愛のお言葉。

イタリア人の愛の言葉って、意外と、甘くないんですわよ、皆様。

と、いきなりはじまるお久しぶりの辛口ラブですが、今回はお題募集掲示板にイタリア語ゼロ子さんから頂いた「愛のお言葉」について書かせて頂きましょう。リクエストしてくださった皆様、必ずお答えいたします! しばしのお待ちを!!

さてさて。
恋人に呼びかける言葉のバリエーションが最も多いのは、個人的には英語だと思っております。
ダーリン、スイートハート、ハニーにはじまってとにかく甘いものは何でも使用可、の勢いを見せる英語に追随する言語はなかなかないでしょう。
意外にも、イタリア語のバリエーションは、割と貧弱です。
一番使うのが、「Amore」。そのまんま、愛、と言う意味ですね。英語だとマイ・ラブか。
次が「Tesoro」、こちらは宝物、と言う意味なので、英語だとトレジャー。これはあんまり使わないかな。
後は女の子に対しては「Piccola」(小さいという意味)とかかなあ。
よく聞く「Bello(男)/Bella(女)」は、美しい、という意味ですが、これは恋人には使わない
あまりにも使いすぎな言葉なので、恋人に対するスペシャルな呼びかけにはなりえないのよねえ・・はじめて行った市場の野菜売りのおばちゃんがまず呼びかけてくる言葉が、「Ciao,Bella」だし、それは別にわたくしの外見を褒めてくれていることではないことの証拠に、どんな容姿の、どんな年(さすがにおばあちゃんとかにはないけどさ)の女性にでも「Bella」と言ってるからね。

でもイタリア人は結構、甘くない呼び名を好みます
たとえばわたくしは恋人だったイタリア人に、とてもよく「Cicciona」と呼ばれていました。「デブ」と言う意味です。ええ。わたくし、かなり痩せているにもかかわらず。
もうちょっと可愛い呼び方だとCicciottina、おデブちゃん。だから、わたくしかなり痩せているんですってば。
あとはNana(小人)、Carimera(あの黒いひよこ、カリメロの女性形)、Oroturietta(なまこちゃん。理由不明。)などなど。
まあ、小鳥ちゃん、とか、きのこちゃん、とか、「ちゃん」が付く系の呼び方も多いか。
邪悪なきのこ、と呼ばれていた時期もあったなあ・・懐かしい。
もちろん、このあたりはすべて恋人同士の文脈で考えればスイートなものなのですが、アメリカ人の多用する直球勝負なべったべたの甘さ、と言うのは一線を画している感があります。

というのは、やっぱり、AmoreとかTesoroという一般的な言葉は、使われすぎているから、と言う理由のような気がする。
女友達同士でも、Amoreだって時々使うし・・Tesoro、は非常によく使うし。
ある意味大安売りされている言葉なので、本当の恋人同士で使うには、軽すぎるんだろうなあ・・

あと、uccio/ucciaという語尾変化も多いですね。
イタリア語は名詞の語尾にさまざまな言葉をくっつけて、意味合いを変える、というのをよくやる言語なのです。さきほどの「ちゃん」が付く系の言葉と言うのも、わたくしは女の子なのでinaとかettaとかを各単語のうしろにつけると「小さくてかわいらしい」という感じの意味が備わって、日本語で「ちゃん」を付けるのと同じ感じになるの。余談ですが、関西ではなぜか飴のことを「飴ちゃん」ていうんだよね・・老いも若きも。可愛すぎる。
で、でもこの「小さくてかわいらしい」系もまた、使い古されているので、出てくるのが上記uccio/uccia。男性なら語尾はO、女性ならAが基本なので、各名詞、各人の性別によって変わるんですが、これはいずれも「程度の悪い」をあらわす語尾変化です。
なんでもいいんだけど、例えば・・ワインはVino、といいますが、まずいワインはVinuccio。頭はTestaですが、悪い頭はTestaccia。など。
それをAmoreとかTesoroに流用すると、Amoruccio、Tesoruccioとなり、そこでは別に「程度の悪い」を示すわけではなく、なんていうのかな・・親しみと愛を込めた諧謔、といった雰囲気をかもし出すわけです。
それでもまだ、ちょっと甘すぎるけどね。

