イタリア人三原則のススメ。

先日テレビを見ていましたら、テレビ朝日で放映されている「テレビタックル」という番組で、「イタリア人的生活のススメ」というコーナーがあったのね。
わたくし普段テレビは見ないものですから、たまたまついていたテレビでソレを目にして、息が止まりそうになってしまいました。
そしてこれは長いことわたくしが提言したい問題でもあったので、ここではっきり言わせてもらいます

世の中の「ちょっとイタリア通」みたいな人がよく言うキメ台詞、「マンジャーレ・カンターレ・アモーレ」というの、あれ、やめて下さい!! 恥ずかしいから!!

順を追って説明しましょう。
この文章を知っている人は、「イタリア人の人生というのはこの三つで構成されている。つまりマンジャーレ(食べる)、カンターレ(歌う)、アモーレ(愛する)だ。」
とか、言いがちですが、そもそも、ですね。
マンジャーレとカンターレはそれぞれ動詞の原形なので、「食べる」「歌う」としていいんですが、アモーレというのは、動詞ではありません!!! 「愛」という意味の名詞です!!!
なので、これを訳せば「食べる、歌う、愛」という全く文法的に統一性の無い恥ずかしい文章になってしまうんです。

というわけで、せめて、これを言う時には「マンジャーレ・カンターレ・アマーレ」と言ってください
アマーレは「愛する」という動詞なので、せめてそうしてくれれば、わたくしとしても「まあ文法的には間違ってないよね」と、納得できるので。ね。

だがしかし、です。
文法的につじつまを合わせたからといって、その内容はやっぱり間違っていると思うのですよ。わたくしは。
「イタリア人的生活」ってさ、そんなことないって。
イタリア人だってダイエットもするし、しかもイタリア人カラオケ大嫌いですよ。普通。
しかもその次の「愛」ってやつね、それもなあ・・
ここ、微妙なんですけど。
上記で、アモーレ、というのは「愛」という名詞。アマーレというのは「愛する」という動詞。と言いました。
でも多分、これ、間違ってるって言うかさ、「食べる」「歌う」と来て「愛する」だとすると、ちょっといきなり話が大きすぎる気がしませんか? 愛するって、一体何を・・みたいな。
しかし、です。
イタリア語でセックスをする、と言う動詞は「Fare l'amore」。ファーレ(Fare)は「する」という動詞なので、つまりは「愛をする」という言い方をするのです。つまり「愛する」に限りなく近いイタリア語は、そのままずばり「セックスをする」と言う意味なの!
で、この「イタリア人三原則」を考えたひとが何を思っていたのかはわかりませんが、その響き、その語呂、その内容から察するに、その三原則の最後は「愛する」じゃなく「セックスする」なんじゃないのか? と、わたくしとしては思うわけです。
食べて歌ってセックスすると人生楽しいのか。
そりゃ楽しいな。
でもそれはどっちかっていうと、何かと言えば外食し、カラオケになだれ込み、ラブホテル需要花盛りの日本人のほうが、その三原則に近いんじゃないかと思うんですがいかがな物でしょうか。
だってイタリア人、五月現在、夏に向けてのダイエットで、節食とジム活動で大わらわですよ。
4月にパスクワとイタリア語では言いますが、普通は復活祭と呼ばれるお祭りがあるのね。結構大きな祝祭で、会社はもちろんお休み、そしてお母さんの料理の腕の見せ所。
と言うわけで食べに食べたイタリア人、この復活祭のあと猛然とダイエットを始めるのです。
夏は海に行かないと死んでしまうイタリア人は、水着になる機会も多く、それはそれは何かの強迫観念のようにレッツ・ダイエット! マンジャーレどころではありませぬ。
そしてカンターレ。歌うって。イタリア人、そんなに歌いません。
そりゃさあ、道とかで小銭を入れる帽子を道において歌ってる人とか、レストランに殴りこみ的に歌いに来る流しの歌手とかはいるけどさ、それ「人生を楽しむために歌う」というのとは意味ちがくない??
普通のイタリア人はとても自意識過剰なので、ということはとても恥ずかしがりなので、突然歌ったりすることはまずありません、というよりむしろわたくしが時々ゴキゲンに歌いだすと、イタリア人はみんなびっくりします。「気でも狂ったか??」って感じで。
カラオケにいたっては、だから、イタリア人、嫌いなんだって。
誘ってもめったに行かないくらいなんだからさ。ね。
そしてセックスについては・・まあ、それはちょっと置いときますが、でも一つだけ言っておくと、イタリア人は日本人を「世界で一番エッチな国民」だと思っておりますよ。これを話すと長くなるから割愛しますが。

というわけで、イタリア人的生活のススメ、で食べる歌う愛する(もしくはセックスする)じゃ、全然説得力ないじゃん。

そこで。わたくしヤヨイが新イタリア人三原則を提言させていただきます!(何でそんなにテンション高いんだ。)
そのテレビタックルと言う番組では「低所得でも楽しめるイタリア人的生活のススメ」という特集だったので、
そして確かにイタリア人は日本人に比べたら(物価も安いけど)所得は低いので、ソレが前提ね。

