秋・一の巻
秋方 平貞文
ムム、またしても鉄火打ち小町十番勝負! しかも、すでに勝敗の決した春秋論を性懲りもなく。まさに「勝つまですーるーの!」っていう、お姫マージャン状態。いいでしょう。受けて立ちましょう。強力な味方お二人を得て、もう勝った気になっているんですね?あの神君家康公は幼少の砌、河原合戦で無勢の将となり・・・ってそれはもういいから。

ええ、まず、サーバーダウンのデータ喪失をいいことに、都合よくお忘れになっていては困りますので前回の復習から。秋のよさは2点ありました。一つは何もない、無の美しさ。もう一つは耳の鋭敏による、音の美しさ。でしたね。新たな引き歌でそれを検証いたしまする。

夕されば野辺の秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里  
俊成
きりぎりす夜寒に秋のなるままによわるか声の遠ざかりゆく  
西行

ひょっとするといずれも部屋のなかで詠んでいるのではないでしょうか。目には何も映じていない。何もないんですが、この荒涼とした草深い野辺の美しさはどうでしょうか。見えない分、耳の神経はどんどん研ぎ澄まされてわずかなかそけさを聞き分ける。秋の美しさがその音の奥にしずかにしずかに漂っています。このような神韻縹渺とした作品を春に作ることができるでしょうか?いかがでしょう。賛助のお二方、今からでも遅くはありません。秋派に鞍替えされませんか(笑)。

秋方 和泉式部
貞文さま、参内が遅くなりまして申し訳ないです。
秋好和泉・・・頼りない助っ人が参りましたわ。ご一緒に秋の美を自慢させて下さいませ。
まずは一首。

松風の音だに秋はさびしきに衣うつなり玉川の里
 
俊頼

3対2。多勢に無勢でございますね??
ほほほ。右大臣殿、こうなっては俊頼さまのお歌で対抗させて頂きますわ(笑)。
松風の音、衣を打つ音、どちらも墨絵のような秋の風情にこそ透き通って響くのです。

きりぎりす夜寒に秋のなるままに弱るか声の遠ざかりゆく
 
西行

秋の夜寒。弱り、遠くなっていくきりぎりすの声・・・。
静寂の世界で、今にも消え果ててしまいそうな幽かなる存在に心を寄せるのは、秋ならでは。
長月の夜に、このようなしっとりした時間を持つのも悪くないものでございます。
春は心惑わすことが多すぎて、和泉は落ち着きませんの・・・・。
春・二の巻
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