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2006年 観劇感想 下半期U


2006.12.23

国立大劇場『元禄忠臣蔵 第三部』 特等席前方センター

第三部は討ち入り直後から切腹に至るまでの赤穂浪士の心情を淡々と見せていきます。大きな事をやり遂げた充足感と虚脱感とを、また死へ向かう浪士の覚悟と揺れを同時に描いてみせ、人間群像としてのドラマがありました。最終章として非常にまとまった良い芝居を観たという感じです。この第三部は役者のアンサンブルがうまくかみ合い、終始舞台上の空気が締まっていたように思います。あだ討ちという熱が冷めた後の静かな冴え冴えとした空気感とうねり。

普段は前へ前へと芝居していく幸四郎さんが抑えた芝居で重量感をみせ、またほんの少しの表情動きで大石の心持をみせていく。揺れがありながら、初一念を通した芯の強さがある大石でした。また、大石内蔵助という人物がリーダーとして傑出たりえた部分であろう目配りのうまさがよくみえ、とても納得のいく人物像としてありました。それにしても今月の幸四郎さんは白鸚さんをかなり彷彿させました。今まであまり似てるとは思ったことないのですが、姿といい台詞廻しといい、私が拝見した舞台上の白鸚さんが一気によみがえってきました。たぶん、幸四郎さんがお父様のことをかなり意識されていたのではないでしょうか。

幸四郎さんの大石を核として、 周囲の役者が本当によく揃っていたなと思います。なんというか、大石が「人の支えあってこそ」と思うに至る心情とこの舞台とがリンクしていたような感じ。詳細感想別途書きます。ほんとそれぞれの役者さんが持ち味を生かしていい出来だったと思う。

10月から始まった『元禄忠臣蔵』、三ヶ月の通しという国立の試みは成功でしたね。あまり華やかさのない演目ではありますが通しで見る意義は十分ありました。また吉右衛門さん、藤十郎さん、幸四郎さんの大石のリレーも非常にうまく嵌まっていたなと思います。三ヶ月通ったご褒美の手ぬぐいをしっかりいただきました。


2006.12.17

シアターコクーン 『NODA・MAP ロープ』 A席後方センター

びっくりするほどストレートな芝居でした。最初のほうは面白くてアハハと笑って観ていられたのですが後半になって主題がハッキリしていくうちにヒリヒリとした痛みが伝わってきてしんどくて、辛くなった。そして切なかった。タマシイの母を演ずる宮沢りえちゃんを抱きしめてあげたくなった。野田秀樹さんはどうしてここまでストレートに描くことにしたのだろう。もうここまでしないと「わからない」と、そう思ったのだろうか。

作品全体に「憤り、怒り」が溢れていた。私は美術館に行っている人でありたい。

以下、ネタばれになりますのでこの芝居をこれから観る人は読まないでください。

以下反転:実況中継で語られたことは本当にあったこと、そして舞台美術の碑は実際にあるものを写したものでした。
http://www.jca.apc.org/~yyoffice/Son%20My/A%20look%20back%20upon%20Son%20My.htm#目  次:title=ソンミを振り返る]


2006.12.09

歌舞伎座『十二月大歌舞伎 夜の部』 3等B席前方上手寄り

今月のお目当ては菊五郎さんの『出刃打ちお玉』。池波正太郎さんがどんな歌舞伎を書いたのか観たくて。落としどころが池波さんだなあってちょっと思いました。面白かったです。『神霊矢口渡』は菊ちゃんが頑張っていました。『紅葉狩』は海老蔵さんはコミック歌舞伎道邁進中なのね、という感じでした。

『神霊矢口渡』
若手の女形さんを見せるのは格好の題材だなあと思いました。私はこれが初見。亀治郎さん、孝太郎さんが最近演じていらしたのですがこちらも見たかった。それぞれかなり違ったお舟だったでしょうねえ。

