「な・・なんか、熱いなあ・・みんな・・
張り詰めた緊張を突き破る、いきなりフランクな吸血鬼の言葉。

「一体どういう団体なの? おとぼけ珍道中の最中かと思ったら、みんなやけに出来る人たちみたいだし・・」
「なにをいまさら!」
間合いを詰めながら、李朱柳が一喝する。

李朱柳の動きを邪魔しないよう、しかし李朱柳の一撃を避ける吸血鬼の退路を塞ぐかのように、絶妙な角度でフォローするヘル・シッド。
喧嘩ばかりのわりには、意外と息のあっている二人である。

「おいおい。物騒なことは、やめましょーね。」
吸血鬼が、気軽な口調のまま、気軽な感じで手を動かすと。

ピン、ピン!
李朱柳のレイピアが、ヘル・シッドの大剣が、いとも気軽にはじかれ、宙に浮かんだ。
いきなり丸腰の二人である。

「脅かしたのは悪かったけど、このくらいの趣味は、許してもらいたいなあ・・僕も日ごろから退屈してるんでね・・それに、奥さんにもたまにはいいとこをみせたいし」
「な・なにをいってるんだ!」
「いや、最近結婚しましね。奥さんはちょっとぞくぞくする美女だけど、君たちには見せてあげない。どっかそのへんの部屋からのぞいてると思うけど・・シィズゥ! 好きだよ!」
何処とも知れぬ部屋にいる奥方に向かって、投げキスをおくる吸血鬼。
「あ、そうそう。あのお嬢さんにかけた魅了も、といとくからね・・やきもちやかれたら、かなわないし。」

新婚ボケした吸血鬼???

突っ込みどころの難しい物体を前に、しかもあっさり武装解除させられ、どう反応していいかわからない李朱柳とヘル・シッド。
そもそもこの二人の剣術は、不思議と似ているのだが、小手先の技に頼らない、無邪気なまでの太刀筋が肝なのである。しかしこの難しい状況では、得意の無邪気パワーの発揮しようがない。

「申し遅れたけど、僕は吸血鬼のQdG。なんならCDQてよんでくれてもかまわないけどね。ちなみに意味は、芸術の泉、もしくは超ド級。趣味はオカルトもの鑑賞、作詞、作曲、絵画、FFS、SW。性格は・・自分にも他人にも優しい楽園育ち。ってとこで」
きーてない、きーてない。
と、李朱柳としては唖然としているわけだが。
「ぬぉぉおおおお! SWと申されますは、「星間渡り鳥」! あの伝説の叙事詩のことでござるか!! 拙者も、大好きなのでござる!!」
「なんと! SWをしってるって、君のような若い人が! びっくりするよなあ・・実は、この間も、星間渡り鳥慈善舞踏会っていうのがありましてね・・僕も参加して、余興として、お金持ちの女性達を魅了して大枚はたいて募金させたりしてきたところなんでsyよ! そうかー、知ってれば、君にも来てもらったんだけどなあ・・」
「っていうかわたくしも聞き漏らしませんでしたわよ、QdG様!! FSSとおっしゃいますのは、ファンタジック・ファイヤー・ストーリーですわね!! 数千年前から大魔術師によって書き連ねられ、今だ未完のあの耽美で熱いものがたり!! まさか語り合える相手におあいできるとは、この黒姫かのん、あきらめていた夢がかなう思いですわ!!」
「なんとまた、麗しきお嬢さんがFFSをご存知とは!! 世の中って深いなぁ・・」

・・いきなり盛り上がってるし。
てゆーかかのんは、せっかくakemiが確保した安全な部屋から、いきなりすたすた出てきている始末。

「ちょっと遅くなったけど、改めまして、ようこそ、わが館へ。そういえばまだ結婚パーティーに人を招待してなかったし・・きみ達、これも何かの縁でしょ。一晩、付き合ってくれますよね?」
まずは、トイレを貸していただきたいわ。
何故かえらそうにきっぱりと言い切ると、かのんはにっこりと、艶やかに微笑んだ。
「もちろん、今日一日は雨で移動できそうにありませんもの。ヤヨイちゃんだって、こんな雨の日にわたくしが動くとはおもってらっしゃらないはずだし・・ご招待、受けさせていただきますわ、QdG様♪」

をいをい。それでいいのか、大将。

皆のつっこみは軽く流され、その晩は「王国の焼肉奉行」の異名をとるakemiの手料理に、一同+吸血鬼新婚夫妻が膝を並べて舌鼓をうったことだけを付記しておく。


>はい。第二部終了。現実世界へはコチラ。