公式音源で聴く 『SMiLE』

 『SMiLE』 期の音源を聴こうとすると、 最近では質の高いいろんな種類のものが多く出ていることもあって、 どうしてもブートレグに偏ってしまいがちですが、ちょっと待った!
 いきなりブートもいいけれど、 まずは公式に発表された 『SMiLE』 関連の音源をおさえるのが順序というものであります。 ちゃんとした公式音源をふまえた上で、未発表曲の海原に旅立つのがやはりよろしいかと。 そんな老婆心?から、公式 『SMiLE』 関連音源をまとめてみました (ライヴは除く)。 『SMiLE』 初歩の方のご参考になれば幸いです。

 『SMILEY SMILE』 (1967)
 [収録曲]
   1. Heroes And Villains - 3:38
   2. Vegetables - 2:06
   3. Fall Breaks And Back To Winter - 2:15
   4. She's Goin' Bald - 2:14
   6. Good Vibrations - 3:35
   7. With Me Tonight - 2:16
   8. Wind Chimes - 2:35
  10. Wonderful - 2:20
  11. Wistle In - 1:03

 『SMiLE』期直後の録音で、最も近そうでありながら、 実は 『SMiLE』 と最もかけ離れているアルバムともいえます。 実際に 『SMiLE』 期の録音を使用しているのは 「H&V」 「Vegetables」 の一部くらいで、 他は急造の改作といった趣きです。 しかしこのなんとも言い表しがたいどんよりとした雰囲気は、 『SMiLE』 という事件の余韻、混沌からなるものでしょう。 とりあえず 『SMiLE』 直後の公式アルバムとして必聴。
 1、 6 はシングル・ヴァージョン。
 2、 7、 8、 10 は 『SMiLE』 期の同名曲のリメイク。
 4 は 「He Gives Speeches」 のリメイク、 11 は 「H&V」 の一セクションを元にしたもの。
 3 は直接の関係はわかりませんが、 「Mrs. O'Leary's Cow」 のベースラインを元に作られたのではないかといわれています。

 『WILD HONEY』 (1967)
 [収録曲]
  11. Mama Says - 1:04

 もともとは 「H&V」 の一セクションで、 のちに 「Vega-Tables」 に流用されたセクションを元にした、アカペラでの短い曲。 『SMiLE』 期の録音ではなく、このアルバムセッション時にリメイクされたもの。

 『20/20』 (1969)
 [収録曲]
   1. Do It Again - 2:26
  11. Our Prayer - 1:07
  12. Cabinessence - 3:34

 1 は直接 『SMiLE』 とは関係のない曲ですが、曲の最後に 『SMiLE』 期の録音である 「Friday Night」 でのかなづちやノコギリなどの大工音がなぜか収録されています。
 11、 12 は 『SMiLE』 期の録音に、このセッション時オーヴァーダブを加えた2曲。 ステレオで収録されており、どちらの曲も広がりがあります。 「Cabinessence」 はここに収録されたものがブライアンの意図した最終形だといわれています。

 『SUNFLOWER』 (1970)
 [収録曲]
  12. Cool, Cool Water - 5:02
 『SMiLE』 期の録音で 「The Elements」 とも関係があると考えられている 「Water」 、 「I Love To Say Da Da」 を改作したと思われる 『WILD HONEY』 期の 「Cool, Cool Water」 などが組み込まれた小組曲。 中間部で水の音とともに登場する 「Water」 の不気味さが目立ちます。

 『SURF'S UP』 (1971)
 [収録曲]
  10. Surf's Up - 4:12

 『SMiLE』 期から4年以上後になってから収録された名曲。 前半部は 『SMiLE』 期のバックトラックにカールのヴォーカル等をオーヴァーダブし、 後半部は 『SMiLE』 期のブライアンのピアノソロをそのまま使用、 コーダには未発表曲 「Child Is Father Of The Man」 を改作した分厚いコーラスが加えられ、 怒涛のラストを迎えます。 最終的にブライアンが意図していた形かどうかはわかりませんが、これはこれで素晴らしい出来。 ビーチ・ボーイズがサーフィン・グループだとまだ思ってる人は、 これを聴けば耳のウロコが落ちることでしょう。たぶん。

