I'm In Great Shape
Brian Wilson / Van Dyke Parks

<session date>
 ・1966/10/17 (vocal)
 ・1966/10/27 (track as Heroes And Villains)
 ・1966/11/04 (Heroes And Villains - demo)

 『SMILE』 史上でも、特に謎に包まれた曲。 ブライアンの書いたトラックリストに名前が挙げられていることから、 『SMILE』 収録予定曲と考えられるが、公式発表が無く、 数多くのブートレグにも一切収録されなかったため、長い間曲の正体がつかめないままだった。
 1998年、 『ENDLESS HARMONY』 に収録された 「Heroes And Villains (demo)」 の中で、 「I'm In Great Shape」 というフレーズが登場したことで、 初めてその一部が明かされることとなり、ファンの間で波紋を呼んだ。

 これまでこの曲は、 例えば 「Vega-Tables」 の曲の中の一部分 ( 「Mama Says」 ) を指すと考えられたり、 「The Woodshop Song (I Wanna Be Around / Friday Night)」 のことだと考えられたりと、 数々のブートレグにおいて他の曲にあてはめてタイトルがつけられ、収録されることが多かった。 しかし、公式に 「H&V (demo)」 の一部として収録されたことから、 もともとは 「H&V」 の一セクションであり、 その後ブライアンが独立した曲として想定していたのではないかと推測されることとなった。

 「I'm In Great Shape」 の最初のセッション (ヴォーカル) が行われたのが1966年10月17日、 第二セッション (「H&V」 の一部としてトラック) が行われたのが10月27日。 『ENDLESS HARMONY』 のデモが録られたのが11月 4日。 この時点では 「I'm In Great Shape」 はまだ曲は途上にあった。
 ブライアンがキャピトルにトラックリストを提出したのは12月中旬と考えられるので、 その間に 「I'm In Great Shape」 は、一つの独立した曲として、 構想だけでもある程度の発展はしていたものと推測される。

 ブートレグでは何度か誤って 「The Woodshop Song (I Wanna Be Around / Friday Night)」 と名づけられた 「I'm In Great Shape」 だが、そこには根拠が無いわけでもなく、 実は二つは同じ曲なのだと考える向きもある。そこにはいくつかの混乱した事実がある。

 『SMILE』 セッションに参加したベース・プレイヤーのキャロル・ケイは、 「I'm In Great Shape」 セッション中に、大工の効果音をレコーディングし、 ブライアンが、大工音は 「火の後の再建」 を意味していると説明していた、 と語ったことがある。
 もしこの証言が正しいとすれば、 実際に大工音の使われている 「I Wanna Be Around / Friday Night」 こそが、 「I'm In Great Shape」 であり、 しかもそれは 「The Elements」 の一部になっていた可能性が示唆される。 もともと 「H&V」 の一部だった曲が他の曲に流用される例は他にも見受けられるので ( 「Bicycle Rider」 「Mama Says」 など)、ありえないことではない。 しかしトラックリストに 「The Elements」 と 「I'm In Great Shape」 は別個の曲として載せられていることから、 セッション中に意図していたとしても、後には別のものと考えるようになったのかもしれない。

 その証言以上に問題を複雑にしているのが、 「I'm In Great Shape」 のセッションが行われたとされ11月29日に残された記録で、 様々な解釈を呼び混乱を深めている元凶の一つともいえる。 11月29日のセッション・シートには、 「Friday Night (I'm in great shape)」 と記されているのである。 また、この日録られたインスト曲のタイムは 1:38 だったそうであり、 「I Wanna Be Around / Friday Night」 のタイムとほぼ一致する。 これが何を意味するのか? 二つはやはり同じ曲なのだろうか?

 ここでさらに注意しなければならないのは、 11月29日のセッションのテープ・ボックスのラベルには、 「I'm In Great Shape」 の記載は無く、 「Jazz」 「I Wanna Be Around」 「Friday Night」 の三曲の記載があるのみである。 もしテープ・ボックスの記載の方が正しいとすれば、 この日 「I'm In Great Shape」 のセッションは行われていないことになる。 とすると、セッション・シートの 「Friday Night (I'm in great shape)」 という記載は誤りということになり、 「I'm In Great Shape」 と 「I Wanna Be Around / Friday Night」 は別の曲だということになる。 ( Brad Elliot は、 「Friday Night (I wanna be around)」 と書くべきところを、 誤って 「Friday Night (I'm in great shape)」 と書いてしまったのではないか、 と推測している。)
 前述のキャロル・ケイの発言も、 彼女がこの日の 「I Wanna Be Around」 のセッションに参加していることから、 「I'm In Great Shape」 と 「I Wanna Be Around」 を取り違えていたとするなら、つじつまが合うことになる。 (前日の11月28日には、 「Mrs. O'Leary's Cow」 のセッションが行われていることから、 その翌日という意味でブライアンは 「火の後の再建」 と言ったのだろうか?)

 『ENDLESS HARMONY』 以降、 「I'm In Great Shape」 は 「H&V」 の完成しなかったセクションの一つだと考えられることが多い。 「H&V(Demo)」 での「I'm In Great Shape」は 4分の 3拍子で演奏されていることから、 数多く残されている 「H&V」 の断片の中でも、 同じく 4分の 3拍子で演奏される 「In The Cantina」 セクションとも関連性を見る説もある。 (他のパートはほとんど全てが 4分の 4拍子であるため。)

 『ENDLESS HARMONY』 『HAWTHORNE,CA』 の編者である Alan Boyd は、 そのテープ・リサーチの過程で 「I'm In Great Shape」 のトラックを聴いた、と発言している。 それによると、テープ・ボックスには 「I'm In Great Shape」 とともに 「Brian And Van Dyke Songs」 と書かれ、 ピアノとベースに乗せてサックスが 『ENDLESS HARMONY』 の 「H&V (demo)」 の中間部、 「I'm In Great Shape」 のメロディーを演奏するごくごく短いテイクが三テイク存在するという。 音の感触からおそらく試行的なもので、 それらのテイクの最後は、どれも 「H&V」 の Cantina ヴァージョンの後半のように、 音が割れるようなリヴァーブがかけられているそうである。
 長い間謎とされていた 「I'm In Great Shape」 であるが、 近年、ネット上でこの音源が流出し、上記のとおりの三テイクの存在が確認されるようになった。 しかし、セッションが行われたという 「ヴォーカル」 についてはいまだ未発掘である。

 『SMILE 2004』 には、 「I Wanna Be Around / Workshop」 とのメドレーで収録された。 冒頭、 4分の 3拍子という点で共通項のある 「H&V」 の cantina パートがアレンジされたフレーズで幕を開け、 『EH』 収録の 「H&V (demo)」 で明らかになった歌詞がシンプルな演奏に載せて歌われる。 その後、同じフレーズをサックスが追いかけるように演奏し、 強いリヴァーブがかけられ、次曲へとつなげられている。 実質一分にも満たないもので、 「H&V (demo)」 と上記の未発表テープからのわずかな発展しか見られず、 新発見・新解釈といったものもないため、謎が明らかになったとは云いがたい。
 元来 「H&V」 からの派生曲とされているにも関わらず、 収録されたのは 「H&V」 とは異なる楽章のオープニングとなっている。


<公式音源>


 * なし
 * 『ENDLESS HARMONY』 に 「Heroes And Villains(demo)」 の一部として demo version を収録
 * 『SMILE 2004』 に収録

<関連項目>
 → The Elements
 → Heroes And Villains
 → Friday Night
 → I Wanna Be Around
 → Mama Says
 → Workshop