スラングの誘惑

困ったことに、言葉を勉強し始めの頃というのは、やたらスラングが使いたくなるものですよね?
「なんとなくかっこよく聞こえる」、「それをいうと受ける」というのが基本の理由だとは思いますが、わたくしは初心者のスラングには反対派です。
スラングというのは一つの言語における「トリッキーな技」もしくは「スパイス」ですから、基本も出来てないうちにそんなものを使うとすっごく頭が悪そうに見えると思っているからです。

今日本語をしゃべる外国人を例にその頭の悪さを説明しようとおもったんですが、結構難しいな・・
日本語って、基本的に「スラング」があまりない言葉で、というのは日本語の日常会話の体系って凄く特殊だと思うのですが、例えば「オレ」という一人称をスラングと位置づけるかどうか、というところからして普通では考えられないほど「カスタマイズ可能」な言語なんですよね。
一人称の種類だけで十種類以上、しかもその使い方によって年齢、性別、社会的地位、今喋っている相手との関係性、そしてセルフ・プロデュースのすべてを表せる言語というのはわたくしは他に知らないし、多分空前絶後なのではないかと思っております。
二人称でも、あなた、きみ、おまえ、貴様、てめぇ、あんた、アナタ様、などなど、これって一応方言とかは関係なく、日本語として位置づけられる呼称ですよね・・
で、そのうち一人称なら「オレ」とか「オイラ」とか「あたし」「ウチ」「わちき(・・は、違うかな・・)」あたりが、フォーマルでない、どちらかといえば蓮っ葉な感じの、スラングといえばスラングに近い物かな、という気がしますが・・このあたりまで来るとスラング(俗語)とはなにか、みたいな話しになっちゃうんですがまあ、とにかく、もしも日本語がカタコトの外国人の一人称が「オレ」だったら、やっぱりちょっと変なわけです。
「オレ」というのは「僕」や「私」という基本の一人称を十分理解したうえで、さまざまな理由から敢えて選ぶべき一人称であって、一番最初に学ぶべき一人称ではない。というか。イタリア語だとわかりにくいかもしれないですが、例えば英語の「I」を、「オレ」だと教える日本人はいないわけです。
というわけで、わたくしは何語であっても、初心者の段階でそういうスラングやワケアリの言い回しを使うことは推奨しません。
それにさ・・言葉にはいろいろな事情というものがあるから、相手を不快にさせてしまうような事情も、初心者にはわからないじゃない?

ま、考えてみると日本語って言うのは物凄く「スパイス」のかずが多い、そういう意味では豊かな言葉で、だからこそわたくしは日本語で文章を書くのが楽しいんですが。多用している「わたくし」という一人称にしても、これはこれである一定のプロデュースに貢献しているわけですしね。これが全部「あたし」だったら、それはそれで、同じ文章でも全く違う雰囲気に変えることが可能なわけです。

対して、イタリア語。
イタリア語にはそういうスパイスはありません。
日本語で、「私は家に帰った」というのを
「わたくしは家に帰らせていただいたのででございます」
「オレは家に帰ったんだぜ」
と、ちょっとオーバーに脚色してますけどね、言えるのと違って、それはもう
「Sono tornato(a) a casa」しか(ほぼ)絶対いえないわけです。細かい文法事項は置いといて。

では、イタリア語ではナニがスパイスになるか、というと。

日本語に圧倒的に少なくて、イタリア語に圧倒的に多いのは、「どちらかといえばエロチックな意味を含んだ、しかも人前で使える隠語」でしょう。
日本語でも隠語はそれはそれはたくさんありますが、ほとんどが人前では使えない言葉です。放送禁止はもとより、日常会話においても、よっぽどのことがない限りいわないでしょ、アレとかアレとか。
女の子にとっては発音することすら出来ない言葉、というのがたくさんあるわけです。
書いてて思ったんだけど、でもそういう言葉ってみんなしってるよね・・どこで知るんだろう。子供の頃に覚えちゃうんだろうけど・・誰が子供にそんな言葉を教えるんだ? 深いな、日本語。

