イタリア人英語事情

さ、留学について硬いのかいちゃったから今度は楽々行くわよーん。
笑って読めるイタリア人古今東西。今回の御題は・・イタリア人の英語。
これで参りましょう。ずっとまえにeveちゃんにリクエストしてもらってたのですが、eveちゃんありがちゅ♪

イタリア人の英語は、かなり下手です。
そしてその下手、ということを理解できない人が多いです。
たとえばわたくしのメインのクライアントである宝石商のおじいちゃんの英語は、イタリア語の単語を一つ一つ英語に訳していったもので、文法的に、というか言い回し的に「・・意味はわかるけど・・けして英語として完璧なわけでは・・」と思ってしまうようなものなのですが、彼は完璧な英語をしゃべっているつもりでいるからタチ悪いです。そこで喧嘩してもしょうがないから何も言いませんが。

イヤでも彼はまだいいほうで、というかイタリア人としては猛烈に英語ができる部類で、たいていの人の英語のレベルは、まあ日本人とおなじくらいかな。
道を歩いてて、英語でおじさんおばさんに道を尋ねて、答えが帰ってくる確率は・・日本と変わらないかな。というのはつまりかなりゼロに近い、って感じですか。
しかしそこはラテン語の直系子孫であるイタリア語英語はラテン語の孫みたいなものなので、単語として似通っているものはいっぱいあるし、なんとか通じさせようと思えば通じないこともなく、そして日本人のように照れたり恥ずかしがったりしないのが売りのイタリア人。
イタリア語よりさらにわからない言葉で親切に道を説明してくれる人がいたら、それは多分、イタリア語訛りの英語です。

イタリア語はご存知のとおり巻き舌を使います。日本人には英語のLとRの使い分けがかなり困難ですが、イタリア語では日本人でもはっきりすっきりわかるくらい、LとRが違います。
そして彼らの英語のRは、すべて巻き舌です。しかも激しく。

これはねー、馴れないとわかんないよ。
ローリング・ストーンズ、という単語を、わたくしはなんどききかえしたことでしょう。どうきいても「ルロウリッストン」と聞こえるんですよ。これが。そうそう、イタリア語では二重子音(この場合はRollのllの部分ね。)をちっちゃい「っ」を入れて発音するので、そうなっちゃうのよね・・
イタリア語には子音で終る言葉もないので、英語のように子音を多発する場合、その子音は母音を伴って違う音になるか、なんとなく発音しにくいので聞こえない程度にしか発音しない、ということになるのでなおさらです。
しかもHが発音できないのはフランス人とイタリア人の特徴なので、例えばマンハッタン、は、「マナタ」(百歩譲って、最後のNが聞こえたとしても「マナタン」)となります。
突然「マナタ」といわれてマンハッタン、だとわかる人がいたら手を上げてください。

まあでもさ、それはわたしたちだって、ローリング・ストーンズ、と日本語発音で言うわけだし、それをイタリア人の「ルロウリッストン」よりまともな発音だ、と言うつもりはないし、そしてわたくしも、英語でしゃべっている分にはちゃんとRolling Stonesと発音しますが、日本語でしゃべるときには「ろうりんぐすとおんず」と言ってしまうしさ、だからイタリア語で会話しているときに、突然ルロウリッストンやマナタが出てくるのは,まあしょうがないんだけどね。シカゴは、普通にチカゴ(イタリア語ではCIはチ、と読むので。)だしさ。U2は「ウ・ドゥエ」だしさ。この辺まで来るとほんとワケわかりませんが。

で、まあもしも相手がアメリカ人だったら、イタリア訛りの英語でも理解して上げられると思うのね。
わたくしたちが、どこかの外国訛りの日本語を、それでも理解できるように。
でもネイティブじゃない同士が、外国訛りの英語をしゃべるときは、かなり辛い。
「はろう」
「あっろ」
「まいねーむ いず たろう」
「まいねいっむいっず まーりお」
「ないす とぅ みーと ゆう」
「ないっす とぅ みっとぅ ゆ とぅ」
と、まあこのくらいならなんだか一応分かり合えるような気がしますが、これ以上になったらきついっしょ。
あ、もちろん平仮名表記で表しつくせないニュアンスの部分はお許しを。

