☆第四話 鰍(カジカ)の夏
「おおーっ。いる、いる」
水中めがねでのぞき込んだ川の中には、石の上にへばりついた鰍が
「おいら、餌が流れてくんのを待ってんだかんな。決してボーッとしてんじゃないんだかんな」
とでも言いたそうにボーッと餌が流れてくるのをまっている。
ぼくは、サッソク用意していた仕掛けをとりだした。
この仕掛けは非常にシンプルなものだ。
竹竿の穂先だけを使い、その先にハリス15センチ、ソデバリ5号にチモトにかみつぶしの重りをつけただけだ。
餌は、ミミズを持参。
「もっともこの川にすんでいる川虫なら最高なんだけどねぇ。餌のもちが悪くてねぇ。捕まえている間にミミズの餌なら2,3匹は釣れるからねぇ。」
と、ねぇねぇ状態で独り言を繰り返しながら餌をつける。
竿先ごと川の中に突っ込み、餌を待っている鰍の目の前に
「ほら、餌だぞ。食わないとソンをするぞ。」
と、ミミズをブラブラさせる。するとさすがに、ボーッとしていたカジカ君も
「およよ!?餌だぁ。待ってたぞー。」
といいながら「パク!」。はい、イッチョウアガリ、という具合で釣れるのです。
もともと鰍という魚はボーっとした魚で、水中めがねで見られても、「なんだ、おい。文句あっか」といいながら、きょろりんと見返すくらいでそそくさと逃げ出すことがない魚だ。
魚体はハゼに似ている。
さすがに手でつかもうとすれば逃げてしまうが、夜になると石の上で寝込んでしまいヤスで簡単に突けてしまう。
一晩で簡単に一束(100匹)や二束は突けたという。
おかげで一時期は鰍が全滅するかと思われたが、行政が鰍の夜突きを禁止したおかげで全滅は免れたらしい。
なぜ、そんなにしてまで鰍を捕まえるのかというと実はこの魚、非常にうまいのである。
「東京の料亭に売りに出せば1匹500円で買ってくれるぞ」
と、近所の焼き鳥やの親父がいっていた。真偽のほどは分からないが、確かに良い値で取り引きされたらしい。
では、なぜ昼の鰍をとるためにわざわざ川に入って釣るかというと、このボーッとした魚は目の前にきた餌しか食べないようである。(あくまでも僕の経験上での話である)
ふつうに、川のほとりに立ち込んで釣ってもあまり釣れない。
そんなことなら、「まぁ夏であることだし海パンをはいて川に潜ったら気持ちいいや」的発想で考えた釣りが前述の釣りである。
題して「伸的馬鹿鰍必釣術、夏スペシャル」
アブに刺されなければ川でのレジャーとしては最高のおすすめです。
バーベキューの合間にぜひどうぞ。(ごみは必ず持ち帰り、焚き火は消火を確認しましょう)
都会での会社生活をしていると子供の頃にやった鰍釣りが妙に恋しくなる。
僕はお盆が終わった後田舎で行われる祭り(新庄祭り)を見るために毎年帰省する。
その度に鰍釣りをやりたいなぁと思うのだが、なかなか時間がとれない。
かえる道すがら「あぁ今年もボーッとした鰍の顔をみれずじまいだったなぁ」と後悔する。
今年はぜひ行きたいものだ。
田舎はお盆が終わると夏が終わってしまう。
まぁいいや。ヤツラは絶対待っていてくれる。
だってカジカは魚ヘンに秋と書くのだから・・・