菊之助さんのお舟は品の良い可愛らしさのあるお舟。義峯に一目惚れするシーンはおぼこさがあってうっとりした表情が可愛い。それと女形の体の作りが非常に上手くなりましたねえ。特に肩のラインが柔らかくなった。後半、義峯の身代わりになった後、一途な部分はしっかりあって、義太夫へのノリも丁寧。菊之助さんらしい端正な娘で良いとは思うんだけど、この場はもっと恋情の激しさが欲しいような気がする。理が勝りすぎてる感じ。

富十郎さんの頓兵衛は少々迫力不足。姿は良いんだけど、力強さ、勢いがあんまりない。強欲さもそれほど見えなかったし。うーん、頓兵衛がもっと憎々しげだと面白いと思うんだけどな。

義峯の友右衛門さんが地味だけど品のよさと少々浮世離れした感覚があって思った以上に良かった。

うてなの松也さんは綺麗系で菊之助さんと好対照なのが良いけど裾の捌き方が雑。先月もちょっと思ったので松也さん、女形の時の裾捌きをもっと研究してくださいな。

『出刃打お玉』
菊五郎さん、私的に久々の大ヒット!。特に若い時のお玉が出色。菊五郎さんのお玉は色ぽくって、それでいて女気溢れていてすこぶるいい女。ちょっと男勝りで、さばさばしてて、でも女の色気はたっぷり。いいじゃないですか〜、かっこいいです〜。ただし後半の老婆になった部分が作りすぎじゃないでしょうか?ちょこちょこ歩くところなど、ちょっと受け狙いに走りすぎのような?老婆のなったお玉はすごく哀しさのある女だと思うんですよね。その哀れさが隠れてしまう。幕切れ、もっと切なく出来るんじゃないかなあ。そのほうが私の好みだったりするってことなんですけど。

正蔵の梅玉さんもかなり良い味。青臭い23歳が妙に似合ってました。違和感ないんだもんなあ。そりゃ、「23歳」って言われた時には笑ってしまいましたけど、でもひ弱な純情男にどんどん見えてきちゃう。そして後半の変貌したエロおやじな正蔵も、慢心した雰囲気があって、世間のアカをいっぱいつけちゃった男って感じで良し。お玉の仕返しを「身から出たサビ」と言える、という部分がきちんとあった。

田之助さんの広円和尚がいかにも好色そうで、えーっ?田之助さん?ってちょっとビックリしました(笑)

おろくの時蔵さん、後半のイヤな女ぶりが良かったです。中年女性らしい体型を作ってきてて、それが雰囲気にピッタリで。

『新歌舞伎十八番の内 紅葉狩』
9月に復活舞踊として『鬼揃紅葉狩』を観たばかりですが、舞踊の構成としてはやはり『新歌舞伎十八番の内 紅葉狩』のほうがシンプルでわかりやすくて好き。ただ久しぶりに『新歌舞伎十八番の内 紅葉狩』を観て、『鬼揃紅葉狩』の花道の使い方は上手だったなあと思いました。

更科姫実は戸隠山の鬼女の海老蔵さん、何を目指しているんでしょう?先月演舞場に引き続き、「コミック歌舞伎」と名づけたい演じぶり。更科姫のほうはお顔は本当に美しくて姿も綺麗。肩のラインが男な部分を除けば、踊りのほうは一生懸命さがあって頑張ってると思いました。扇の捌きもしっかりしてましたし丁寧さに好感。ただ控えてる姿勢が赤姫じゃない。腕を落としすぎるし、ふらふらクネクネするのはよしたほうがいいかなあと。でも前半は十分な出来だと思いました。ビックリしたのは鬼女の正体を現す部分から…。ちょっとした仕草で魔性のもの、と知らしめるとこが上手く出てないなあ、なんて思っていた直後…、足を大またに広げ(股割りしてるのかってぐらい)着物の裾をばっさばっさと見得を切るのは正直、えっ?ええっと、それは鬼女ではなく、「おいらは男です」って正体現しただけでは?としか思えませんでした。鬼の魔性さは全然無いんですけど。で鬼女になってからは鬼女ではなく鬼というか、それは怪獣?「シャー」とか「ガーッ」とか吼えるのはアリなんでしょうか?まあ、パリのお客様にはわかりやすくていいかも?個人的には隈取の勇壮さで十分だとは思いますけど。まあそれはいいとしても正直、鬼になってからの踊りはいただけませんでした。海老蔵さんとしてはこちらのほうがきちんとしてないといけないと思います。腰がふらふらで全体的に美しくありませんでした。顔だけで表現しようとしないで体全体で表現するようにしていただきたいです。

