたとんでもない三池映画になった。白髪鬼のような妖怪内田裕也と、“大霊界”丹波哲郎のキャスティングが見事に効いている。そして竹内力(RIKIブランド着用)X遠藤憲一(相変わらずの悪乗りぶりが最高)の迷コンビぶりも最高。大真面目なやくざ映画かと思ったら、とんでもない目に遭うよ。ノリノリで大胆で自己陶酔的でリリカルでバカ。この面白さは観てみないとわからない!

新・仁義の墓場  (三池崇史) (3月28日、新文芸坐) ☆☆☆☆

烈火』とは打って変わって、こっちの三池崇史は相当マジ。いきなり本人が『荒ぶる魂たち』に続いて鉄砲玉役で登場して、華麗なガン捌きまで見せてくれちゃうんだから。岸谷五朗、パンチパーマに細眉、剃りこみと気合入っていて、シャブ中のあげくパンツ一丁で立てこもっている演技とか、腐った牛乳を飲むところとか、メソッド演技全開で楽しませてくれる。こんな怖い人が歩いていたら逃げちゃうもん。それにしても、感情移入を一切拒む狂犬のような石松陸夫のキャラクター。恩のある親分にも、ボロボロになっていたときに助けてくれた兄弟分にも銃を向けてしまう男。「俺に一体何をしてくれたんだ!」と泣き叫び過剰なまでに愛を求めるその姿。極悪人の中の一分のきらめきを見る思いがした。シャブ中で狂ってしまった有森成実を見守る岸谷の笑顔、ラストの8ミリ撮影部分など、三池得意のリリカルな描写も光る。

ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 (ピーター・ジャクソン) (3月29日、丸の内ピカデリー1)☆☆☆☆☆

行って来ました3回目。3手に別れたストーリーの場面推移の巧みさなど、PJの脚本構成能力の高さに今回は舌を巻く。PJのカメオ出演にも気が付いたし、ゴラムの二つの人格の使い分けなど、細部にいろんな発見があったのだ。

リベリオン (カート・ウィマー) (3月30日、渋谷東急3) ☆☆☆1/2

まさかクリスチャン・ベールとショーン・ビーン、そしてエミリー・ワトソンでバカ近未来アクション映画が観られるとは思わなんだ。北朝鮮をモデルにしたとおぼしき、感情を持つことを禁じられた超未来社会の描写はなかなか危ない美しさがあって、少し『ガタカ』風味なんだが。あのガン=カタという目にも止まらない必殺技、楽しすぎ!いや〜たまげた。設定は穴だらけだが、気持ちよく裏切ってくれる部分もあり、特にラスト30分の展開はもう最高。しかも、エイリー・ワトソンやショーン・ビーンというちゃんと演技の出来る俳優を、演技が達者じゃないと務まらない役にあてているし、良いわ。クリスチャン・ベールは顔がますますトム・クルーズのパチモン化してきたけど、次の『サラマンダー』といい、作品選びのセンスはなかなか。

エルミタージュ幻想  (アレクサンドル・ソクーロフ) (3月30日、ユーロスペース) ☆☆☆

90分ワンカットで絢爛たるエルミタージュ美術館を捉えた撮影はなるほど凄いんだろうけど、フィルム撮影ではなくハイビジョンのキネコなので色彩が浅くてのっぺりとしか見えないところに激しく萎えてしまった。なるほど、これは一つの夢幻であり、エルミタージュの中に漂う亡霊たちを見ながら、自分自身も映画の中でふわふわ浮いているような気分になる。ラスト近くの舞踏会の麗しさには酔えるだけに、35ミリ撮影だったらどんなに良かったか残念に思った(もちろん、デジタルビデオ撮りだからこそ90分ワンカット撮りできたわけだが)せっかくの美術や調度品、華やかなドレスも本来の美しさの何十分の1しか再現できていないもん。

スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする (デヴィッド・クローネンバーグ) (3月31日、川崎チネチッタ)☆☆☆

