薄暗いエントランスホールに、一同の足音が響く。
バイオ・ハザードもびっくりなオカルトチックな城の構造に、一瞬ひるんだのもつかの間。
「光の精霊よ、わらわの道筋を照らしておくれ」
かずこのつぶやく言葉に、小さな光の珠が産まれて、ぼんやりとあたりを照らした。

「だれもいないのかしら・・」
ものめずらしさに、トイレへの渇望をやや和らげたらしいかのんが辺りを見回す。
「あれはなんだ? なにか、文字が書いてある・・これは、古代ゲルマニア文字かな? 僕には読めないけど・・」
「をを、怪しげな洋館に古代文字とは、重要なヒントに違いない、とゲーマー魂が告げておりますぞ! どなたか古代ゲルマニア文字を解読される方は・・」
「あー。あたしには聞かないでよね。外国語は大の苦手なんだし」
三人の視線が、かのんとかずこに集まる。

「わらわはゲルマニアは無理じゃ。」
何故かこんなときもえらそうな精霊の宮。
ほほほほほほほほ。ここはわたくしの出番のようですわね、皆様! 実はわたくしの現在懇意にしている殿方がゲルマニア出身なのですわ! わたくしもすこぉし、心得がございましてよ!」
トイレはどーした。
という感じのハイテンションで、かのんがうれしそうに文字に近寄る。
多少苦労しながら、彼女が読み解いた文字は・・

夜を闊歩していたら 突然アナタがあらわれた
子供のような無邪気な笑顔 血走る視線が色っぽい
右手に包丁握り締め 真っ赤な左手差し出すの
これが恋ってヤツかしら?


「こ・これが謎ときと一体何の関係があるとゆーのか?」
常識人のakemiはまたも絶句。
「またれい! まだ続きがありそうでござる。ささ、かのん殿、続けて」

ああ両想い あなたはRipper!
愛しいブレイン 何を思うの?
血走る瞳は その瞳は
今にもわたしを 殺しそうvv


「以上。」
呆然と、かのんが言葉を終える。
「な・なんなんだこれわ。謎解きにしてももうちょっとこう、どうにか・・あたしには理解できん!」
「うぅむ・・これはなかなかクソゲーな謎解きでござるなあ・・あ、クソゲーと申しますのは、ファミコン時代によくあった、理不尽な謎解き満載で攻略本なしでは決して解けないゲームなどの総称で・・ファミコン時代には、拙者はまだ生まれておらなかったものだが」
誰もそんなことは聞いてないぞ、地獄騎士団長とやら。それより」
きらーん。
李朱柳の瞳が、理知的に輝く。
「謎t説きとしてはともかく、僕はこの文字から重要なヒントをてにいれたよ。多分、精霊の宮ならお分かりのことと思うけど・・」
「ふむ。言うてみよ、李朱柳」
「ここの住人は、ゲルマニア出身! そして切り裂きジャックファン。」

な・なるほどー!!!!
と、一瞬関心しかける一同。
しかし、本質的には何一つ解決していない。
まずはなんといってもトイレの場所が分らないことには、心の余裕も生まれないのである。

くくくくく・・・・・
「ちょっと李朱柳、自慢げに含み笑いなんてしないで頂戴。かずこの宮の御前ですわよ」
くくくくく・・・
「かのんさまこそ、いつもの高笑いのほうがまだましですよ、悪趣味な含み笑いなんて・・」
くくくくくく・・・・
「を? かずこの宮にしては低い声だと思ったら、え?? だれの声じゃ、こりゃ?」
フフフフフフフ・・・・
皆の衆! 注意されよ!!!!!!
ヘル・シッドの絶叫とともに、稲妻に照らされて浮かび上がる大きな影。

「ようこそ、お客人方。わたくしの城は、お気に召しましたかな?」

メインの階段の上にたたずむ、漆黒の衣装に身を包んだ男。
風もないのに、深紅に裏打ちされた黒地のマントが、はたはたと揺らめく。

近くに雷の落ちる音。
続く稲妻の閃光に、男の、常人よりも明らかに長く、とがった、そして真っ白な犬歯が煌いた。


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