海老蔵さんの関しては、才能があると思うからこそ期待してました。だからこその辛口感想です。ただこのところの海老蔵さんの方向性は私にはついていけないものがあるので、今月の評をもって海老蔵さんの芝居について感想を書くのを当分やめようかと思います。今の海老蔵さんの方向性を支持する方も多いことですし、辛口を書く自分自身がいやになってきました。そこまで思い入れをする必要もないし。

やりすぎ、という部分では岩橋の亀蔵さんもやりすぎ。「コミック歌舞伎」を助長させています。ほんのりした楽しさ、くらいまでに留めてほしかったです。

平維茂の松緑さん、踊りがとても丁寧で腰もしっかり決まっていて姿がよくなっています。かなり良い出来。ただし、酒宴の席での終始お堅い雰囲気なのはどうでしょ?不機嫌そうに見えるのはよくないかと。少し酔った風情や色気があるともっと良い維茂になるんじゃないかと思います。

局田毎の門之助さんが要所要所で締めており、また踊りも丁寧で非常に良かったです。

山神の尾上右近くん、声が辛そうでしたが頑張ってましたね。子役の頃のキレがまだ戻っていないようですがひとつひとつ丁寧でした。足踏みはもう少し力強くしてほしいかも。


2006.12.08

国立小劇場『社会人のための文楽鑑賞教室』 前方下手寄り

会社帰りに国立小劇場に『社会人のための文楽鑑賞教室』を観に行きました。かなり面白かったです。若手公演だからとあなどってはいけない。

『伊達娘恋緋鹿子』
「火の見櫓の段」です。短めだし八百屋お七のお話だしわかりやすい演目、というのが初心者にはいいのかも。歌舞伎でもかなりの見せ場になるシーン。とはいえ力量もすぐわかってしまう場でもありますね。演奏も人形もいかにも若手だなあ、という感じでした。人形の動きが硬くて柔らかさがあまりないというか。そのせいか娘の情念はあんまり伝わってことなかったかも。人形をどうやって櫓に昇らせるんだろう?と思っていたのですが、見事な演出。へええ、すごいな。ここの演出には素直に感嘆。

『文楽のたのしみ』
義太夫を相子大夫さん、三味線を龍聿さん、人形を紋臣さんとそれぞれに解説。これが面白いんですよ。相子大夫さん、龍聿さんはいかにも関西のノリでネタを含めつつ楽しくわかりやすく解説。紋臣さんはマジメなんですけど人形の遣い方自体が面白いのでやはり聞いていて楽しい。このくらい楽しいものを『歌舞伎教室』でもやれないのかしら?とちょっと思いました。

『恋女房染分手綱』
「道中双六の段」「子別れの段」、これがとても良かったんですよ〜。「道中双六の段」はちょっと全体的にワサワサっとした感じではあったのですが呂勢大夫さんの語りは非常にわかりやすかった。玉翔さんが遣う三吉が大人びた子供といった風情が良く出ていてとても良かったです。そして「子別れの段」が語りも人形もどちらも非常に良くて、切なさが胸に沁みて泣けちゃいました。津駒大夫さんの語りがこの段にピッタリ、特に最後の馬子唄が素晴らしかった。また清之介さん操る重の井は「女」と「母」の情の部分がよく出ていて、かといって品を崩すことなく、重の井の哀しさがよく伝わってくるものでした。また玉翔さんの三吉の熱演がうまくハマって本当に見応えありました。