 『RARITIES』 (1983)
 [収録曲]
  4. You're Welcome - 1:06
  8. Good Vibrations (early take) - 3:33

 4 はシングル 「H&V」 のB面に収録された小曲で、 『SMiLE』 期の録音。
 8 はヴォーカルが不完全ながら、勢いのある制作途上のテイク。 完成ヴァージョンにはないコーラスも聴けます。

 『SMILEY SMILE / WILD HONEY』 2on1 (1990)
 [収録曲]
  23. Heroes And Villains (alternate take) - 2:57
  24. Good Vibrations (various sessions) - 6:52
  25. Good Vibrations (early take) - 3:00
  26. You're Welcome - 1:07
  28. Can't Wait Too Long - 5:35

 これらはすべてボーナス・トラックとして収録されたもの。
 23 は俗に 「Cantina」 ヴァージョンと呼ばれるもので、 当初シングル用にと考えられていたテイク。
 24 は 「GV」 のさまざまな断片やセッションの様子が組み合わされ次々登場するもの。
 25 は 『RARITIES』 収録のものとは異なる初期ヴァージョン。 『PET SOUNDS』 で作詞を担当したトニー・アッシャーが書いたといわれている、 完成版とは異なる歌詞がブライアンのヴォーカルによって歌われています。
 26 は 『RARITIES』 と同じ。
 28 は 「Wind Chimes」 の一セクションを発展させたと考えられる曲ですが、 『WILD HONEY』 〜 『FRIENDS』 期の録音で、エンジニアのマーク・リネットが編集したもの。 (しかし一部 『SMiLE』 期の録音が使用されているとも考えられます。)

 『GOOD VIBRATIONS BOX』 - Disc 2 (1993)
 [収録曲]
  17. Good Vibrations - 3:35
  18. Our Prayer [previous unreleased] - 1:06
  19. Heroes And Villains (alternate version) - 2:56
  20. Heroes And Villains (sections) [previous unreleased] - 6:39
  21. Wonderful [previous unreleased] - 2:02
  22. Cabinessence - 3:32
  23. Wind Chimes [previous unreleased] - 2:31
  24. Heroes And Villains (intro) [previous unreleased] - 0:35
  25. Do You Like Worms [previous unreleased] - 4:00
  26. Vegetables [previous unreleased] - 3:28
  27. I Love To Say Da Da [previous unreleased] - 1:32
  28. Surf's Up [previous unreleased] - 3:38

 『SMiLE』 公式音源の中でも、本命中の本命。 これを聴かずに 『SMiLE』 を語ること無かれ。 と言いたくもなるくらい充実の 『GV Box』 Disc 2 です。 最近では手に入りにくいことに加え、 5枚組 (日本盤は6枚組) ボックスということで手を出しにくい面もあって、 ちょっと不便なのは困りものですが、 『SMiLE』 求道者は必須アイテムです。

 17 はふつうのシングル・ヴァージョン、 19 は 『SS/WH』 2on1 にも収録の 「Cantina」 ヴァージョン、 22 は 『20/20』 収録のステレオ完成ヴァージョンですが、 その他は全て初出の 『SMiLE』 音源。 (このボックスのためにマーク・リネットが編集したものだそうです。)

 18 は 『SMiLE』 のオープニング用にと考えられていた、 『20/20』 収録のものとは異なるオーヴァーダブの無いシンプルなヴァージョン。
 20 は 「H&V」 の多くの断片を編集してまとめたもの。 シングル・ヴァージョンや 「Cantina」 ヴァージョンには無い、 変幻自在のコーラスワークが楽しめます。 「Bicycle Rider」 も登場。
 21、 23、 26 は 『SMILEY SMILE』 とは同じ曲ながらアレンジの全く異なる 『SMiLE』 ヴァージョン。 それぞれほぼオリジナルの形で聴くことが出来ます。 あまりの違い&美しさ (特に 「Wonderful」 ) に驚くこと必至。
 24 は 「Mrs. O'Leary's Cow (The Elements - Fire) 」 のイントロとして知られてきた断片。
 25 はビデオ 『AN AMERICAN BAND』 でも登場した曲がめでたく収録。 『SMiLE』 独特の不思議な空気が感じられます。
 27 は 「The Elements」 の水ともいわれている曲で、 「Cool, Cool Water」 の原型。 事実上 『SMiLE』 セッション最後の録音となった曲です。
 28 は 『SURF'S UP』 ヴァージョン後半にも登場する、 ブライアンのピアノ・ソロヴァージョン。美しすぎて絶句。