クローネンバーグの作品にしては恐ろしく地味〜な映画。ただし、『レッド・ドラゴン』に続き病的な役柄の(一体何枚重ね着しているんだ!)レイフ・ファインズの変態演技を見ているだけでも飽きない。ろくに台詞すら発しないんだから。そのあまりにも哀しい存在感は切ない。人間の記憶や深層心理というものがいかに当てにならないかを描き、観る者をも混乱させる演出はさすがに巧みだ。3通りの女性を演じ分け、混乱に拍車をかけてくれるミランダ・リチャードソンも達者。しかし、作品に選ばれない人にとっては退屈な代物となってしまう。

歓楽通り (パトリス・ルコント) (3月31日、川崎チネチッタ)☆☆☆1/2

ルコント得意の“無償の愛”を描いた作品。ヒロインが娼婦であるからして、プチ・ルイの想いが性的な欲求とは無縁であるというのは確かに説得力のある設定。しかし、相手の男のほうも、三角形の一点に(決して自分のものにしようとしていないように見えていても)プチ・ルイがいるということを受け入れられるというのがちょいと理解しにくかった。一方、時折訪れる、マリオンに対して独占欲をちょっと見せてしまい、この三角形を崩そうとする小さな欲望がプチ・ルイの表情の中に表れる瞬間というのは、本当に切なくて美しい。現実にはこんなことは決してありえないだろうし、冒頭とラストの娼婦たちの会話からしても、これは美化された御伽噺であるように思えてしまう。レティシア・キャスタはちょっと歯並びが悪くて、この映画の中では意外と魅力に乏しい。

2月

呪怨 (清水崇) (2月1日、テアトル新宿)☆☆☆

あの怖すぎるビデオ版を観てしまってからだと、階段を這い下りてくる伽椰子とか、俊雄くんの怖さに親しんでしまっていていまさらまったく怖さを感じられないというのが残念。予告編でもいろいろ見せすぎている。まっさらな状態で観れば、凄く怖い映画ではある。が、幽霊の正体を思いっきり見せるというのは新しい恐怖でもあるがやりすぎると完全にコメディになってしまうことを感じてしまった。俊雄くんや伽椰子の登場の仕方はほとんどドリフのギャグの領域。女優たちに綺麗どころを揃えているのは、映画化にあたりメジャー感を感じさせて正しい選択であると思う。

ギャング・オブ・ニューヨーク (マーティン・スコセッシ) (2月2日、渋谷パンテオン)☆☆☆1/2

チネチッタに作られた壮大で美しいオープンセット。圧倒的な存在感、優雅さと野卑を兼ね備えたダニエル・デイ・ルイスの完璧な演技。ニューヨークという場所が、文字通り血を吸い込んで作り上げられた街であるということを物語っている暴力的な展開。確かに風格はあるし、胃に堪えるようなずっしりとした映画ではあるのだが、主人公のキャラクターがあまりにも類型的で、宣伝されている恋愛劇もあまりにもありきたり。父親の敵でありながら、同時に父親のような存在であるビルに対するアムステルダムの複雑な感情も伝わって来ない。スコセッシの映画といえば善と悪に引き裂かれた主人公が狂気の淵に立たされていくところが見所だと思っていたのに、単純な主人公の単純な復讐劇で終わってしまうとは。というわけで、主人公はあくまでもニューヨークの街であり、人間ではないと言う映画なのだ。それと頼むからU2に「アメリカ〜♪」なんて歌わせないでほしい。これには激しく失望。

猟奇的な彼女 (クァク・チェヨン)(2月8日、チネチッタ)☆☆☆☆1/2

1年ぶり3度目のスクリーンでのご対面となったのだが、何度観ても新しい発見があって、大好きな映画の一本となった。一つ一つのエピソードの積み重ねに伏線があり、そして、エピソードごとに、マヌケだけど限りなく優しいキョヌと、乱暴だけど憂いを秘めた“彼女”の虜になっていく。起承転結の構成も実に巧みだし、木のエピソードには誰もが涙することだろう。まんてことのないストーリーの、ラブとコメディの中に人生の真実を見るというのが、映画の魅力としたら、これほどまでに魅力的な作品もないのでは?くるくると表情を変え、長い手脚を伸びやかに振り舞わずチャン・ジヒョンの可愛さといったら、もう!「私、未来人なのかも?」なんて台詞にもふと、この映画の「時を重ねて、変わっていくこと」という切ないテーマが潜んでいる。

