春・四の巻
春方 小侍従

こまち殿(佐保姫)に捧げますわ。

ねむれる春ようらわかき
かたちをかくすことなかれ
たれこめてのみけふの日を
なべてのひとのすぐすうち
さめての春のすがたこそ
まだ夢のまの風情なれ

ねむげの春よさめよ春
さかしきひとのみざるまに
若紫の朝霞
かすみの袖をみにまとへ
はつねうれしきうぐひすの
鳥のしらべをうたへかし

ねむげの春よさめよ春
ふゆのこほりにむすぼれし
ふるきゆめぢをさめいでゝ
やなぎのいとのみだれがみ
うめのはなぐしさしそへて
びんのみだれをかきあげよ

ねむげの春よさめよ春
あゆめばたにの早わらびの
したもえいそぐ汝があしを
たかくもあげよあゆめ春
たえなるはるのいきを吹き
こぞめの梅の香にゝほへ


島崎藤村「若菜集」
春方 こまち
わが愛しき八重桜の小侍従の君。
美しいお歌をいただきまして、言葉もございません。
ここに歌われるような美しき春、のどかにして惜しみなくすべての始まりにして終わりの始まり、けれどそれをそのまま飲みこんで美しくありつづける春のように、咲き誇ろうではありませんか。ねえ、わたくしの春の女主人、小侍従の君。

ことしより春知りそむる桜花 ちるといふ事はならはざらなん

つらゆき

わたくしは、現代詩には不勉強でございますゆえ、こちらのお歌を、小侍従の君に。
今年の桜、小侍従殿とご一緒できる初めての桜にございます。
わたくしたちは、永遠に散りつづける桜なれば。散る事は惜しまず、けれど消して散り終えることなく、これからさき、永遠の花見を楽しませていただきございます・・ 
春方 大納言
皆様のご意見を見ておりますとすべてすばらしく春にも秋にも心惑い、翻弄されてしまいます。絶対春っしょ!と決め込みつつも貞文様、和泉様のおっしゃる事をみれば、ああ、秋っていいかも・・・と心揺れてしまいます。
自分は表現稚拙で頭も悪いのでうまく表現できないので皆様の美しい表現にただただ感服いたすばかりです。
秋にも心奪われてしまいそうになりましたが、矢張り自分は春が一番かと。

凍りゐし志賀の辛崎うちとけて さざ波よする春風ぞふく 

江帥

春は氷が解け水であふれ、殻より芽の出る季節。人もそれにつられてか衣を脱ぎ、色も重さも軽くなってゆく。心の殻も解けてゆき、水となって体を潤してくれる。そこへ暖かく豊潤・芳醇な風が舞い込めば、まさに爽快。暖かい日差しの中にていればやがて快い眠気がやってくる。そして甘美な夢へ引き込まれる。

春風の花を散らすと見る夢は さめても胸の騒ぐなりけり
西行
春の夜の夢ばかりなる手枕に かひなく立たむ名こそをしけれ 
周防内侍

夜はさわやかな昼とは違い、濃艶な世界へと変現。ゆったりとした交わりの中での汗ばみ。常に夢見つつ身の内より熱くなってゆくのを感じ、酔い、まどろむ。すべてがおぼろげで不確か。はっきりとした輪郭のない美しさ。黒髪に乗る桜の花びら。
拙くガーッと書いてしまいましたが、自分の思う春の好さをのせてみました。春には「優」と「艶」の美がうまく混じりあっているのだと。そう思っております。
はづかしき皆様、どうぞ青二才の戯言と思ってお流しください。
秋・三の巻へ
春秋論争トップへ