 『GOOD VIBRATIONS BOX』 - Disc 3 (1993)
 [収録曲]
   5. Can't Wait Too Long [previous unreleased] - 3:50
   6. Cool, Cool Water [previous unreleased] - 1:11

 5 は 『SS/WH』 2on1 収録のものとは異なり、 中間部にブライアンの語りが入るなどやや短く編集された、より完成度の高いヴァージョン。
 6 は 『SUNFLOWER』 収録の同曲にも一部使用された短いヴァージョン。
 どちらも 『WILD HONEY』 期の録音で、 『SMiLE』 期のものではないです。

 『GOOD VIBRATIONS BOX』 - Disc 5 (1993)
 [収録曲]
   8. Good Vibrations (sessions) - 15:18
   9. Heroes And Villains (track only) - 0:46
  10. Cabinessence (track only) - 3:57
  11. Surf's Up (track only) - 1:40
  23. Good Vibrations - LIVE 1966 - 5:13

 オフィシャル・ブートレグ的な性質の強い Disc 5 には、レア音源が満載されていますが、 Disc 2 が大盤振舞いだったせいか 『SMiLE』 期のものはやや少ないです。
 8 は 「GV」 のセッションの断片が編集されたものですが、 『SS/WH』 2on1 のものとは異なり収録時間も長く、 一部ステレオでバックトラックを聴くことが出来ます。三連チェロの響きがびびびっと来ます。
 9 はシングルや 「Cantina」 の冒頭部のバックトラックで、短すぎて拍子抜け。
 しかし 10 はオススメ! 頭のカウントから最後のフェイドアウトまでまるまるバックトラックが聴けるのですが、 これが素晴らしい。 『SMiLE』 期のブライアンのアレンジのすごさが体感できます。 ヴォーカル無しでもご飯三杯いけます。しかもステレオ。ワオ。
 11 は 『SURF'S UP』 ヴァージョンの前半部でも使用されたバックトラック。
 23 はスタジオ録音ではありませんが、 『SMiLE』 レコーディング期真っ最中のツアー中に行なわれたライヴでの、 「GV」 の歴史的な初演です。

 『THE PET SOUNDS SESSIONS』 - Disc 2 (1997)
 [収録曲]
  12. Good Vibrations (highlights from tracking date) - 2:42
  13. Good Vibrations (stereo backing track) - 3:15

 『PET SOUNDS』 レコーディング期間中に行なわれた 「GV」 の最初のセッションの様子が、 ステレオの良い音で聴けます。完成ヴァージョンでも使用されている部分多数あり。

 『ENDLESS HARMONY』 (1998)
 [収録曲]
  10. Heroes And Villains (demo) - 2:22

 『SMiLE』 の謎の一つとされている曲 「I'm In Great Shape」 と 「Barnyard」 の断片が、 「H&V」 の一部として登場。ブライアンがピアノを弾きながら歌い、 ヴァン・ダイク・パークスが動物の鳴きまね声を出すという奇妙なデモ・ヴァージョンながら、 歴史的発見に満ちたトラックといえるでしょう。
 また、このアルバムに収録された 「Wonderful」 のライヴ・ヴァージョン(1972)の冒頭のMCでは、 マイク?が 「『SMiLE』は来年出る」 という意味のことを言っています。 この頃にも 『SMiLE』 発売プロジェクトは静かに進行していたようです。 (結局出ませんでしたが。)