2006.11.26

三鷹公会堂『松竹大歌舞伎』 センター

『歌舞伎噺』
錦弥さんが夏の頃よりだいぶしゃべりがこなれていました。相変わらず素敵。錦次くんが供奴を頑張ってたヨ。橋吾さん橋幸さんが息の合ったトンボをきっていました。

『吉原雀』
信二郎さんと高麗蔵さんがスッキリと丁寧な踊りを見せてくださいました。信二郎さんは男前でキリッとした踊り。高麗蔵さんの鳥女は美人さん。手捌きがしなやかで身の反りもとてもきれい。

『勧進帳』
幸四郎さん弁慶が満身創痍の弁慶でした。ちょっとお疲れぎみなんでしょう、いつもの朗々としたハリのある声が出ていません。ただ、非常に気持ちがこもっており弁慶の必死さ主君への想いはよくみえるものでした。でも前半、少々迫力不足だったかなあ。延世の舞〜飛び六方までの場は相変わらずお見事。ここはほんとに天下一品だと思う。幸四郎さん弁慶はとても表情豊かなのですが、2年前から較べると少しづつその表情を押さえぎみにしてきてる感じがしました。それがかえって最後の神仏への感謝の念がよく伝わってくるものにしていたような気がします。にしても、いつもより台詞の抑揚を廻せなかったせいか、某所の『勧進帳』のせいか、台詞がいつもより非常に聞き易いと感じた私でした(笑)

高麗蔵さん義経は品格という部分と柔らか味がまだ足りないのですが、武将としての鋭さをみせ、辛抱役の義経という部分から一歩違うかなりユニークな義経像を作ってきていました。面白かった。

そして今回の私の目当ては信二郎さん富樫です。富樫の衣装は役者をいつも以上に男前に見せるのですが信二郎さんもとても衣装が似合い素敵でした。想像以上に骨太さと心に秘めた熱さを見せていただき、かなり良い富樫だったと思います。心配だった声も安定していて、緩急もきちんと乗って心地良いリズム。信二郎さんはこのところかなり安定感が出てきたなあと思います。もう少し突っ込んで欲しい部分や、体の持って行き方に物足りない部分もあるにはあるのですが、気持ちの乗り方がとてもよかったので、再度観てみたい富樫でした。

四天王のコンビネーションは相変わらずお見事。錦吾さん、亀三郎さん、亀寿さん、宗之助さん。来年1月歌舞伎座での四天王は誰になるのかな?亀兄弟を使ってくれないかなあ。


2006.11.25

みなとみらい大ホール『サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団』C席3F RA席

指揮/ユーリー・テミルカーノフ
ヴァイオリン/ワディム・レーピン(チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲)

『リャードフ:「キキモラ民話」op.63』
聴いたことがない曲でしたが楽しい曲でした。弦の音が良いわ〜。3階席なのに、1階で聴いているかのようなオケの音にビックリ。みなとみらいホールは音響が良いとは思うけどそれにしてもこの音量はなに?とただただ驚いた最初の曲でありました。

『チャコフスキー:ヴァイオリン協奏曲』
やばいです、すっかりレーピンさんの虜です。サントリーホールでのリサイタルでもかなりハマったんですけど、今日の演奏がかっこよすぎてメロメロですよ。ほんとになんちゅう演奏を聴かせてくれるんだ。骨太でかつ繊細な音、テクニックの素晴らしさ、音のボリューム、もうほんと凄いです、カッコイイです〜。

『ショスタコービッチ:交響曲第5番「革命」』
なんだかね、凄い演奏でした。というか音に圧倒させられた。ここまで音が鳴ってるオケって生で初めて聴いたような気がする…。音の波がドカーンと来るって感じでした。あまりの迫力にちょっと唖然としつつエキサイトしてしまいました。ヴァイオリンの統制の取れた滑らかな音が特にステキでした。金管の音はちょっと力任せぎみで柔らかさがないのがチト残念だったけど、にしても全体的に迫力満点。

