イタリアから見た日本


わたくし、今のうちに書いておきますが、普段から下駄を履いて歩いています。
厚底ヒールのなかなか高い、値段はとってもお手ごろな、おもちゃみたいな下駄なんですが、三色・四色そろえてお洋服に合わせて毎日履き替えておりますの。
そして妹も真似してはくようになり、いまや二人でカラコロいわせています。

いまのところ、普通のお洋服に下駄を合わせるという荒業を使っている人は多分ほとんどいなくて、道行くわたくしたちを人々はやや怪訝そうに見つめていますが・・これ、もう少ししたらはやりそうな気がする。
渋谷とかを歩いていると、若いお嬢さん方がわたくしの足元に注目しているので、誰かが真似し始めたらそのあと爆発的に広がるような気がするのよう。
で、ブレイクしてしまったら、「流行に乗ってる」とか言い出されるとくやしいので、ここに明記しておきますが、わたくし去年、2003年の夏から夏場のサンダルを一切撤廃して、下駄ばっかりはいてます。
ブレイクしたら、むしろそれは、みんながわたくしと妹の真似をしているからです。ええ。

と、突然熱いですが、基本的にイタリア人は下駄と言うものに興味深深です。
それはもう不思議なほど。
初めて日本に来るイタリア人の通訳をしていると、ほぼ確実に、「下駄がほしいんだけど、どこでかったらいい?」と聞かれます。
しかも、絶対木で出来た本物で、下がゴム底とかになっていない本物で、厚底なんてもってのほか、あの下駄特有の二本の歯で立っている、出来れば塗りのものがよいようです。妙に本格派。
それはあたかも、わたくしたち日本人のほとんどがイタリアに行って、「イタリアと言えばマンダリン!(小さいギターみたいなウクレレみたいなイタリアの楽器ね) 絶対に本物の高級なマンダリンが欲しい! どこで売っているのか教えて!」といってしまうようなことで、と言う例がわかっていただけるかどうかわかりませんが、下駄もマンダリンも、基本的に今頻繁に使われるものではないし、そしてわざわざ外国で買い求めたとしても、それを後で使うと言うことは普通はないような気がするわけです。
しかしイタリア人は下駄を欲しがります。何故だ。

と言うわけで今回のテーマですが、「イタリアから見たニッポン」。
折りしもソフィア・コッポラ監督のロスト・イン・トランスレーションが話題になっていますが、これはわたくしは見ていないのですが、イタリア人にとってのニッポンはいまだに、着物にゲイシャ、サムライ富士山なのか??

まず、イタリアに行こうとするわたくしなどが、イタリア人から「買ってきて!」と頼まれるもの。なんだと思います? もしくは、日本を訪れたイタリア人がお土産に買って行きたいと思うもの。
まず、真珠。これも結構意外ですが、日本の真珠は世界的に有名なのです。
そして浴衣。しかし普通の浴衣を着ることなど出来ないイタリア人は、温泉旅館においてある寝巻きのような浴衣、しかもポリエステルでやたら派手な模様入りのものを買っていって、部屋着にしたがります。
でも本当にしている人は見たことアリマセン。この辺は、フランス映画に時々現れる、「おフランス的ジャポニズム解釈」が幅をきかしているんじゃないかと思うんだけどな・・。
そして、健康サンダル。あの足の裏にツボ押し機能のあるぶつぶつのついた突っかけサンダルのことですわ。
そして足袋。いつはくんだ。足袋。
鉄瓶。鉄瓶って・・重いんですけど・・

総じて、日本人でも持っていないような妙なものを欲しがります。というかいったいどこでそんな知識を手に入れてきたのか。健康サンダルって。あなた。探すほうも大変だよ。ほんと。

個人的な日本のお土産としては、蛇の目傘をオススメしたい。ちょっと邪魔ですが。
というか、わたくし下駄に続いて、蛇の目傘を日傘代わりにして歩きたいなあ、と思う今日この頃。でもさすがにそれはなあ・・

それはともかく、イタリア人のこういう妙なリクエストは、ある時ふと、雑誌の一コラムなどを読んでしまったところから始まります。健康サンダルのことがたまたま触れられているものを見て、「これはいい!」と思ったイタリア人は、日本といえば健康サンダルを思い出すわけです。

つまり。イタリアではかくも日本についての知識がなく、たまたま目にした健康サンダルが日本の代表的特産物になってしまうほど、根本的にみんな何も知らない。
たまたま目にしたものが、日本製のボーリングのピンを並べなおす機械だった人は、日本といえばその機械を思い出してしまうと言っても過言ではないのです!