レッド・ドラゴン (ブレット・ラトナー)(2月9日、日比谷映画)☆☆☆1/2

手堅くかっちりとまとまった演出。無駄のない脚本。そして、何よりも豪華な俳優陣が素晴らしい。特に、哀しみを内に秘めた殺人鬼を抑えた演技で優雅に(しかし時にはエキセントリックに)演じたレイフ・ファインズと、メソッド演技全開のエミリー・ワトソン(今回はとっても綺麗だった)は素晴らしい。この二人の美しくも哀しいラブストーリーが際立っている割に、レクターとグラハムの関係が濃ゆくなっていかないのが惜しいところか。ハーヴェイ・カイテルとか、フィリップ・シーモア・ホフマンとか、脇役の使い方もあまりにも贅沢。エドワード・ノートンのいつもながら何を考えているのかわからない不気味な芝居も光っている。あと、なんでもオープニングでタクトを振っているのはかのラロ・シフリンだそう。

オー・スジョン! (ホン・サンス)(2月11日、辛・韓国映画祭 テアトル池袋)☆☆☆☆

モノクロ2時間超作品と聞いてどうしようかと思ったが、観てみるとこれが意外と刺激的な映画だった。恋愛関係の初期における行動を、男からの視点、女からの視点と二通り提示してみて、お互いの思い違い、自分に都合よく捏造された記憶を見せてくれている。しかし、どちらのヴァージョンでも、やたらめそめそする男だなあ、こんな奴は願い下げだなと思ってしまったのである。「実は処女なの」と告白されて一瞬動きが止まったり、処女血がべったりついたシーツを男が洗ったり、名前を読み間違えて女がぷんぷん怒ったりといった迷行動はなかなか笑える。一度観たら、もう一度観て確かめてみたくなる作品。

ボーン・アイデンティティー (2月15日、チネチッタ)☆☆☆

プラハとパリのロケからもたらされるヨーロッパ的な香り、自分が何者なのかわからない人間の苦悩などが適度にちりばめられ、楽しめる作品にはなっている。マット・デイモンも思ったよりたくましくて魅力的に映っているし、クリス・クーパーはやっぱりいかしている。しかし、ラドラムのスパイ小説が原作という割には行動パターンは突っ込みどころありすぎだし、いくら殺人マシーンだからといって無駄に人を殺しすぎなのでは?

Mr.ディーズ (2月16日、ニュー東宝シネマ)☆☆☆☆

フランク・キャプラの『オペラ・ハット』のリメイクだというのがわからないくらい、アダム・サンドラー一色に染まった作品。しかし私はは断固として、誰になんと言われようとサンドラーは支持する。よくあるお話にスウィートさと優しさと少しの毒を加え、ニコニコさせて幸せな気持ちにさせてくれるのだ。メディアのあり方も少し皮肉りながら、愚直な人間の魅力を謳いあげていくのにもっとも適任な男。素敵でちょっと変態っぽいジョン・タトゥーロや、相変わらずアブラギッシュなジョン・ギャラガー、そしてやっぱりヘンなウィノナ・ライダーとキャストも魅力的。

トランスポーター (2月16日、東劇)☆☆☆

相変わらずリュック・ベッソンの脚本は30分で書いたって感じで、中学生でも思いつきそうなしょうもないお話。しかしこの映画は、なんといってもジェイソン・ステイサムに尽きる!広い肩幅、分厚い胸板。禿げ上がったおでこすら美しいし、寡黙で静けさを好むというのも渋い。タキシードを着てこれほどまでにセクシーな男性っていないかも。体が大きいくせにとても柔らかくて身のこなしがきれいなのは、さすが元水泳選手。彼を観ているだけでオーケーの映画。スー・チーも魅力的なんだけど、キャーキャー言っているだけと言うのはあまりにも勿体無い。せっかくラブシーンもあるんだから脱げば、なんてね。

