☆第二話 コサト激釣記
中学に入るとつりへの情熱は次第にエスカレートしていった。
寝ても覚めてもつり、つり、つり。
教科書やノートは魚の絵やつりの仕掛けでビッシリと埋っていた。
(椎名誠の「岳物語」読んだ方は分かると思いますが、主人公の岳少年のようなものです)
ある時、友人のシミズと山沿いの村にある沼にフナを釣りに行こうと計画した。
釣り道具一式を背負い、買ってもらったばかりのドロップハンドルの自転車で田舎道を釣り場に向かってひた走る。
途中、シミズのおばあちゃんの家で昼食用のおにぎりをもらう。
しぼったばかりだという、ヤギの乳を飲ませてもらった。
まだほんのりと温かいヤギの乳は、ほのぼのと田舎の味がした。
木立に囲まれた目的の沼に到着。
ここだ!というポイントをおさえ、早速仕掛け準備し第一投。
春の木漏れ日の中で鳥のさえずりが耳に心地いい。
だけどいつまでたっても、丸い小さな玉浮きはウンともスンとも言わない。
餌を替え、ポイントを変えても釣れるのは腹の赤いイモリだけ。
「ウーン」と粘ったすえ場所を変える事にした。
しばらくその界隈を自転車で走っていると沼と呼ぶにはあまりにも小さな池を発見した。
ロケーション的にはイマイチだし、そんな小さな池に魚がいるとは思わなかったので、無視して通り過ぎようとした瞬間水面に小さなモジリ(魚が体を反転する事によって起きた水の動き)を発見した
「おい、もしかしたら魚がいるかもしれないぜ」
と、いうことで試しに一投。
あっという間に浮きが消し込み、あがってきたのは小さな鯉だった。
鯉は鮒とちがい、口元にひげがあるのですぐに分かる。
勢いづいた僕とシミズは本格的に釣り始めた。
これほどの入れ食いは後にも先にも体験した事が無かった。
餌の周りに魚が集まっているのが水面を見ると分かってしまうくらいだ。
約1時間ほどで40匹くらいは釣れただろうか。
ビクがいっぱいになったので納竿した。
全部持って帰ってもしょうがないので、10匹ほど残しあとは全部池に返した。
晴れ晴れとした気分で2人で家路をたどる。
だけど、ちょっとしたわだかまりがあった。
それは「なぜ、あんな池で小鯉があんなに釣れたか」という事だ。
「もしかするとあそこは鯉の養殖池ではなかったか」
と、シミズに言ったが
「いーのいーの」
と相手にしないのでそれ以上考えない事にした。
けれど、その後二度その池を訪れようとしたが、なぜかその池を見つける事できなかった。
埋め立てられたのかな、と思ったが未だに真相は分からない。
僕たちはあの小さな小鯉達を「コサト」と呼んだ。
小鯉という漢字がコサトと読めるからだ。
あれからもう20年くらいたつけれど、当時の日記やノートに
コサトを釣ったときの感激と興奮が綴られている。
また、あの村へ行って今度こそ池を見つけよう・・・