「なんてことなのー!!!!」
ピンクの豹柄の稲妻を背負って入ってきた、黒いドレスの女。
おそらく「悪の女王」という役柄があったとして、これ以上その役に似合う女はいないだろう、と思われる容姿に衣装である。
当然、露出度も高い。
稲妻は、彼女がオリジナルで作り出した「ピンク・パンサード・サンダー」という一種の黒魔術である。見た目は派手だが殺傷力はない。が、怖い
パラディソ王国黒魔術師の長、「黒姫」かのん。
姫将軍ヤヨイとは魂の双子を主張する無二の親友で、同時に王国のトラブル・コンビでもある。
ユニット名は「マッスル丸顔楽園ビューティー露出狂コンビ」。そんなことはどうでもいいが。

「く・・黒姫・・」
(をい・・ダスト。なんでいきなりこの人に話が伝わってんだよー。はなしがちがうじゃねぇかぁぁ・・)
よりいっそうややこしくなりそうな事態にナオヤはダストに耳打ちした。
(こう見えても黒魔術師団の長ですよ、かのん様は・・それなりの情報伝達網ももっていらっしゃるでしょうし、前線とは遠見の水晶とつながっているでしょう・・)

「陛下!」
びしぃぃぃっ!
こそこそささやきあう二人を遮って叫ぶと、黒姫かのんは深紅にそまった人差し指の爪を見せびらかすようにして、ナオヤに突きつける。
「ヤヨイちゃんが囚われたなんて・・まさかこのわたくしに、見過ごしにしろとはおっしゃいませんわよね?!」
ばりばりばり。
落ちるピンクの稲妻。くどいようだが殺傷力はないが、怖い
「おまかせください! パラディソ王国黒魔術師・黒姫の名において、必ずわたくしが姫将軍をお助けして見せますわ! ええ! 必ずや、その身の程知らずな三下の敵どもを井戸に落として、汚物をしこたま投げ込んで、大理石で蓋をして、その蓋の上でフラメンコでも踊ってやります!! お任せを!!」
避けようのない事態とはこういうものだろうか。
ヤヨイは、気まぐれではちゃめちゃではあるが、弟であるナオヤを溺愛している。ナオヤの頼みを聞かなかったことは、今までにはない。
が。
そのヤヨイでも、かのんが囚われたと知れば、どれほど制止しても単身敵地に乗り込んで、まあ当然途中にすったもんだがあるのは置いておいて、何とか助け出してくるだろう。
ということは、かのんを止めようなどと思っても、所詮果たせぬ夢である。
今はまだ、気分を出すためだけのピンクの稲妻にとどめているが、これでナオヤが彼女に反対でもしようものなら、殺傷力つきの稲妻がパラディソ宮廷におちることは間違いない。

男二人は、一瞬顔を見合わせると。
「わかった。黒姫を中心として、姫将軍救援隊を組織してくれ。委細はダストに任せた。俺は疲れた。休ませてくれ・・」
めんどくさいことを全部押し付けて王座から立ち上がった楽園育ちな若き国王を、ダストは深いお辞儀をして送り出しつつ、小さく呟いた。
「では・・わたしの休暇にもなることですし、厄介な御方たちをまとめて、遠足におくりだしてさしあげることにしましょうか・・」
それを耳にしたのは、王座のうしろ、豪華なつづれ織りのタペストリーの裏に潜んでいた「その者」だけであった。


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