Mrs. O'Leary's Cow
Brian Wilson
(2:28)

<session date>
 ・1966/11/28 (track - 2:50)
 ・1966/12/05 (track (and vocal??))

 『SMILE』 収録予定曲 「The Elements」 中、 「火」 を構成しただろうと唯一正確に判明している曲で、 『SMILE』 中最も有名で伝説化されている曲。 (セッション中やセッション記録では 「The Elements (Fire)」 とのみ呼ばれ、 「Mrs. O'Leary's Cow」 というタイトルは実際のところ残されていないが、 ブライアンが 「Mrs. O'Leary's Cow」 と呼ぼう、と発言したといわれているので、 このサイトではあえてこちらの名称を使用します。 「Mrs. O'Leary's Cow」 とは1871年のシカゴ大火の原因となった、 オ・リアリー夫人の牛のエピソードから取られているそう。)
 ブライアンはこのテープを破棄・または封印したと述べていたが、 いくつかのブートで登場し、存在が確認された。 1985年に映画 (のちビデオ・LD化) 『AN AMERICAN BAND』 の中で初登場し、 現在も公式発表はそれのみである。

 1966年11月28日のセッション日、 ブライアンは集まったセッションプレイヤー全員に消防の帽子をかぶらせ、 スタジオ内にはバケツに入れた木を燃やし、 火を表現したおどろおどろしく不気味な 「Mrs. O'Leary's Cow」 をレコーディングした。 数時間後、完成テイクを聴いたブライアンは、 「人々がこのテイクを聴いたら、怯えるかもしれない」 と思ったという。 その後、スタジオの通りの向かいのビルが火事で全焼し、 セッション以降ロス市内で火事が異常に多発していると知ったブライアンは、 「Mrs. O'Leary's Cow」 がマイナスの悪いヴァイブレーションを発しているに違いないと考え、 テープを倉庫に封印したとされている。 これが、有名な 「Fire」 伝説のあらすじである。

 この日の様子はいくつかの写真で残されており、 消防の帽子をかぶったブライアンなどが写っている。
 1999年の 『SOT SMILE SESSIONS』 には、この日のものと思われるセッションが収録されているが、 それを聴くかぎりではブライアンは他のセッション同様に、 ミュージシャンたちに的確な指示を出しており、 それまで音の悪かったブートに収録されてきた「火の燃える音」も、 紙か何かをくしゃくしゃと丸めるだけの音にしか聴こえない。 果たして実際のところどれほど 「異常な」 セッションだったのかは想像できないが、 この頃、映画 『セカンズ』 を観た後で 「映画の中からフィル・スペクターに話しかけられた」 と怯えるなど、 ブライアンのパラノイアがひどかったことは事実で、 このセッションの前後にはヴァン・ダイク・パークスも一度 『SMILE』 周辺から去っている。

 このセッションのせいなのか、それとも単に出来が悪いからなのか、 「Mrs. O'Leary's Cow」 は公式には 『AN AMERICAN BAND』 の中にしか登場しない。
 この中で、ビーチ・ボーイズのメンバーも消防の帽子をかぶり登場している映像があるが、 実はこの映像は 「Mrs. O'Leary's Cow」 時のものではなく、 「Good Vibrations」 時のものだそうであり、 消防車に乗って走るプロモーション・ビデオも、 「GV」 のためのものだったそうである。 「GV」 プロモ撮影時にすでに 「Mrs. O'Leary's Cow」 についての着想があり、 消防の帽子を使用したのかもしれない。
 また、 『AN AMERICAN BAND』 で流れる 「Mrs. O'Leary's Cow」 には、 セッションでも聴くことの出来るコーダ部が編集されくっついているが、 もともとこの曲の使用じたいがブライアンの許可無く行われたそうで、 編集も映画のプロデューサーによるものだそうであり、本来の形ではないと考えられる。
 また、多くのブートでは 「Heroes And Villains (Intro)」 がイントロ部にくっついた形で収録されているが、 現在これは 「H&V」 の断片であり、 「Fire」 に関係ないといわれている。

 『SMILEY SMILE』 収録の 「Fall Breaks And Back To Winter」 と、 この曲とのベースラインが似ていることから、 「Mrs. O'Leary's Cow」 を原型としているのでは、と両曲の関連を見る説もある。

 『SMILE 2004』 には、正式に 「Mrs. O'Leary's Cow」 というタイトルで、 単独の曲として収録された。
 「H&V (Intro)」 とされたイントロ部分は、 結果的に、ブートレグなどで聴かれるように付随したままの形になっており、 ブートレグからのフィードバックを感じさせる点である。 また、一部ブートレグで聴くことの出来たような、コーダ部分も付け加えられている。 炎の効果音は加えられていない。
 さらに、類似が指摘されてきた 「Fall Breaks And Back To Winter」 から引用されたコーラスが付加されており、ここにも時間軸の逆輸入的解釈が見られる。
 収められた楽章としては 「The Elements」 関連とされた楽曲がまとめられた楽章ではあるが、 直接的にこの曲やその他が 「The Elements」 であるとは明示されなかった。
 2005年にはこの曲で 「Best Rock Instrumental Performance」 部門にて、 グラミー賞を受賞するという快挙を成し遂げ、この曲の 「伝説」 に新たな一章を書き加えている。


<公式音源>


 * 『AN AMERICAN BAND』 ビデオ/DVD
 * 『SMILE 2004』 に収録

<非公式音源>


 * Vigotone、SOT 他、各種ブートレグに収録
 * SOT vo.17 『SMILE SESSIONS』 disc 3 にセッション収録

<関連項目>
 → The Elements
 → FIRE
 → Heroes And Villains (Intro)