そもそも、ヨーロッパにとってヨーロッパ以外は「辺境」。いくら奇麗事を言ったところで、彼らにとっての中心はつねにヨーロッパ。アメリカは、まだ言葉が通じやすい(英語はラテン語起源の言葉だし、まあ、一応世界の共通語だし)と言う点で意思の疎通が図れているようですが、日本語というヨーロッパから見たら異様な言語を使い、物凄く遠いところの、しかも島国で、おまけにお金だけは持っていて物価は高い、というこの不思議の国ニッポンは、どうにも知識を得ようのない国である、ともいえます。理解の外にある、というか。
なんていうかなあ・・日本は島国で、文明開化以降、「他の国を見習う」という習慣が身についてしまったせいか、日本人は異文化のものさしがあることを知っているということにかけては優れているような気がするのですが、そんな必要なかったヨーロッパの人たちにとっては、異文化のものさしなどこの世に存在しないもので、存在しないものの知識は当然得られない、というか。異文化への理解と言う点においては、ヨーロッパ人はいつも、なんだかはずしている気がします。
世の中に「自分とは違うもの」が一つあることを知っている人は、二つ目を認識することは結構簡単にするのですが、「世の中は基本的に自分と一緒」と思っている人たちにとって、「違うもの」というのは、認識しにくいものなのですわ。
例になるのかどうかわかりませんが、伊豆のガラス美術館(?)というところで、アール・ヌーヴォーのガラス芸術と日本の浮世絵の融合、みたいな展示をみたのですが、アール・ヌーヴォーのいとも優雅なオゲイジュツに引用された浮世絵はそれはもうドン臭く、元ネタの浮世絵自体のほうが300倍くらいすぐれていたのですわ。これなら引用してくれなくて結構。と、わたくしなどは言ってしまいたくなるわけです。お好きな方にはもうしわけござらぬ。

まあ、イタリア人が知っている日本のことと言えば。
ゲイシャ、というのは和装の売春婦のことだと信じて疑っていないし、また、凄いことをしてくれるんだろうと伝説になっています。異民族の売春婦に興味深深なのはどこの国の男でも一緒かもしれないけどね。
文学と言えばとりあえず有名なのは三島と谷崎。わたくしも両方好きですが、なんだか偏っているような気がするんですけど。あと吉本ばなな。それもまた唐突な。
食事といえば、多分、ヘルシーだと思ってるな。豆腐とかさ。精進料理みたいなものを想像していることが多いような気がする。それで何故か「王将」には言ってしまったイタリア人は、脂っこさにびっくりするわけです。
インテリアや建築は、日本は高い評価を得ていますが、基本的に日本風といわれるものは「ミニマリズム」ですね。禅宗の石庭と雰囲気、そして最近よくみかける白い壁、しろい無機質なソファの並ぶカフェみたいなイメージ。

と、ここまで書き進んで思ったのですが、でも実際、「正しい日本のイメージ」ってのは、難しいわね。
わたくしは東京生まれの東京育ちで、日本といえば東京、だと、自動的に思ってしまうのですが、実際はそうではないわけだし。
そしてその東京も、北東京南東京、西東京東東京で、全然印象が違うわけだし。(このへん、今個人的に熱い話題なのですが。)
イタリアのイメージというのを、正しく日本の皆様にお伝えすることは、辛口ラブやこのサイトを通して、まあ完全ではもちろんないですが、なんとなく、いつかは、出来るような気がするけど、日本のイメージをイタリア人に説明するなどと言う無謀なことはわたくしには出来ないわ。

宗教的にも神道仏教その他が入り乱れ、文化も伝統と新しいもののだんだら模様。イタリア人が仕事で東京に来て、一日観光する時間がある、と言われたとして、浅草・上野に連れて行くか、渋谷に連れて行くか、表参道か、銀座か、で、日本のイメージは全然変わってしまうでしょう。
同じ東京と言う街でこれだけ違うんだから、日本全国で考えたら大変だわ。京都が無難なセンかもしれないけど、それは正しい日本のイメージかといったら・・日本代表では少なくても、ないはずだし。

まあ、いま新しい世代のイタリア人の間で形成されつつある日本のイメージは、今まで何もなかったところに突然現れた日本の漫画、アニメ、そして北野武の映画、だったりするわけです。
なんとなくキッチュでしかしどこかスノッブなサブカルチャーっぽい雰囲気。インテリアのミニマリズムにも通じるかも。
そしてそんなスノッブな文化を持ちながら、ブランドショップに列をなす、どう見てもおしゃれではない日本人観光客を見て、彼らは首をかしげるわけです。
あ、オシャレに関していえばさ、わたくしは本当に、若い日本人はオシャレだとおもうわけですが、そもそもそういうオシャレな格好をしている日本人観光客が何故か少ない、というのは、日本には伝統的に(?)「行楽ファッション」みたいなのがあって、それはたとえば白に青い横ストライプの入ったボートネックのTシャツにベージュのパンツ、白のスニーカーに白い小さいつばつきの帽子、もしくはなぜかベスト?のようなものを着ている方々とか、まあ動きやすい格好なんでしょうけれども決してオシャレではない格好で、それを着て海外旅行にいく、というところに端を発しているのではないかと思うのですが、いかがなものでしょうか。
観光ガイドに「歩きやすい靴で!」って書いてあるし。
そういう格好でラグジュアリーブランドに並ぶから、なんかおかしいんだよなあ・・

なんかとりとめもなくなってきたので、強引にまとめますが、日本って、国として、セルフプロデュースが苦手なのかも。というか、複雑過ぎて、まだどの方向にプロデュースしていいかがわからないんだろうなあ・・
先日、小泉首相の外国向け、観光促進宣伝のCMをみましたが・・なんか微妙だったなあ・・やっぱり相撲とかでてくるし。いや相撲はわたくしも大好きなんですが。
この先、いつか文化的にかたまって、「これぞニッポン」と言うイメージが出来るのかしら。
そしてプロデュースしたい日本のイメージと言うものは、どういうものなのかしら。

個人的には、古今和歌集の世界でいきたいけど・・それも到底、日本の真実の姿とはかけ離れているしなあ・・


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