結局ね、イタリア人て、意外とエッジのきいたセンスの持ち主なのよ。そういう意味では。
アメリカ人のようなあのべたべたさが「かっこ悪い」と思える程度には洗練されているわけです。いや、あの口が曲がるほどの甘さというのも吹っ切れてていいとは思うんですが、そこは甘いことでは2000年オーバーの歴史を持つイタリア人、100%を極めつくして、一回転半の境地に入っていると言うか。
100をマックスとするならそれ以上というのは一回りして、ゼロに戻ってくる、という洗練の原理です。

呼び名以外では・・まんま「愛してる」を意味するTi amoは、よく使う。それはもう大安売りとか言うレベルを超えて、日常的に常に「愛してる」「愛してる?」「愛してる」を連発。
まだ恋人と付き合い始めた当時、大和撫子なわたくしはなかなかこれが言えませんでした。
だってどの面下げて「愛してる」なんて言うよ。あんた。
そんなこと「言わないでも分かる」っていうのが日本人の心意気! とばかり、激しく拒否したりもしていたのですが、そのうち、慣れました。言葉にしないとわからない、というより、表現してナンボのヨーロッパ文化。いわないことには始まりません。
そしてもうひとつ、Ti amoと並んでよく使われるのがTi voglio bene。これは、日本語にするのが非常に難しい、英語にするのも難しい言葉なのですが、「君を強く思う、君の幸せを祈る」のミックスされたような言葉で、恋人同士ではなく友達同士でも使える美しい言葉。
わたくしは、こっちのほうが好きですわ。Ti amoは直接的過ぎる。

でも、イタリア人、確かに軽くて閉口する部分はありますが、本当の愛の言葉は、安売りしないと思うよ。
ナンパ中にいきなり「Ti amo」が飛び出すことはあんまり無いと思うし。あくまで、恋人とか、配偶者に捧げる言葉のような気がする。
わたくしも、誰かにTi amoといわれたら、「これはただ事じゃないぞ」と思うもん。
愛する、という言葉は、日本語においてのほうがむしろ広範囲をカバーする。
わたくしは本当に仲のいい女友達を「愛してる!!」ということに躊躇しませんが、イタリア語だったらどんなに大切でも女友達にTi amoは使わない。ま、冗談で言うことはあっても。
これは「本気の恋愛」のとき限定で乱発される言葉なので、単純にに日本語の「愛する」に置き換えて使うと、大変なことになったりするので気をつけましょう。

まあ、イタリア語って、発音自体が長母音が多くて暑苦しい言葉だからなあ・・どんなせりふ聞いても、なんだか泥臭いのは否めないんですが。
わけのわからない口説き文句(例。君のお父さんは泥棒だね。何故なら夜空の星を盗んで、君の瞳にしたんだから。など)は、使われないとは言わないけど・・でもやっぱり、普通の状況なら言わないぞ。
相手がイタリア語を母国語としないガイジンに対しては言うかもしれないけど、イタリア人同士で真顔でそんなこと言ってもなあ・・わたくしなら、笑い転げますが。

とりあえず日本女子として大切なのは、Amore、Tesoroという日常的に安売りされている言葉を真に受けないこと、かな。
これは本当に、彼らが軽いわけではなくて、おばあちゃんが孫を呼ぶときにも、大事な友達を呼ぶときにも、下手したら市場のおばちゃんが客をあしらうときにも使う呼びかけだからね。
日本語にそういう言葉がないから解りにくいと思うけど。
いちいち真に受けてると・・本当に、身が持たないと思いますわよ。


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