ウェルカム・ヘヴン!(2月22日、シネセゾン渋谷)☆☆☆

男っぽいペネロペは、アメリカ映画では決して見られない可愛らしさとビッチさがあってとっても魅力的。モノクロームの天国でアンニュイにヴィクトリア・アブリルが歌う姿(なんとワンカットで捉えている!)は魅惑的(カラーの地上では皺が目立ちすぎるけどね)。なのに、肝心の地上世界では、どうもはじけないし、ポップさが足りないのだ。美女二人が一人の男の魂をめぐって戦うのに、男を軸とした三角関係にはならないし男に魅力がなさ過ぎるのがイカン。(大体、あなたペネロペのような美女が同居しているのに、色っぽい展開には決してならないというのはどうゆうこと?)さらに、画面が全体的に暗くて湿った感じなのもバツ。ガエルくん、相変わらずキュートだし、パーツパーツは良く出来ているのに、設定が複雑すぎることもあいまって、全体的には面白いとは言いがたい出来。

ロベルト・スッコ (セドリック・カーン)(2月22日、シアター・イメージフォーラム)☆☆☆☆

ヴィンセント・ギャロにそっくりだけど、さらに大きくギラギラした青い目が印象的なステファノ・カセッティが凄い迫力。あえて感傷やセンセーショナルな描写を避け、ただただカート=ロベルトの狂気と正気の淵をひた走る軌跡を追い続けた演出も成功している。殺人鬼というよりは、車を奪って持ち主の女性を脅して運転し、ひたすらフランス中を走り回っているというのが面白いところ。理由なき殺人の理由を探ろうとしないのも良いし、彼をヒーロー扱いしないのも正しい。こんなに面白い映画、もっとヒットしてしかるべきなのに。

ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 (2月23日、チネチッタ)☆☆☆☆☆

マーヴェラス!としか言いようがない。前作の数倍グレードアップしていて、あまりの凄絶さとセンス・オブ・ワンダーに言葉も失う。冒頭のガンダルフの勇壮なお姿に心を鷲掴みされ、善と悪に引き裂かれた憐れなゴクリを観ているだけでも涙が出てしまうし、腰を抜かしそうになるほどのとてつもないスペクタクルシーンに打ち震える。峡谷での戦いは『クレヨンしんちゃん、アッパレ戦国大合戦』を髣髴させるが、これほどまでに実写で激しい戦いを見せてしまって、今後これを上回る映画が出てくるとは到底思えない。あるとしても『王の帰還』だけだろう。そしてエオウィン姫の「私が恐れるのは檻だけ」という言葉に、背中を押された気がする。

1月

SWEET SIXTEEN (1月3日、シネ・ラ・セット)☆☆☆☆1/2

ケン・ローチの作品には、登場人物をぎりぎりのところまで追い詰めて、その中でほとばしる感情の噴出を厳しくも限りなく美しく優しく描き切っているという美点がある。今回の主人公、まっすぐな瞳のリアム少年は閉塞感バリバリの、こんなにもヘヴィな状況のもと、必死にひたむきに生きているのに、まだたったの15歳なんだから、もう。周りのオトナたちのほうがよっぽどだめなのだ。自分も襟を正して生きていかなくちゃ、という気持ちになる。

スパイダー・パニック! (1月4日、銀座シネパトス)☆☆☆1/2

往年のC級モンスター・パニック映画にオマージュを捧げた、圧倒的にバカパワーが炸裂する楽しい作品。田舎町ではまったく無意味な熟女のお色気が炸裂するカリ・ウーラーが最高に魅力的。巨大クモの動き方ひとつとっても、すごい工夫の跡が見られるし、悪徳町長、ボンクラで頼りない主人公、美人保安官とブータレ娘(美少女だったはずなのに、スカーレット・ヨハンセンよどこへ行く)、クモおたくのガキとクモ博士、さらには電波系DJとキャラクターの配置も完璧。さりげなくアイスホッケーのジェイソンお面をかぶっている奴とか、細かいグギャグにも気合が入っている。お正月にはこういう頭を使わない映画が最高!