【曲目】
リャードフ:「キキモラ民話」op.63
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.35
ショスタコービッチ:交響曲第5番「革命」

【アンコール曲】
エルガー:変奏曲「エニグマ」op.36より第9曲
プロコフィエフ:バレエ音楽「ロミオとジュリエット」より「ティボルトの死」


2006.11.20

サントリーホール『ワディム・レーピン ヴァイオリン・リサイタル』C席LA2後方

ワディム・レーピン(vn)
イタマール・ゴラン(pt)

大当たり!エキサイティングな素晴らしいコンサートでした。レーピン氏のヴァイオリンの音色のボリューム、厚みにはビックリ。なんと深い音色なんでしょう。デビュー当時は超絶技巧で鳴らしたレーピン氏ですが今はその技巧の上に繊細さと深みが加わってドラマチックな素晴らしい演奏を聴かせてくだしました。またピアノのゴラン氏の演奏もお見事。レーピン氏とゴラン氏の掛け合いは絶妙でした。音色が非常に合っていて、お互いの演奏に負けじとするかのような丁々発止のやりとりが本当にエキサイティング。

アンコールに『ツィゴイネルワイゼン』を弾いてくれちゃった日にゃ、もうノックアウトですよ。私、この曲はハイフェッツ氏のを何度聴いたことか。大、大好きな曲。しかもこれまた素晴らしい演奏で。はああ、ほんとに凄かった。色々語りたいのに言葉が出てこない…ボキャブラリのない自分を恨みます〜。

【曲目】
ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調op.108
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調op.45
ショーソン:詩曲op.25
ワックスマン:カルメン幻想曲

【アンコール曲】
グラナドス/クライスラー編曲 :スペイン舞曲
サラサーテ :ツィゴイネルワイゼン
ブラームス :ハンガリー舞曲第7番
ショスタコーヴィチ :プレリュード


2006.11.12

国立大劇場『元禄忠臣蔵 第二部』 1等A席前方上手寄り

物語の起伏もあり、女形も大挙出演だったので華やかで肩の力を抜いて観ることが出来ました。坂田藤十郎さんの大石蔵之助は仮名手本忠臣蔵の大星由良助をイメージさせるキャラクター作り。第一部の吉右衛門さんからの大石とは繋がらないものの、歌舞伎好きならすんなり入り込める大石でした。梅玉さんの綱豊卿はいかにも殿らしい品のある鷹揚さのなかに熱いものが秘められていてとても素敵でした。梅玉さんは殿役者だなあと思う。

後日補完予定


2006.11.05

新橋演舞場『十一月花形歌舞伎 昼の部』 1等1階前方花道寄り

花形(若手)歌舞伎は所詮花形歌舞伎。若手ならではの面白さもあるけど、かなり暖かい目で見る必要もありな十一月の演舞場でした…。

『番町皿屋敷』
松緑さんが台詞回しを一生懸命勉強してきたなーという印象。まだ気持ちを聞かせるとまではいってないけど、若さゆえの短慮さ青臭さのある青山播磨でした。芝雀さんのお菊ちゃんは可憐。自分から身を引いてしまいそうな雰囲気で男の気持ちを確かめるタイプには見えなかったけどね。

『勧進帳』
うーむ、お子ちゃま芝居というかコミック歌舞伎『勧進帳』というか…。目をむき歯をむきだしに富樫を威嚇する弁慶って…猿かいな?台詞音痴も相変わらずだけど、にしてもいつも以上にひどくない?お父ちゃん、お願いだからダメ出ししてあげて。成田屋の弁慶、こんなんじゃないはずです(;;)。富樫は衣装に着せられてる感が…ちょっと衣装大きくない?なで肩だから?それはまあ置いてくとしても、出は品があって台詞回しは丁寧でいいなと思ったんだけど、ハラが薄い、薄すぎる、どうでもいいや感が漂ってるんだけど。

