巡礼テーマパーク・アッシジ。

アッシジといえば、聖フランチェスコ。

あまりにもありきたりですが、まあ、そうなんです。
聖フランチェスコといえば、もとは豪商の放蕩息子だったのに、ある日突然神の愛に目覚めた挙句、ぼろふくをまとって清貧の思想を貫き、小鳥に話しかけては愛を説いたという・・いえ。素晴らしい人です。
しかし、腐敗し、堕落しきった後期ルネサンスの法王庁を愛し、および絢爛豪華にして哀しいほどに惜しみない「ゆがんだ真珠」、バロック美術の都ローマで育った私に、中世のしがらみが多く残る暗くてクソまじめなルネサンス初期の街・アッシジって。。

1個も接点、なさそうじゃんねえ。

自分でも首を傾げつつ、何故か1月3日という初詣期間中に、巡礼の地・アッシジにむかったわたくし。
衣装は、それでも不服従(なのか?)の意思を込めて、ローマ・バロック全開のキュートアンドキッチュにて。

ローマからアッシジまでは、電車で2時間。

たどり着いて、まず思いましたわ。
ここは、巡礼テーマパーク??
だってチリ一つ落ちていない石畳、やけに親切に標識のでてる大聖堂、ひたすら観光客、おみやげ物や。

そのなのとおり聖フランチェスコ大聖堂、という名の教会は、まあ美しくも初期ルネッサンスという感じで、いやいやまあまあ、清貧な聖フランチェスコにはある意味許されるぎりぎりの豪華さというか、それはそれで感慨深いものがありましたが。
でもやっぱり泣いてると思うんだよね・・お墓の中で。と思ったの。観光地化されすぎてるから。

しかーし。

わたくしが意見を改めたくなったのは、まずはお菓子やさんのウィンドウを見てから。(は?)
イヤとにかく豊富なのよおいしそうな焼き菓子が。(大好物。
何をかって帰ろうか、と一気に機嫌が良くなるわたくし。
そういえば、アッシジがあるウンブリア、美食の州として有名。
ホクホクがおでわたくし達は、観光客がいかなそうな裏道のレストランへ参りました。
よそう通りおいしいお食事のあと。

顔面蒼白になる私。
はっ50ユーロ、裸でポッケにもってたのを、落とした!!

50ユーロといえば、日本円で6000円。イタリアの貨幣価値で言えば、10000円にも匹敵する大金!っていうか御飯代よりもよっぽど高い!!

しかし、そこはなまのお札。現なま。なまえもかいてありゃしない。
絶対戻ってこないだろうな・・と思いつつ、ダメモトでレストランに戻ってみると。
「あのねー。もしかして、わたし・・」
といい差すわたくしに、給仕してくれたお姉ちゃんと、レジにいたオーナーらしきお兄ちゃんがふたりそろって、
「あ!よかった! これ、あなたのよ!!!」と。
レジの脇によけておいてくれた、しわのつき方までわたくしのおとしたときのままの50ユーロ札を差し出してくれるではないですか。

感涙。(しばらくむせび泣き。)

すごいです。さすが聖人のまち。ローマじゃ、ありえない。
どうせあぶく銭、とかワケの判らないことを言いつつ、わたくしがそのお金をアッシジで使い切ったことはいうまでもありません。

しかもそれからがすごかった。
おみやげ物屋に行けば、買ったものと同じくらい(は大げさかな・・)の額の「おまけ」を店番のお姉ちゃんにもらい。観光案内所に行けば、案内のおばちゃんと先客のおばちゃんが、「あらなんてかわいらしい。お人形さんみたいね。」「ほんとうにね。日本人には珍しい可愛さね-。かざっておきたいくらい」と私の事を褒めちぎり。食材やの店主のおにいちゃんは、熱い口調でわたしたちと友情をむすび、タルトゥーフォ(黒トリュフ)をのせたトーストを味見させてくれる親切さ。登ったお城ではウンブリア州の観光ガイドをただでくれる。

とにかく、善意に満ち溢れた人達。
田舎らしい素朴さ、観光地らしいサービス精神。裏もなく、見返りも要求しない、純然たる好意。

いや、わたくしもローマっ子です。イタリア人の裏があって、見返りも要求するサービス精神にはなれております。もちろん悪意などない、ただええかっこしいで恩着せがましいサービス過剰さはイタリアの常識、それをいかにだましだまし使いこなすかがローマの処世術
しかしこの人達にはそれがない。

聖フランチェスコのおかげか??

とおもって、わたくしも、合点が行きました。

そうなのよ。ここにくるのは、巡礼者という名の観光客。
聖人の町、アッシジにわざわざ悪意を持って訪れる人と言うのも、そうはいないでしょう。
だからアッシジの人達は、安心して、善意あるサービスを、この巡礼者達に与えられる。ローマのように、いつだまされるか、と警戒する必要なんてない。
そしてその善意のみしか知らない聖人の町のサービス精神は、聖人の町としてのアッシジの名をさらにたかめ、そしてその巡礼者はもちろん観光客で、観光都市であるアッシジはさらに潤う、と。

あるのね。世の中には。
ただ善意だけで成り立ち、そしてその善意こそがさらなる利益を生み出すという、うそのような商売人の世界が。

これは、やっぱり聖フランチェスコのお恵みでしかありえないでしょう。
聖人の街、そして観光地、というその二つがこれほどまでに一体化していなければありえない、善意が、なんの思惑もなく、そのまま利益につながるという仕組み。

ま・さ・に、巡礼テーマパーク。

辛気臭いなんて言ってごめんなさい、聖フランチェスコ。
やっぱりアナタは、偉大な人でした・・

追記・焼き菓子は買い忘れました。


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