イタリアン・タクシー

突然ですが、ザ・ナイト・オン・ザ・プラネットというジャームッシュ監督の映画、ご覧になったことがありますでしょうか。
たしか「ザ・ナイト〜」は邦題で、現代はNight On Earth、イタリア語の題名はTassisti di Notte.そのなもずばり「夜中のタクシー運転手達」
世界の5つの都市の深夜タクシーの話なのですが、その4話めの舞台が、ローマ。
そしてタクシー運転手を演じるのは(というかほぼ独演なんだけどさ)、ライフ・イズ・ビューティフルで爆発的ヒットをとばしたイタリアのチャップリン、ロベルト・ベニーニ。
これは、超面白い! 映画自体の出来も素晴らしいのですが、途中から、客である神父さまは会話不可能な状況になってしまうので、ただひたすら、ベニーニがしゃべり続けるのですが・・その口調が、ベニーニのローマ風フィレンツェ訛り、という不思議な方言とあいまって、秀逸。
イタリア人の独演とはかくも面白いものか。さすがはジム・ジャームッシュ! と、膝を打つ出来なので、未見の片は是非これを機会に。

しかしそのベニーニの怪演と、ローマの普通のタクシーの運転手さんのぶつぶつひとりごとは、あまり関係がありません。

何を言っているのか分からない、というアナタのために解説いたしましょう!
ローマでタクシーに乗ると、運転手さんは、客に話しかけるわけでもなく延々と、何かをつぶやいています。
話しかけられているのか? とおもって反応してしまったりしてもしらんぷり。
やっぱり日がな一日車を運転していれば独り言が癖になったりもするわよね・・というレベルでは片付けられないくらいに、そしてみんながみんな独り言。
イタリア人はある一定時間以上黙っていると死んでしまうのか? という疑問すら生まれてきます。

謎の答えは、と、いきなりばらしてしまいますが、無線なのです!!

ちょっとそのあたり、詳しく聞いたことが無いのでよくわかりませんが、日本でもタクシー配送センターというところから無線が入っているのが、聞き取れますよね。
どこどこにナニナニ様がお待ちです。みたいな。
で、日本の運転手さんたちはマイクみたいなものをとって、会話している・・んですよね?
イタリアでも、大筋そのまんまなんだろうけど、この無線が垂れ流しになっているのです。たぶん双方向で。
マイクみたいなものを口に近づけているのを見たことが無いから、あれはスイッチ入りっぱなしなんだろうなあ・・とおもうわけですが、どういう仕組みなのかは聞かないで。

で、無線の向こうにいる女性(女性が多い。)と、運転手さんは、何故か会話しています。
「おはよう」
「今日は遅い出勤だね」
「今日もがんばろう」
とかなんとか。さすがに世間話はしませんが、次に向かうべき場所とか、ごくナチュラルに会話している。
場合もあるし。

恐ろしいことに、携帯電話をかけている場合すらあるのです!!!

これは結構びびります。客乗せて、マニュアル車を運転している運転手さんが、携帯電話で友達とディナーの約束をしている!! そんなことが日本で許されるのでしょうか。というかそもそも道路交通法違反です。イタリアでも。
「今の客が最後だからさ、あと1時間くらいで家に着くよ。場所はどこにする? おう、わかったわかった。そういえばこの間はかみさんに失礼なこと言って悪かったな・・いや、オレが悪かったよ・・」と。延々と。
しかも運転、荒っぽいし。
いや、うまいんですけどね。運転は。イタリア人はみんな運転上手。
だけどさー。客乗せてんだからさ。タバコ吸うか、普通? とか。
ローマの中心部の道の名前くらい覚えておけよー! とか。
いくらわたくしが小娘だからって、一応客なんだからさ。敬語使ってよ。とか。
ラジオから流れる歌にあわせて歌いだすのはサービスのつもりか? とか。
前の車がちょっと運転が下手だからって、クラクションガンガン鳴らして悪態つくのはどんなものか。とか。
突っ込みどころ満載。

まあ、ローマという街はまったくもって車向きではないので(というか徒歩以外のいかなる交通手段も向かない街。それがローマ。とほほ。)、あのストレス溜まりそうな交通状況と、ストレス溜まりそうな細い道を一日中運転して回っている運転手さん達の苦労というのは押して知るべし。なのですがね。
それにしてもなあ・・。

なんて言ったら、誰もタクシーに乗りたくなくなってしまうかもしれませんが、しかし、地下鉄とバスに全く信用の置けないローマにおいては、一応、頼りになる交通手段でもありますので、その上手な使い方を。

まず、日本と違って、道で止めてはいけません。
タクシーはタクシー乗り場に並んでいるのに乗るか、電話で呼んできてもらうものです。
下手に流しとかを止めようとすると、白タクに乗ってしまったりするので、お気をつけあそばせ。
主要観光場所にはかならず、近くにタクシー乗り場があります。
よく、タクシーに乗るときには最初に目安の値段を確かめて、などとガイドブックに書いてありますが、「いくら?」ときいたところで「メーターに出る値段。」と言われてしまうのが関の山。
日本でもそうだと思うけど、たとえ遠回りをしているような気がしたところで、「これって遠回りじゃない?」と言っても、あんまり意味は無いんだよね、タクシーって。「混んでそうだからこっちを通った」といわれたら、それでおしまいなわけだし。
タクシー乗り場にいるタクシーは、基本的にはまともなタクシーのはずなので、そこは運を天に任せましょう。
多少遠回りでも、ローマ市内の移動ならたかが知れてるからさ。
いきなり森の中に連れ込まれて大金を脅し取られる、などのスリリングな展開は、まずないとおもうし。
そしてこれも日本人を悩ませるチップですが、基本的には切り上げて渡しておけばいいのでは。と、思います。ユーロになってからその辺も微妙ですが、100円単位(ユーロだったら1ユーロ単位くらい)で切り上げて渡してあげるのがスマートかと。
日本と違って、割増料金はメーター表示されず、最後に口頭で言われるので、ぼられている!と勘違いしていきり立たないように。
夜間や、スーツケースなどの大きな荷物は割り増しなのです。市内から空港まで行くときも、決められた超過料金があるな。

と、なんだか不安材料ばかりのローマタクシー事情。
しかし、先ほどもかきましたとおり、地下鉄とバスはさらに不安材料を抱えているので・・そして道に迷ってしまったら、四の五の言わずにタクシーに乗るのが一番、ともいえます。
とりあえず「ピアッツァ・ディ・スパーニャ・ペル・ファボーレ!」といえれば、ローマのどんな片隅に迷い込んでしまっていたとしても、スペイン広場まで生還できるわけだし。
下手にバスに乗って、さらに前人未到の地にたどりついてしまうよりは安心じゃない?

そして、更に最後にもうひとつ、不安材料を。
すべての交通手段にいえることですが、タクシー業界にもストライキが頻発します。
ある日、道に迷ってタクシー乗り場を探しても、どこにも一台もタクシーがなかったら。
それは多分、ストライキ中です。
何とかがんばって、他の交通手段でホテルまでたどり着いてください。健闘を祈ります。

っていうかローマ交通事情・・どうにかしてくれ。無理か。


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