『弁天娘女男白浪』
一番芝居としてまとまっていて楽しく観られました。菊ちゃんの弁天小僧はぴったり。松緑さんの南郷もいなせでなかなか。菊之助・松緑コンビは楽しそうで良い感じです。


2006.10.21-10.22

大阪松竹座『十月花形歌舞伎 染模様恩愛御書』 3等席3階前方センター&1等席1階センター

【観たばかりの時の全体の感想】

10/21(土)〜10/22(日)の日程で大阪松竹座『十月花形歌舞伎 染模様恩愛御書』を観劇すべく遠征してまいりました。期待半分、不安半分だった復活狂言『染模様恩愛御書』、これが楽しくて、楽しくて。ツッコミどころ満載な部分含めてすげー楽しかった。観てる間中、顔がニマニマしてたと思う。

21日(土)夜の部は3階から拝見。もうね、思いっきりツボに入りました。かなりクスクス笑いぱなし&ツッコミしまくり。そして想像以上に復活狂言として「歌舞伎」になっているのには大感激。

22日(日)昼の部は1階で拝見。前日同様、ツッコミしまくりでクスクス笑えるかと思いきや、客の雰囲気が違っていたのか、皆真剣に物語のなかに入り込んでいて笑うどころではない。というか皆、マジ見。私もツッコミモードがだんだん真剣モードに。勿論、笑うところはしっかり笑っていましたが。

にしても、なんでこんなに楽しいんだろう。大阪上演じゃなきゃ通ってたと思う。役者さんたち、皆活き活きしてて楽しそうに演じてらした。配役がどうなのかな?と思っていた部分が多少あったのだけど実際観て、友右衛門が染五郎さん、数馬が愛之助さんで正解だった。そして猿弥さん、段治郎さん、春猿さん、吉弥さん、芝のぶさんもピタリ嵌ってて、脇の皆さんもしっかりと固め、座組みの勢いの良さが感じられた。多少寄せ集め的な座組みかな?と思ったんだけど、いやいや、かなりまとまりの良さがあった。かなりの少数人数の座組みだったけど、舞台がとても密に感じられた。今こうして書いていても、楽しくて(笑)観ていて出演している役者さんたち全員を大好きになれる芝居だった。記念にクライマックスの火事場で舞い散った火の粉(キラキラした赤いフィルム紙&薄い白い紙)を持ち帰りしました。

そして一言!染ちゃんはやっぱ素敵だ!キリッとしたとこもヘロヘロッとヘタレになるとこも必死な形相も情感がこもっている台詞回しと声も、見事な死体ぷりも、とにかくまるごと全部良かった。私の性分だからたぶん詳細感想では演出的な部分に関しては注文も出ると思うけど、それでもこーんなに大満足な芝居を仕掛けてくれてありがとう、と声を大にして言いたいです。正直なとこパルコ歌舞伎より好きだ(笑)

【舞台演出等】

染模様恩愛御書と大きく描かれた幕。セリから講談師さん登場。今から始まる芝居の発端を説明。以後、たびたび黒御簾なのかで物語の補足をしていく。いわば義太夫の代わりの役割を果たしている。これが非常にわかりやすく、また語り口が歌舞伎と相性が思った以上に良い。これからも歌舞伎のなかで講談師を使う、のは有りだと思います。今まで使ったことはないのかな?初の試み?

舞台上には木を組んだだけの櫓のようなシンプルなセットで片方が階段が3つ、片方は階段無し。場によって襖やのれん、スクリーンなどをで様々な部屋に仕立て照明の暗転で盆廻しにして場を変えていきます。なので場面転換はかなり早くほとんど幕を閉めません。その代わり場によっては華やかさに欠けるところがあり、それが少し残念でした。最初のお祭りの部分と、見初めの杜若の場はもっと華やかにしてほしかったかなあ。

