ボケと突っ込み


わたくし、関西系の方と会話する機会が増え続けているのですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
個人的に「耳がいいから方言のマネが得意」と言い切っているわたくしは、何故か関西語だけちっともうまくならず、しかも関西的ボケ突っ込みも全くモノにできず、もしかしてやっぱり前世が木曽出身(わからない人には全然わからないと思いますけどね。ほほほ)なだけに京都からは追放される運命なのか、と見も世もなく哀しんでしまいそうな勢いなのですが、それはともかく。

イタリア語にもボケと突っ込みは、あります。
でも残念ながら、日本語とは全然違います。。
だからね、わたくしが繰り返して言うように、「語学力」と「会話力」は別なの。
どんなに語学力があっても、この翻訳することの出来ない会話のリズムや会話の作法というのが分からなければ、「会話力」にはなりえないんだよねええええええええ。
それって、もう構文上の理由だったりするから、どうにも説明しにくいんですが、そしてわたくし自身この「会話力」が上がるにつれて、その「訳せない」部分を堪能できすぎてしまって、通訳としては本当に困ったことになってきてるんですが、今回は無謀にも、イタリア人のボケと突っ込みをご披露してみましょう!

先日、同僚のイタリアの女の子シモーナちゃんと、お弁当を買いに出かけました。
彼女とわたくしは、回りがふりかえって見るくらいにいつも大声でイタリア語でしゃべっているのですが(イタリア人は声が大きい)、そのお弁当屋さんでの店先のこと。
(以下、何とか日本語訳できる限りしてみます)
ヤヨイ「なんにする?」
シモーナ「なにがあるの?」
ヤヨイ「カツとか・・から揚げとか・・イタリアンハンバーグとか」
シモーナ「・・そ、そのイタリアンハンバーグっていうのはなに・・」
ヤヨイ「多分だけど、ハンバーグの上にケチャップとチーズが乗ってるんじゃないかと・・日本人はトマトケチャップとチーズがかかってるのがイタリア風だと信じてるから」
シモーナ「ああそりゃそうよね。イタリアでは毎日食べるもんね。そのイタリアンハンバーグ。」
ヤヨイ「そうそう、かの有名なイタリアンソーダと言うヤツとかね」
シモーナ「そ、それはなに・・」
ヤヨイ「ほらなんかさ、炭酸水にリキュールを入れていろんな味にするヤツ。凍ってるとフローズン・イタリアン・ソーダといわれたりね」
シモーナ「ああ、そりゃそうよね。イタリア人は毎日飲んでるしね」
ヤヨイ「そうそう」

と、翻訳してしまうと超つまらない会話なのですが、これ、イタリア語でやるとかなり面白いんだよねえ・・
因みに、イタリア人はハンバーグと言うのは食べません。あのひき肉を平たい丸にして焼いた食べ物は、ハンバーガー(丸いパンに挟む、マクドナルドとかのハンバーガー)としてのみ認知されていると言ってもいいわ。ひき肉を丸めたヤツはだいたいポルペッタといわれる肉団子みたいなのになるもん。
ケチャップも、イタリア人はめったに食べません。パスタにケチャップを入れるなんて論外。かろうじてフライド・ポテト(これは冷凍モノが主流)にかけて食べる。マヨネーズもほとんど使わない。タバスコなんて存在自体、知ってるのか、イタリア人??
炭酸水は非常に良く飲みますが、リキュールを入れたものは、いまだかつて見たことがありません。
フローズンは・・時々見るかな。でもイタリアン・ソーダじゃないぞ。

だから上記の会話は、日本語で言えばボケっぱなし、ってことになるのか。
イタリア風だと、この状況では突っ込まない。ここで終わり。
わたくしがシモーナに突っ込まないからといって、決して流しているわけではないのです。
このボケつづけるあいだのイントネーションとニュアンスに限りなくボケのエッセンスを盛り込むわけです。
ポイントは上記日本語でシモーナが言っている「ああそりゃそうよね」の部分かなあ。
イタリア語で大体、「Ah si, ma certo」という感じなんですが。このAh si(ああそう)に、どれだけのニュアンスをこめられるかが勝負。
もしくはわたくしの最後の台詞「そうそう(Si Si)」とかね。

ではボケに対してツッコミがある場合はどうかというと。

わたくしは酔っ払うと(イヤ酔っ払わなくても)よく転ぶことで有名です。
先日も、シモーナとふたりで酔っ払った後、トイレから出た瞬間に、ちょっと段差だった床に気付かず、見事にこけそうになりました。
その時はお店のおにいさん(アフリカ人。)のフォローで何とか事なきを得たのですが、
わたくしは戻って一言。
ヤヨイ「あ、全然酔っ払ってないから。」
シモーナ「Si, CiaaaO
このチャァァァァオ。というのが見事な突っ込みなのですよ。
ああ分かりにくくてすみません。
無理やり訳せば、日本語では挨拶(やあ、とかじゃあね、の両方)であるチャオを皮肉な感じでいうことによってやや「はいはい、また今度」というか「そいじゃ!」みたいな感じなんだけど、やっぱり訳せないわ。

って今かいてて思ったんですが、こういう「おふざけ」の会話では、「Si」が重要なのねえ。
一応、買いとくと、「Si」は日本語の「はい」、英語の「Yes」ですが、そして「いいえ」は英語と同じで「No」ですが、ボケにもツッコミにも「No」がないんだ。
日本語だと、ツッコミって、「ないない」とかさ、「ちゃいまんがな」とかさ、「なにゆうてんねん」とかさ、「ありえない」とかさ、とにかく「No」が多くない?
もちろん日本語にも「はいはい」という受け流し突っ込みみたいのがあるとおもうんだけど、イタリア語ではそっちが主流、というかそっちばっかりなのかも。
無理やり理由を考えれば、「No」ってかなり強い言葉なので、真剣に何かを否定したい時にしか使わないのかなあ。
イタリア語で最も「なにゆうてんねん」に近い突っ込みの言葉は、「Beato te」(相手が女の子の場合は「Beata te」)だと思う。直訳すれば「君が羨ましいよ」という意味で、皮肉気に言うと「おめでたいこといってるなあ」という感じになって、まあ結局「なにゆうてんねん」なんだけど。
ああ、もちろん「Che caxxx dici」(一部伏字)とか、まさに「何を馬鹿なこと言ってるんだ」という突っ込みもあるんだけど、それはボケ(つまりわざとボケてる時よ)に対するツッコミにはならないなあ。相手が真剣に、こちらの考えとは違うことを言っている時に、それを否定するために言う言葉だから。
なるほどねえ・・深い。
つまりイタリア人は、ボケ突っ込みにおいて、相手を否定しないんだ。
否定するにしても、つねに「Si」を使って、「認めたふりをして実は認めていないことをニュアンスでわからせる」
これも一つの文化的洗練であるわけかしら。

もちろん、会話というのは二人以上でするものだから、相手によって状況によっていろんな言い回しがあるし、それを選ぶことこそが会話力の試されるところなんだけど、そういうわけで、イタリア人相手にボケたり突っ込んだりする時は極力「No」を使わずにやるとそれっぽいかもしれません。
いやあ、期せずして勉強になったね。うん。


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