Heroes And Villains
Brian Wilson / Van Dyke Parks
(3:38 / 2:56)

<session date>
 ・1966/05/11 (track - 2:45)
 ・1966/10/20 (track - 2:25)
 ・1966/10/27 (track - 1:25)
 ・1966/11/04 (demo)
 ・1966/12/13 (vocal)
 ・1966/12/19 (track)
 ・1966/12/22 (vocal)
 ・1966/12/27 (Brian's vocal)
 ・1966/12/28 (Brian's vocal)
 ・1967/01/03 (vocal (and track?))
 ・1967/01/05 (Part2 - track)
 ・1967/01/06 (Part2 - track)
 ・1967/01/20 (track and vocal)
 ・1967/01/27 (In The Cantina - vocal and track)
 ・1967/01/30 (mix)
 ・1967/01/31 (vocal)
 ・1967/02/03 (vocal)
 ・1967/02/07 (track)
 ・1967/02/09 (vocal)
 ・1967/02/10 (vocal and mix)
 ・1967/02/15 (track)
 ・1967/02/18 (track)
 ・1967/02/20 (vocal)
 ・1967/02/21 (vocal)
 ・1967/02/24 (vocal)
 ・1967/02/26 (vocal)
 ・1967/02/27 (track)
 ・1967/02/28 (Part2 - track)
 ・1967/03/01 (Part2 - track)
 ・1967/03/02 (Part2 - track)
 ・1967/05/11
 ・1967/06/12 (SINGLE version)
 ・1967/06/13 (SINGLE version)
 ・1967/06/14 (SINGLE version)

 レコーディング期間中、ブライアンが最も時間と心血を注いだ、 アルバムの中心ナンバーとなったであろう 『SMILE』 収録予定曲。 『SMILE』 用の曲として、 ブライアンとヴァン・ダイク・パークスが初めて共作した曲といわれている。
 アルバム・コンセプトの一つ 「昔のアメリカ西部へのタイム・スリップ」 に基づいたナンバーで、 多くの派生曲を生みながら、三十回にも及ぶセッションが行われ無数の断片が録音された。

 当初 『SMILE』 からのファースト・シングルと考えられ、 『SMILE』 のアルバム・カヴァーと共にシングル用のスリーヴも作成され、 1966年12月〜67年 1月のリリースを予定していたが、 ブライアンは曲をまとめることが出来ず、アルバムともども延期される。 2月には 「Cantina」 ヴァージョンと呼ばれるシングル用のヴァージョンが一つの完成を見たが、 結局発表されず、さらにセッションは続けられた。 一説には五分以上にも及ぶ(七分とも十二分ともいわれる)ヴァージョンも完成しており、 いまだ未発見だという。
 『SMILEY SMILE』 期になってから、 『SMILE』 期の録音をも一部使用したヴァージョンが急遽制作され、 シングルとして 7月に発売。 『SMILEY SMILE』 にも収録された。

 1990年 『SMILEY SMILE / WILD HONEY』 2on1 のボーナス・トラックにて、 「Cantina」 ヴァージョンが公式に陽の目を見る。 また、1993年 『GOOD VIBRATIONS』 ボックスには、 数々の未発表セクションを Mark Linett が編集した六分半に及ぶ 「sections」 が登場。 トラックの一部も収められる。
 1998年 『ENDLESS HARMONY』 には、 ブライアンがピアノを弾きながら歌うデモが収録され、 「Barnyard」 「I'm In Great Shape」 の歌詞を含んでいたことから話題となった。