 『HAWTHORNE,CA』 - Disc 2 (2001)
 [収録曲]
  1. Can't Wait Too Long (a cappella mix) - 0:49
  3. Good Vibrations (stereo track sections) - 3:13
  5. Heroes And Villains (stereo single version) - 3:38
  6. Vegetables Promo (instrumental section) - 0:55
  7. Vegetables (stereo extended mix) - 2:59
  8. You're With Me Tonight - 0:48
  28. Carl Wilson - Coda - 2:28

 1 は既出のもののアカペラの断片。 『Friends』 〜 『20/20』 期の録音で、 『SMiLE』 期のものではないですが、短いながら美しく神秘的。
 3 は 『GV Box』 Disc 5 収録のセッション等でも聴くことの出来た 「GV」 の未使用セクションを編集したものですが、 素晴らしくクリアなステレオで聴くことが出来ます。いいねえ。
 5 は 『SMILEY SMILE』 にも収録されたシングル・ヴァージョンのステレオ化。 高度なコーラスワークと演奏を広がりをもって楽しむことが出来、 『SUNFLOWER』 での飛び交うようなコーラスを彷彿とさせます。
 6 は 『SMiLE』 期の 「Vega-Tables」 のフェイド・セクションに、 ブライアンとハル・ブレインによる野菜に関する即興の会話と、 短い野菜の歌を編集して乗せたもの。 「野菜コント」みたいなもの?で、ブライアンの「ユーモア」だったんでしょうか。 短いながら面白いです。 (これって、 「beet(砂糖大根)」 と 「beat」 がかけてあるんでしょうか。 それとも、日本盤歌詞が間違ってるのかな)
 7 は 『SMILEY SMILE』 ヴァージョンの 「Vegetables」 に未使用部分を加えてやや長く再編集、 ステレオ化したもの。 あまり人気のない 『SMILEY SMILE』 ですが、 ステレオ化して音をクリアにすることで、再評価も可能なのでは、と思わせる一品。
 8 はなかなかの曲者。 『SMILEY SMILE』 ヴァージョンの 「With Me Tonight」 で始まったかと思いきや、 セッションでの会話を挟み、 「H&V」 から派生したと思われる、雰囲気の違う原型が初登場。
 28 は最終トラックなのですが、カールの語りの後にシークレット・トラックとして、 「H&V」 の短いアカペラの断片が収録されています。 左右でおそらくブライアンとカール?が 「boys, and, girls, and...」 と歌っているのがよくわかります(知らなかった)。
 この2枚組には他にも、語りのバックに 「GV」 のトラックが使用されていたり、 「カールを紹介するデニス」では回転数を上げた 「GV」 が一瞬流れたりと、 断片的に音源が現れたりもしています。

 "where's my beet and my carrot..."

 『GOOD VIBRATIONS:40th Anniversary Edition』 (2006)
 [収録曲]
  1. Good Vibrations (original 45 rpm single version) - 3:35
  2. Good Vibrations (various sessions) - 6:55
  3. Good Vibrations (alternate take) - 3:33
  4. Good Vibrations (instrumental) - 3:51
  5. Good Vibrations (live concert rehearsal) - 4:08

 1 はシングル・ヴァージョン。
 2 は 『SMILEY SMILE / WILD HONEY』 2on1 収録のものと同じ。
 3 は 『RARITIES』 収録のものと同じ。
 4 は 『GOOD VIBRATIONS BOX』 - Disc 5 収録の 「sessions」 から、 ステレオのインストゥルメンタル部分だけを抜粋したもの。
 5 は 『HAWTHORNE,CA』 収録のものと同じ、1967年8月25日のライヴ・リハーサル。
 2、3、4 は2006年にリマスターされています。

 『SMiLE SESSIONS』 (2011)
 そして未発表から実に44年。CD 5枚組 全144トラック 約400分+αによって構成された、 公式決定版といえる夢の 『SMiLE』 BOX がリリースされました。
 とりあえずこれを聴いておけば、 『SMiLE』 の全貌を俯瞰することが出来ます。
 でも過去の関連音源も漏らさず聴いておくのが、『SMiLE』 ファンとしては正解!