きらめきの季節/美麗時光
 (1月5日、シアター・イメージフォーラム)☆☆☆☆

末期ガンの双子の姉、働かない父、知的障害の兄。あまりにも辛すぎる、ドブ川の中のような生活の中でも、青い水槽の中の熱帯魚のように限りなく美しい瞬間があるということをリリカルに、時にはファンタジックに描いた作品。破滅に向かう二人のチンピラ少年たちの儚い生が文字通りきらめいている。二人でタバコに火をつけるシーンに象徴される、友情を越えた絆の強さには、死さえも超えたものがある。

ストーリーテリング
 (1月9日、シネ・アミューズ)☆☆☆1/2

相変わらずトッド・ソロンズのバッド・テイストぶりが炸裂。絵に描いたようなステロタイプバカの痛すぎる描写には、自分自身も省みらずにはいられない。そう、いくら消費社会に幻を見せ付けられていたとしても、人生とは不平等なものなのだ。ノン・フィクションとフィクションの境目は何なのかというフィールドワーク的な考察の前半は秀逸。実録ドキュメンタリーを笑う人間をも笑っていて、その観客を笑う自分自身にまでメスを入れるという徹底振りは凄い。そしてセルマ・ブレアの洗濯板に干しぶどう、という感じの貧乳にはびっくり。

水の女 (1月12日、シネマライズ)☆☆☆

冒頭、UAの持った「ひかり湯」の傘が風に飛び、くるくる回りながら落ちていくショットははっとさせられる瞬間の美しさ。銭湯の中の裸の人々を縦横に撮った長廻しも面白い。ブルーを基調にした映像は美しく、水のモチーフは活かされていてセンスは感じられる。が、映像と水のモチーフに凝った分、物語性がどっかに置いていかれてしまったような印象。気の触れた老女を演じた小川真由美の存在感は素晴らしいし、震災ですべてを失ってしまった人間像というのもなかなか説得力はある。

デュラス/愛の最終章 (1月12日、シネマライズ)☆☆☆

う〜んつまらん。ジャンヌ・モローの演技はさすがだが、こんなのを代表作にされたらたまらんだろう。

若い男 (1月17日、キネカ大森)☆☆☆1/2

今をときめく韓国映画界の大スター、イ・ジョンジェ初主演の94年作品。ファッションや風俗がかなり古びてしまっているのが少し笑えるけれども、スターを目指すモデル青年のギラギラした部分を、若きジョンジェがセクシーに演じていてファンにはうれしい。後半の急展開や、昔の自分を彼に見出す画廊の女主人など脇のキャラクター配置も良い。


黄泉がえり (1月18日、チネチッタ川崎)☆☆☆☆

草なぎ君主演の東宝全国ロードショー作品でも、そこはかとなく塩田イズムが健在なのはうれしい。なまめかしい中学生カップルや殺伐とした教室、田辺誠一や伊勢谷友介のカメオ出演などには思わずニヤリ。哀川翔アニキの登場シーンも最高。塩田らしさが最大限に発揮されている、いじめ自殺をした中学生のエピソードはもう少し見たかった。一歩間違えるとベタベタになる話を、塩田の作家性や抑えた演出が救っているし、この世を去った人、残された人一人一人の“想い”と息遣いを大切に描いているのが良くわかる。北林谷栄、田中邦衛、忍足亜希子などの豪華な脇役には相当得をした気分になる。

夜を賭けて (1月19日、新宿武蔵野館)☆☆☆☆

とにかく熱い!そして濃いい!山本太郎の盛り上がったしなやかな筋肉と、すがすがしい瞳、そして雄叫びにしびれるね。決してうまい俳優ではないけど、なんともいえない魅力があって、日本映画をこれから支えていくのは彼のような人なんじゃないかと思った。1950年代の大阪の朝鮮人部落、生活は楽ではないけど、毎日を精一杯力いっぱい疾走して、“生きている”って実感がする。キムチを顔に押し付けたり、すぐちゃぶ台をひっくり返したりと激情型の人たちは、観ていて爽快。六平直政、清川虹子、樹木希林、山田純大とみんないい顔をしているよ。そしてまっすぐな瞳の青年や、詩人のような夫婦が理想郷を求めて北へと旅立つ姿は本当に切ない。

