☆第十四話 まきあみパート2
8月24日午前8時
「伸しゃ〜ん、ごめん。あ〜やっとついた〜」
後輩のオオバが、昨夜仕事が終ってから一晩中車を駆って、ようやく新庄についた。
ボクの夏休みの帰省に合わせて、新庄まで釣りに来ることになっていたのだ。
本当はもっと早い時間につくはずが、仕事が遅く終ったためこんな時間になってしまった。
「もう、間に合わないッすかね?」
ボクは向かいに住むタカハシさんに聞いた。
「普通は朝早くから行って昼前には帰ってくるんだ。また今度にするべ。今日は祭りだしよ」
ボクの田舎、山形県新庄市は毎年8月24日から8月26日の間年に1回の夏祭りが行われる。
小さい頃からこの祭りが好きだったボクは、いまだにこの時期にあわせて帰省している。今日はこの祭りの初日でもあるわけだ。
ただ、せっかく徹夜で運転してきた後輩がかわいそうということもあって、そこをナンとか行けるようにタカハシさんと交渉し、午前中の数時間だけやることで話をつけた。
今回の獲物はアユだ。
以前にもこのコーナーで紹介した「まきあみ」をつかってとろうというのだ。
タカハシさんは網の他に釣りにおいてもプロ級で、川でも海でも何でもござれという、漁師風のスルドイ目を持った人だ。
ギロリと睨まれると一瞬すくんでしまう。
ボクラは隣りの鮭川村の、とある川にやってきた。
前日からの増水で本流は見込みが無いため支流に入る。
あみをしかけるのはタカハシさん。
おいらとオオバとボクのオヤジは魚の追いこみ係り兼、網にはまった魚をとる係りである。
ぐずついた天気の中、タカハシさんの第一投。
ボクラはすかさず魚を追いこむ。
キラリ、キラリ。
網から逃れようと、体をひねるアユの魚体が川底に光る。
石を放り投げたり、水面をわざと叩いたりしながら、アユをおいこむ。
すごい!
最初の一投で5,6匹のアユを取ることが出きた。
網からアユをはずすのは結構難しい。
網を水面に持ち上げてはずそうとすると、かかっているアユが逃げてしまうので、魚をはずすのは水面下でやらなければならない。
また、強引に魚を網からひきぬこうとすると、網を破ってしまうこともある。
オオバがかかった魚をとるのに四苦八苦していると、タカハシさんがやってきてイとも簡単にはずしてしまった。
さすが!ボクとオオバの目は点になってしまった。
午前中の数時間やっただけで、全部で50匹くらいはとれた。
釣りでアユがこんなに取れるなんてまずありえない。
まさに一網打尽だが、まだまだこの川は魚影が濃いようだ。
でもタカハシさんも短時間でこんなにとれたことは無いらしく、珍しく興奮しているようだ。
揚々引き上げ、取れた魚はさっそくシチリンで塩焼きにすることにした。
アユの塩焼きはうまい。
夏の暑い日に冷たいビールを飲みながら食べるアユの塩焼きは、最高の肴である。
ボクにオオバ、そしておいらの実家の連中で食べきれないほど食べた。
程なく遠雷が響き始める。
今日の祭り、雨が降ったらいやだなと思っていたら、ポツポツと雨が降り出した。