 「H&V」 の最初のセッションが行われたのは1966年 5月11日で、 まだ 『PET SOUNDS』 の発売前であり、 「Good Vibrations」 レコーディングの真っ最中だった。 この日14人のプレイヤーを招いてセッションが行われている。
 二回目のセッションはそれから五ヶ月も後の10月20日に行われており、 「Good Vibrations」 を優先したためか、曲の構想が固まっていなかったためだと思われる。 10月に行われたディナーパーティーで、 ブライアンが披露した 『SMILE』 のアセテート盤の中には 「H&V」 も登場しており、 招待客に対し 「この曲は三分間の音楽的なコメディーになるでしょう」 と説明している。
 11月 4日に録られたデモの中で、ブライアンはまだ未完成のパートがあると言っていることから、 全体像は見えておらず、レコーディングしながらの試行錯誤を繰り返していたものと思われる。 12月に入ってからは、 ツアーから戻ってきたビーチ・ボーイズのメンバーによるヴォーカル・セッションが行われている。 ブートで一部聴くことの出来る執拗なヴォーカル・セッションの様子はすさまじく、 その成果もあって、ビーチ・ボーイズ史上でも類を見ない高度なコーラス・ワークがなされている。

 1967年 1月に入ると、 「Part2」 と称したトラックのセッションが行われ、それにヴォーカルを加えた上で、 1月30日にはミックスが行われ現在の 「Cantina」 とよばれる一つのヴァージョンが完成された。 2月10日には、バックアップ用のマスターまで作成されている。 (シングルの発売が保留されたままだったため、 この時期ブライアンは他の曲をよりも 「H&V」 を優先してレコーディングしたものと思われる。)
 しかしこれに満足できなかったのか、その五日後から新しいトラックの録音を開始。 2月末からは再び 「Part2」 としてレコーディングが行われたが、 その時点でそれ以上のセッションは行われなかった。

 三ヵ月後、『SMILEY SMILE』期になってから再びセッションが行われ、 急遽 「H&V」 はシングル用にまとめられた。 ブライアンは調子が悪くドラッグの影響もあり、 床に寝転がったままヴォーカルをレコーディングしたといわれている。 そこで完成されたのは当初構想していた 「強烈な、ジェット・コースターのような展開」 とはほど遠く、 「Good Vibrations」 の続編としても時期を逃し、 曲そのものは特別だと思いながらもブライアンはひどく失望したという。 ビデオ 『ENDLESS HARMONY』 の中でマイク・ラヴは、 「H&V」 について 「ブライアンの最後のダイナミズムだった」 と語っている。

 セッション記録に残されている 「Part2」 という表記や、 シングル用スリーヴが両面とも 「H&V」 の表記であること等から、 「H&V」 が 「Part1」 「Part2」 としてシングル両面に分けて収録され発表されるはずだったのではないか、 という説が長い間考えられてきた。
 しかし、1999年、 Brad Elliot の 「No Two Ways About It」 という文書で、 その推測が誤りだったことが指摘されている。 詳細はここでは省略するが、キャピトルに残された記録には、 両面に分けて発売するといった証拠は一切残されおらず、 ミックスダウンされた 「Part2」 用のテープも倉庫には存在していないそうである。 シングルのスリーヴについては、 当時のシングルの表記として両面に表題曲を乗せるのは不自然なことではなく ( 「Good Vibrations」 も両面表記されているが、 かといって 「GV」 が二つに分けられて発表されたわけではない)、 確かにブライアンは 「H&V」 のB面に何を入れるかかなり迷っていたようではあるが、 アルバム・カヴァー同様キャピトルが先行してスリーヴを作成したこともあり、 両面にタイトルが記載されたようである。 また、セッション中の 「Part2」 については、 「Cabin Essence」 のように 「Home On The Range」 「Who Ran The Iron Horse」 など他の曲名で録音され後で一つの曲にまとめられたケースもあり、 「Surf's Up (1st movement)」 や 「Tones (Part 3)」 同様、 セクションごとに分けたレコーディングのワーキング・タイトルに過ぎないものといわれている。

