第二部。 吸血鬼の城

どどどどどーん。
土砂降りの中、目の前に聳え立ついかにも怪しすぎる城を前に、一同は立ちすくんだ。

「こ・・これはあまりにも」
何とか最初に口を開いたのはakemi。
黒姫かのんの魔術をこめられた移動式魔法の一枚板「マジック・スノウボード」(何故スノウなのかは趣味の問題。)から今は降りて、ボードを小脇に抱えている。
「住人の趣味丸出しなセンスだ・・」
冷静に突っ込みを入れる李朱柳は、非の打ち所のない神官たるべく、銀の鎧に身を固め、白馬にまたがっている。
ちなみに、現在は大嵐の中。銀に雷が落ちるという話は聞かないが、なんとなく光物のそばにはよりたくない一同は、李朱柳からかなりはなれた位置にいたりする。
近くによると、雨水が鎧を打つ音がうるさいことだし。
「わらわが幼き頃には、こういったあんてぃいくな建物も数多かったものじゃが・・このようなところで見ることができようとは、稀なる偶然じゃ」
ずれまくった感想を述べる精霊の宮・かずこが騎馬するのは、純白の一角獣
未婚の王族、しかも精霊使いしか乗れない高貴なる獣は、かずこを雨から守るべく、大木の下に歩を進めている。
「ふふふふふ。地獄騎士団の血が騒ぐというもの。いざ、参りましょうぞ、おのおのがた!」
若さに押されて血気にはやり気味なヘル・シッドは、威風堂々たる黒馬に騎乗、愛剣ティソーナを背中に背負い、皮の鎧がいさましい。
「ってゆーか。皆々様。四の五の言わずに、城の中へ行くのよ! わたくし、もう・・」
珍しくも切羽詰った様子の黒姫かのんは、小型の竜に横乗りして宙に浮かんでいる。
相変わらず露出度の高いドレスから水の滴る様は見ているだけでも色っぽいが、ヒステリー爆発寸前のかのんにそんなことを言う勇気のあるものはいない。

そもそも、かずことかのんのトイレ探しからこのような羽目になっているのである。

アウトドア向きでない宮廷の貴婦人二人は(akemiはパラディソ宮廷でも屈指のアウトドア・レイディなのである。)、壁に囲まれた人工トイレを強く主張。町から遠く離れたこんなところでそんなものがあるか? という疑問を胸に無言で先を急いだ一同をあざ笑うように降りしきる雨、そして現れたこの怪しい城。

「さあ、参りましょう!」
ぴゅぴゅーん。
かのんのリトル・ドラゴンは、ほかの面々の返事を聞かずに城門に驀進中。

「く・黒姫! 先陣はこの李朱柳が」
「ちょっとちょっと、んなこと言ってる間に追いかけないと・・あたしは先行くよ! かずこの宮はたのんだからね、坊や達!」
しゅたっ。
華麗に空飛ぶボードに乗って、すべるようにかのんの後を追うakemi。

「ああああー! akemi殿、抜け駆けとは卑怯なり!!
つられて黒馬にむちを入れるヘル・シッド。
「はああああああああああああ。」
相変わらずも何故か、苦労人の地位をほしいままにしている李朱柳は、振り返ってかずこに目を注いだ。
かずこもまた、トイレを要求してはいるものの、かのんほどは切羽詰っていないらしい。
「では、我らも参ろうか、李朱柳」
「は。ではわたくしのマントを、雨よけにお使いください、宮」
「よい。春雨じゃ、濡れて帰ろう、と申すではないか。このまま濡れてまいろうぞ。たまには、心地よいものじゃ」
・・春じゃないし。心地よいっていうか、土砂降り・・
などとゆう突っ込みは、もちろんかずこには通じない。
意を決して李朱柳は、かずこの一角獣と、自分の白馬を並べて走らせた。

ほんとうに、こんな怪しい建物に入っていいのだろうか・・
などという普通の悩みは、この一向には通用しないのである。

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