Chiaccherare、Vestirsi Bene、Andare in Vacanza.
あら語呂が悪い(と言うか長くて覚えにくい)からイタリア語では浸透しないと思うので(浸透させたいのか?)日本語で。「おしゃべり、おしゃれ、おやすみ」

イタリア人、とにかくよくしゃべる。とにかくしゃべる。それはもうしゃべる。
もうそこに人がいる以上しゃべらないことは死ぬこと、ってくらいしゃべる。
仕事中でも何でもとにかくしゃべる。例えば美術館の監視員の人とか、監視員同士でしゃべるしゃべる。
私語厳禁などという言葉はイタリア語にはありません。
下手すると長蛇の列を前にして、窓口の係りの人たち同士でしゃべる。お客さんともしゃべる。
電車で同じコンパートメントに乗り合わせた他人同士もしゃべる。
南部に行けば行くほどこの傾向は強いですが、とにかくしゃべる。
たとえば、イタリア語がわからなかったとしても、どこかの外国でイタリア人を見かけたらすぐ分かるはず。
それはスパゲッティが口からはみ出しているからではなく、うるさいからです。
日本では、私語厳禁と言う言葉が結構染み付いているので、なかなか難しいこととは思いますが、しゃべるのって楽しいよ。
もちろん、他人に迷惑をかけない範囲、悪口とかそういう貧乏臭いおしゃべりはやめたほうがいいと思うけどさ。相手は友達でも、勇気があるなら他人でも、もちろん家族でもいいけど、しゃべってしゃべってしゃべり倒していると、多分人生のバリューを計る一つの目安は「どれだけ多くの人とおしゃべりしたか」ということでもありえると思うから、イタリア人風楽しい人生の第一歩のような気がします。お金もかからないし。
そしてしゃべりながら楽しみ、相手を楽しませる。ただ相手に迎合するんじゃなくて、自己を主張しつつ相手に合わせつつ。

それから、イタリア人は、決しておしゃれではありませんが、そしてこれも話せば長いので詳しくは言いませんが、センスはあまりいいと思わないけど、おばあちゃんが綺麗にお化粧して、イアリングつけて、とにかくきれいにしてるのとか、すごくいいと思うのね。
日本のおばあちゃんも綺麗にしている人も、もちろんいるんだけど、「おでかけ」のためじゃなく、日ごろから綺麗にして、自分を楽しませるっていう感じ。
ブランド物なんてなくてよくて、お金かけなくても「綺麗にしている」ことってできるでしょ。男の人でも女の人でも。
もちろんブランド物をもつことがその人にとっての「幸せ」なんだったら、それでいいんだけど、でもそんなにお金かけなくても「幸せなおしゃれ」をしているのがイタリア人だと思うんだよね。
屋台で買った服と蚤の市で値切ったサンダルでも、そしてそれが本人の狙う「はずした感じ」にとどまらず、マジで「はずしすぎてやや見苦しい」ことになっていたとしても、本人がそれで幸せならいいじゃん。
おしゃれ心、というそれそのものにお金はかからないし、それで幸せでいられるんだから。

それと、おやすみ。ヴァカンス。ヴァカンスというのはフランス語なので、イタリア語ではヴァカンツァ、ですが、その語源はいずれも「空っぽ」ってことだからね。
お休みだからといって必死こいて旅行したり血眼になって流行りのスポットにいかなくてもいいではないですか。
おやすみといったらおやすみ、お金なんてなくても自分のベッドを綺麗にメイクして、寝そべりながら読みかけの本を読んで、ビデオ見て、ご飯つくって、という休日を一週間続けられる余裕、というか。
一週間あったら、日本人のサガとしてついうっかり海外旅行に行かなくちゃ、と思っちゃったり、うちで浪費したら損しちゃう、と思ったりしがちだけど、そして無類の旅行好きのわたくしとしてはそれもわかるんですが、そして日本では一週間単位のお休みなんてめったに取れないからそうなっちゃうのも分かるんですが、でもやっぱりその一週間を「空白」に出来る心の余裕というのは欲しい気がする。実際それをするかどうか、というのは別としても。
定職についてないわたくしだから言えるのかもしれませんが。

総じて、イタリア人のキメ台詞は「Goditi la vita」。
あなたの人生を喜びなさい。という意味。
人生が楽しいことだけじゃないのなんてどこでもいっしょでしょ。日本でもイタリアでも。
でもその人生を、丸抱えで、楽しむと言うより、喜ぶ。与えられるその全てを、生きているこの時間の全てを、自分の手の中に入ってくる出来事や思いを味わって、喜ぶ。
お金があってもなくても、そういう心持ちさえあれば、どんな人生も喜び。

なんか説教臭いか? しかも、な、長い・・ 


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