 「H&V」 は 『SMILE』 関連の曲を多く派生したことでも知られる。
 「Do You Like Worms」 に登場する 「Bicycle Rider」 のテーマは、 もともとは 「H&V Theme」 とされていたもので、 「H&V」セッション中にもレコーディングされていたようである。 『GV BOX』 収録の 「sections」 では、両曲の深い関連を具に聴くことが出来る。
 『ENDLESS HARMONY』 に収録のデモの中では、 「Barnyard」 「I'm In Great Shape」 が 「H&V」 の未完成セクションとされている。 のち 「Barnyard」 は短いトラックが録られ、 「I'm In Great Shape」 は謎に包まれてはいるがトラックリストには独立して記載されているため、 単独の曲として考えられるようになったとも思われる。
 その他セッション中には、 のち 「Vega-Tables」 の一部となる 「Mama Says」 の原型、 『SMILEY SMILE』 に収録されることになる 「With Me Tonight」 の原型 ( 「You're With Me Tonight」)、 さらには 「Whistle In」 にも似た 「dum dum dum...」 というコーラスも録られている。 ブートで長い間 「Mrs. O'Leary's Cow」 のイントロとして考えられてきた、 ホイッスルなどによるテーマも、 実は 「H&V (Intro)」 としてレコーディングされたものだと後に判明した。

 ブライアンの想定していた最終形がどのようなものであったのかはわからないが、 おそらくシングル・ヴァージョンや 「Cantina」 ヴァージョンを凌駕する構成の、 「Good Vibrations」 や 「Cabin Essence」 のような 「ポケット・シンフォニー」 になったのではないかと推測される。 『SMILE』 でコンセプトとして考えられていた 「音楽的なコメディ」 「タイム・スリップ」 などを表現しようと、 音響効果などを試行しながらセッションが進められ、多くの断片が残されたものと思われる。 それらは結局まとめられず、断片でしか残されていないが、 ビーチ・ボーイズの高度なコーラス・ワークも含め斬新で美しく楽しいものがたくさんあり、 ブライアンの創造力が頂点にあったことをうかがわせる。

 『SMILE 2004』 には、 シングル・ヴァージョンを基調としながらも、間に 「cantina」 パートを含み、 「H&V (sections)」 で聴くことの出来た未使用パート、 及び未発表パートを実に巧みにつなぎあわせ、五分弱の曲に仕上げられて収録された。 アルバム冒頭 「Our Prayer」 からの導入部となる 「Gee」 もまた 「H&V」 のパートから成るもので、 いずれも既存のパートを使用していながら、 そのめまぐるしくも見事な展開はまさに 「ジェットコースターのような」 「過去へのタイム・トリップ」 的な構成となっている。

<公式音源>


 * 『SMILEY SMILE』
 * 『SMILEY SMILE / WILD HONEY』 2on1、
   『GOOD VIBRATIONS』 Box disc 2 に cantina version 収録
 * 『GOOD VIBRATIONS』 Box disc 2 に sections 収録
 * 『GOOD VIBRATIONS』 Box disc 5 に track (一部)収録
 * 『ENDLESS HARMONY』 に demo 収録
 * 『HAWTHORNE,CA』 disc 2 に stereo single version 収録
 * 『IN CONCERT』 に1972年頃のライヴ収録
 * 『CONCERT/LIVE IN LONDON』 2on1 に1967年のライヴ収録
 * 『ENDLESS HARMONY』 に1972年のライヴ収録
 * 『LIVE AT KNEBWORTH』 に1980年のライヴ収録

 * 『SMILE 2004』 に収録

<非公式音源>


 * Vigotone、SOT 他、各種ブートレグに収録
 * SOT vol.17 『SMILE SESSIONS』 disc 1 にセッション収録
 * 『HEROES AND VILLAINS SESSIONS PARTS 1&2』 に
   セッション収録
 * 『HEROES AND VIBRATIONS』 にセッション収録

<関連項目>
 → Barnyard
 → Bicycle Rider
 → Do You Like Worms
 → Heroes And Villains (Intro)
 → I'm In Great Shape
 → Mama Says
 → With Me Tonight
 → You Are My Sunshine
 → You're Welcome