でさ、イタリア語の英語教育って、ちゃんと聞いたことないんだけど、日本よりもかなり時間が少ないと思うのね。
日本はかなりの時間を義務教育の中で、もしくは高校教育の中で英語にあてているような気がしますが、そしてその割には日本人の英語力が低いのは嘆かわしいことですが、それに比べたらだいぶ少ない時間しか勉強してない。
一時は「英語などしゃべらないわよわたくしたちは!」とのたまっていたフランズ人のほうが、よっぽどうまい気がする。英語。
でも、彼らにはラテン語というバックグラウンドがあるから、難しい言葉とかを、発音はともかく、すんなり理解できたりするのね。思いつく例をあげると・・
日本語で言うところの「工業化」。この間とあるお友達と話していて出てきた言葉ですが、英語では、インダストゥリアリゼイション、イタリア語ではインドゥストゥリアリッザッツィオーネ。ま、同じ単語といえば、同じ単語でしょ。
わたくしはそういうわけで、イタリア語で覚えたたくさんの難しい単語を、そのまま英語化して使えるようになったため、英語力も上達しましてよ。
で、そういう単語を、勉強しなくても使えちゃうイタリア人と、一から勉強しても、ここまで長ったらしい単語だとなかなか覚えられないし発音もできない、でも文法とかで考えたらイタリア人よりよっぽど英語を知っている日本人が会話するとさ・・ボキャブラリが、かみ合わないんだよね。

日本語は、他のどの言葉とも似ていないので、知らない単語があったらあきらめるしかない。知ってる単語で、その知らないことをいかに説明するか、というのが語学力の第一歩だというのが、一応日本で語学の専門家であるわたくしの意見なのですが、イタリア人は、単語レベルなら英語でもフランス語でもスペイン語でもポルトガル語でも何とかなっちゃうんだよねえ。

ちょっと話がずれますが、わたくし、一年に一回、仕事場で出会うスペイン人のカメラマンとマブダチです。
お互い、わたくしはスペイン語を勉強したことは一度もないし、彼はイタリア語を勉強したことなどないでしょう。
一年に一度出会うと、感動の再会のように抱き合って、ほっぺにキスをして、「元気?調子はどうよ?」とやるのですが、その間中二人ともイタリア語とスペイン語をしゃべっているわけです。
それでも、なんとかなっちゃうの。会話が成立しちゃうのよ。
もちろん全部はわからないし、「え、なになに?」となることはあるんだけど、そうなってもしゃべるスピードは落とさない。別の言い方で説明するんだけど、うーん、外国人向けにゆっくりしゃべる、というやりかたではなく、「あ、この言い方じゃわかんないのね。じゃこれならわかる?」という感じで、そのままの会話のスピードで続けていくうちになんとなく通じちゃうの。
そういう言葉を「外国語」として持っているヨーロッパ言語の人たちは、羨ましいといえば羨ましいような。

だから彼らにはあんまり「文法やってなんぼ」という概念が、ないんだよね。
フランス語をローマで勉強したときにも思ったけど、会話勝負。イタリア語をいかに変換して、フランス語なり、英語なりにするか、というのが彼らの勉強のしかた。
もちろん、日本語とか中国語とかだったらまた別なんだろうけど、英語くらいだったら、「イタリア語の文法をまったく忘れて、一から英語の文法を」ということが、良くも悪くも、イタリア人にはできない。
でも英語というのはスペイン・フランス・ポルトガルというラテン語の子供達とはちょっとちがうので、中途半端に文法が変わっていたりするので、それでますます、イタリア人の英語は、日本人にとって不可解なものになっていくのですよ。
イタリア語がわかる日本人として、イタリア人の英語を聞いていると、「ああ、なるほど。その間違いの理由はコレコレなワケね。」と、深く納得できたりもするんですが。

ま、コレばっかりはしょうがないねえ。
発音といい、習得法といい、まったく逆方向の日本人とイタリア人が英語で会話をすると言うのは、むずかしいよ。
向こうにしてみれば、日本人の英語は訛りがありすぎて、しかも文法も(イタリア語的に)めちゃくちゃで、わけわからん。となるはずだし。

こんなところにも決して分かり合えない深い溝が・・
とりあえず辛口ラブ読者の皆様は、ローリング・ストーンズとマンハッタンについてだけは、イタリア人と語り合える、ということで。ここは一つ。


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