二人の声に見送られたて、パルパイヨ亭の裏口から王宮への道をたどる李朱柳。
――その瞬間。
気配を感じて李朱柳はレイピアを腰から抜くと、その男のあご先数センチのところで剣先を止めた。
「何用だ。」
紫のマントの男が、李朱柳まで剣の一間合い、というところまで足音を忍ばせて近づいてきていたのである。
自らは剣に手もかけず、男はにやり、と、不敵に笑った。

「悪いが、話は聞かせてもらった」
李朱柳の眉根が釣り上がる。
神官戦士とはいえ、李朱柳は王宮でも一・二を争う剣の使い手である。
どこの馬の骨ともわからない相手に国家の機密を知られるよりは、この場で死んでもらうか、とレイピアを握る手に力を入れた、その時。
男は両手を降参するように挙げて、軽く振って見せた。
「拙者は怪しいものではござらん」
「嘘をつけ。その紫のマントのどこが一体怪しくないと・・
「これはわが地獄の騎士団の正装でござるぞ」
「だからそれが怪しいといっているんだ。」
なにやら不毛な会話である。
「とにかく!」
李朱柳は一歩引くと、正しい剣術の試合にのっとって、間合いをあけて剣を構えなおした。
「秘密を知られたからには、生きて返すわけにはいかない。地獄だかなんだか知らないが、騎士を名乗るなら決闘は受けて立ってもらうぞ」
「いやいや。だからー」
地獄の騎士を名乗る紫のマントの男(果てしなく怪しくなっていく描写)は、気の抜けた声を出した。
離れた位置からまじまじと見てみると、意外と若い・・どころか、十代じゃないかと思われる若さである。
「勝負をするつもりはござらん。ここはひとつ、拙者を信じて、姫将軍殿の救出に加えていただきたい。この愛剣ティソーナにかけて、必ずやお役に立たせていただこう」
「問答無用! 抜け!」

大体が、神官剣士というものは融通が利かないもの、ということになっているのである。
当然、相手が剣も抜かない状態で切りかかっていくようなことは出来ない。
決闘をしたいのに出来ない李朱柳と、別にしたくないけどまっとうな話し合いに持っていく術もない紫のマントの男の間でのにらみ合いが続くこと数刻。
「まったく、なにをしておるのじゃ、そなた達は」
関係のない人物の登場で、膠着状態は途切れた。


>>次へ。