いや。だからといってイタリア語ではそういう言葉をホイホイどこででもいっていいかと思ったら大間違いですよ。ちゃんとTPOをわきまえないといけないし、女の子はやっぱり使わないほうがいいに決まってる言葉ではあります。
しかし、イタリア人が一日平均20回口にすると言われるあの言葉、日本語に翻訳すれば「クソっ」に一番近いあの言葉は、本当に避けては通れない。
えーと、これを読んでいる皆様だけにこっそりお教えしますが、日常生活では使わないでくださいね。それは・・CAZZO(かっつぉ)といいます。一応白くしておいたのでみたい人は反転させてください。
そしてその意味は日本語ではわたくしとてもいえないので持って回った言い方になりますが「男性性器」の、下品な言い方です。
なんかまどろっこしくて申し訳ないですが、日本語でそんな言葉、口にするだけでなにかの罰ゲームかマニアックなプレイか? という感じじゃないですか。しかしそのような言葉を、わたくしでさえ、一日イタリア語で喋っていれば、4,5回は口にしてしまうわけです。いや、わたくしは女の子としては結構多く使うほうかも。ローマ育ちだから。ローマ言葉って下町言葉だから、結構下品なのよね・・

この言葉、先ほど書いたように「クソっ」みたいな舌打ち的な意味でも使いますが、他にもいろいろな意味になっちゃうのよー。
たとえは「Che cazzo dici」などは、かなりよく使う言葉ですが、これはそんな言葉なくてもChe dici(何を言ってるの?)と意味が通じるところに、一言はさんで「何あほなこと言ってるの?」みたいな強調(?)表現になるわけです。その他、強調させたいときはかなりのペースで出てくるこの言葉。避けては通れません。わたくしがよく使うのは「non me ne frega un cazzo」。私には一つも関係ないしー。位の意味です。
でも冷静になって考えてみると、平気で「そんなことはわたしには***一つほどの意味も無い」とか、そういうことを言っているということですから、結構オオゴトよねー。きゃー恥ずかしい。とか言ってみたりして。

で、この言葉に留まらず、よく使うスラングというのはかなりきわどい意味が多いのですわ。
「Culo」というのは下品な言い方で「お尻」という意味で、日本語なら「ケツ」くらいですかしら。
これはお尻という意味でも使うし「幸運」という意味でも使えます。そして、「Inculato」なんて言葉があって、これは「〜の中」という意味の「In」と「Culo」と、ここでは受身を表す接尾語、と言ってもいいと思うんですがそういう意味の「ato」がくっついてますから・・まあ、直接的な意味はご想像にお任せします。間接的な意味は「騙された」とか「してやられた」。
ちょっと面白いのは、そういうわけで男性・・のほうが「クソ」とか「くだらない」とか、そういう悪い意味で使われるのと反対に、女性のほうは「すばらしいもの」「かっこいいもの」の意味だったり。
ちなみにこの男性=悪いもの、女性=素晴らしいものという構図はスペイン語では全く反対になっていたりして、その国での性差みたいなものが垣間見れるのが面白いところです。もちろん、いろいろかんぐると、どちらが男性優位社会なのかは難しいところだとは思いますけどね。
「クソ」そのものの言葉はもちろん存在していて、それはそれでいろいろ使えたりするし・・あと「売春婦」とか「自慰」とかもよく使いますね、ってわたくしこんなこと公共の場所で書いていいのか?って感じになってきましたが。

でね、そういうわけで、わたくしも日常的にそういう単語を乱発しているわけで、当然、イタリア人としては「日本語のそういう意味の言葉」を知りたがります。まあ、一番面白い言葉なんだろうしさ。
でもそんなこと聞かれても答えられないじゃないですか! 文章で書くことさえ抵抗があって出来ない単語を、発音することなんてわたくしにはできません。
そして、そういう単語って、聞くのもいやじゃないですか。冗談でも言いたくない、聞きたくない、というか。
でもきっとどこからか情報は入ってしまうらしく、しかももともとこういった言葉に抵抗がないイタリア人。増して外国語なんて実感が薄いから、平気で言えちゃう。いるんですよー・・道をあるいていると、そういう下品な言葉をいきなり発音する不届きモノが!!
日本だったら痴漢行為と行ってもいいこの行動、しかしそれほど悪気がないのにやるからなー。
そういうことを聞かれたら皆様、出来るだけ教えないで!! みんなの精神衛生のために!!!

余談ですが、日本語とイタリア語は発音が似ていることが結構あります。イタリア語の単語で唖然とするような発音のものもたくさんあるし、日本語の単語で笑っちゃうような言葉も多々。
相変わらず品が悪いのでちゃんとは書きませんが、意識せずに喋りながら、ふと気がついて一人でわらっちゃったりね。

ご興味がある方はいつかお逢いした時に!!


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