アウトライブ−飛天舞− (1月19日、シネマミラノ)☆☆☆1/2
これはもう、香港映画の武侠片の世界そのものが展開していて、実際アクション関係やCG関係は香港映画界から招いている作品なのであった。てなわけで、華麗で派手なアクションは、とりあえずこの手のものが好きな人には必見。中でも度肝を抜かれるようなオープニング、忍者のような十剣組がそぞろ歩いていたり飛び回ったりするところの派手派手しさや見得の切り方は、そうそう観られるレベルのものではなくて、しばし呆然としてしまうほど。ただ、時々回転しまくっているところばかりが目立つのはちょっとマイナスだが。お話のほうは、さすが少女マンガが原作だけあって、ロマンティックな大河ロマンと悲恋をからめてある、悪く言えばありがちなものだ。が、ヒロインやライバル役の悪女など女性陣の絶世の美しさに免じて許せる。

僕のスウィング (1月25日、シネマライズ)☆☆☆☆

「音楽は譜面を見て演奏するものではなく、心と耳で演奏するもんなんだ」。「ガッジョ・ディーロ」でバルカン半島のロマ音楽、「ベンゴ」ではアンダルシア地方のフラメンコを取り上げたトニー・ガトリフの最新作は、マヌーシュ・スウィングというこれまたロマ民族の音楽をフィーチャー。この音楽に魅せられた少年が、同時にスウィングという黒い瞳のロマの少女に惹かれ、甘酸っぱい一夏の初恋を知るお話。この女の子がボーイッシュなのにすんげえ美少女で、アディダスのジャージを脱いで小さな胸のふくらみには、マックスならずともドキドキするはず。彼女が通る時にはギターの練習も上の空でその姿を追い求めちゃう気持ちも良くわかる。二人のシーンはキラキラ輝いていて、緑の森の中での疾走感と初恋のドキドキが伝わってきて素敵。一方で老女の口を通してナチスによるロマへの迫害を語らせたり、白人のマックスが夢中になっているマヌーシュ・スウィングにはスウィングを始めロマの子供たちは関心を持たないといった問題もさりげなく描いているところはさすがにうまい。欲を言えばジャンゴ・ラインハルトの後継者と目されているチャボロ・シュミットの演奏 がもっと聴きたかった。

ウエストサイド物語 (1月26日、ル・テアトル銀座)☆☆☆☆1/2

なんと40年も前の作品だというのに、斬新で奔放な振り付けと、人々は果たして憎しみをやめることが出来るのかというテーマはまったく古びていない。「彼を殺したのは銃ではなく憎しみなのよ」というラストのほうの台詞などはまったく今日的といえるし、殺し合いは真っ平だと誰もが思っていても、それをとめることが出来なくなり憎しみの連鎖となっている状況は、今の国際情勢に見事に当てはまるもので、ぜひブッシュにも観てもらいたい作品だ。冒頭の俯瞰のシーンから指を鳴らすリズムのワクワク感。そして一人一人仲間が増えていき、顔、腰、足とカット割して躍動感を増していくところはすんごいカッコいいし、「マンボ」の怒涛のダンスシーンや「トゥナイト」のカット割を巧みに使ってどんどん盛り上がっていくとこにはもう、身震いするばかり。美しいテクニカラーで再現され、傑作は決して色あせないという証拠となっている。この魂の感動をぜひ大スクリーンで!

Les Choses Secretes (秘め事) (1月31日、日仏会館)☆☆☆1/2

2002年度のカイエ・ド・シネマナンバーワン作品。セックスを通じて男性を操ろうとしていた二人の若い女性が、逆に悪魔的な絶対的支配者たる男に操られてしまうという皮肉な顛末を描いている。男女の関係性における支配/被支配を、会社社会の中でなかなか巧みに描いているが、後半の「アイス・ザイド・シャット」ばり乱交シーンはあまりにもマンガチックで笑ってしまった。また、本当のかぎを握る一方の女性の視点が途中で抜けているのは欠点。人生における勝者/敗者とは何か、をとても深く考えさせてくれていて、単なる官能映画とは一線を画し娯楽性も十分。