☆第一話 はじめてのつり
同じ小学校の5年2組にナリボウという子がいた。
ナリボウはすこぶる頭が良くクラスでも常にトップだった。
ボクはナリボウとは家が近かったのでいつもいっしょに帰るのだが、
実はナリボウと帰るのがちょっといやだった。
帰る道すがら小さな小川が流れていて、そこにはドジョウやタニシ、カエルがいる。
ナリボウは小川のほとりにそーっと忍び寄るとエイヤと川の縁に手を突っ込んで15センチ位のトノサマガエルを捕まえるとボクに得意げに見せるのだ。
カエルが嫌いなボクは、
「あーそう。大きいね。へへへっ」
と日本人特有の愛想笑いをするのだが内心気色悪くてしょうがなかった。
そんなナリボウがある時つりに誘ってくれた。
つりなんて全然やった事が無いボクは、ナリボウに教えられるまま釣り道具屋にいき200円の竹竿としかけ、ビクを買った。
近くに最上公園といって江戸時代に城があった場所の堀がつり場だ。
大人から子供までみんな竿をだしている。
ボクらもそんな場所に陣取り大人に混じってつり始めた。
つりはじめて1、2分もするとナリボウの浮きがモゾモゾと動き始める。
すばやくあわせると5センチくらいのタナゴがついていた。
ナリボウは
「どーだどーだ」
といわんばかりに得意げな顔をしてニタリと笑った。
ボクは全然つれないのでだんだん飽きてきてジュースを買ってきたり堀の周りを意味も無くぶらぶらしているとナリボウが
「僕の竿でつってごらん」
と、自分の竿をボクに渡した。
するとみるまに浮きがピクピクと動き出した。
竿をあげると3センチくらいのアブラメ(くちぼそ)がつれていた。
ナリボウはニコニコ笑いながら
「よかったね」
と言ってくれた。
でも実はボクは知っていたんだ。ナリボウは自分の竿に魚がかかって
いたのを知っていて、ボクに竿を貸してくれたんだ。
内心ちょっと悔しくて200円の竹竿でがんばった。
帰りのボクのビクの中には2匹のアブラメが入っていた。