照明は普段のフラットな照明ではなく様々な色を使い、ピンスポット使いも多様。素早い舞台転換のための暗転も多様しておりました。いわゆる現代劇での照明の使い方だと思うのですがそれほど違和感は感じませんでした。ラブシーンの紫の照明はベタすぎてどうよ?とも思いましたが(笑)。火事場の赤はかなり効果的でしたがどうせなら赤一色ベタ使いではなくゆらゆらさせるような立体的な照明でもいいかなあとも思ったりしましたが、それをすると歌舞伎ぽくなくなるのなとも。

火事場の演出。天井や脇から会場全体に煙を飛ばし、舞台両端からは火の粉に見立てた赤いセロファン紙と白い薄い紙をどっさりと撒き散らす。会場全体が火事場に見立てられています。舞台上では本火も少しながら使用し、また焼けだだれた梁が天井から落ちてきたり、とスペクタクル。階段落ちは階段部分が仕掛けで滑り台のようになり、そこをざぁ〜っと滑り落ちる形。

音楽はほぼ正統派な使い方。すべて黒御簾内で演奏しておりました。火事場での太鼓、鼓の音にはわくわくさせられましたー。んが、一つだけ今回のテーマソングと言いますか、「数馬愛のテーマ」と言いたくなるような歌詞の歌があったのですがこの曲調がムード歌謡な曲調なんですよ。聞いてて恥ずかしくなるんですけど…。こればかりはもう少し正統派な長唄調にしていただきたかったと。

【詳細感想もといツッコミ】

<第一幕>
「会津国料理茶屋の場」

お話の発端からきちんと始まった〜。

横山図書@猿弥さん、酒好き派手好きとの講釈が最初にあったわりに、普通に良い人?十内の病に臥せってる息子さん(数馬のことだっ)の心配してるし。

印南十内@薪車さん、優しくてカッコエエ父ちゃんだ。

図書をそそのかす四人組(欣也、橋弥、橋吾、宮脇信二)。企み顔しちゃってこちらのほうがよっぽど悪じゃん〜。

「会津城内横山図書宅の場」
いよ@芝のぶさん、このころは女は結婚相手を選べないのよね、可哀想。図書のことはあんまり好きじゃないさげ。誰か想う人があったのかな、と私も四人組の話を信じそうになる(笑)

いよの父ちゃん、一ノ瀬九郎右衛門@寿猿さん、不吉な刀を見極める力がありながら娘のいよが意に染まぬ結婚してるのは気が付かないのかなぁ…。病の娘を気遣う優しい父ちゃんぽいから実はわかってたのかもね。でも殿からの申し出じゃ断れなかったんだろう。ああ、女には辛い時代だわ。

図書、奥さんの不義密通を信じちゃうのも分らないでもないが殺すのはいかんだろう。

ああ、十内ったら間の悪い時に…ほんとに良いやつなのね。薪車さん、おみ足&ふんどしの大サービス。ファンの人にはたまらないかも。

図書、最初は罪を認めて自首しようとしてたのに、いきなり悪に豹変は刀のせいですか?そこら辺の変化がいまいち判らず…。図書は最初からもう少しイヤなやつ的キャラ造詣のほうが良かったな。

「浅草伝法院見染めの場」
数馬@愛之助さん登場!お小姓姿どう?どう?どうかしら〜?まあ、可愛らしいじゃないですか。ちょっとふっくり感はあるけど合格。チラシより本物のほうが断然良いわ。

あざみ@春猿さん、美形だわ、可愛いわっ。あざみってショタコン?らぶらぶ光線を数馬に送っております。

あざみのらぶ攻撃を気がつかない数馬はただのお子ちゃま?と思ったけどどうやらただの同僚としか思ってなかったのか。仲はよさげなんだけどね。頼りになるお姉ちゃん、くらいな感覚?あっ、数馬、花(杜若)泥棒してる〜。

友右衛門@染五郎さん、ようやく登場だああああ。はあ、登場までが長かった。最初はキリリとした男前な武士なのね。それが、すぐ後にあーなろうとは(笑)

友右衛門と数馬は最初はいっさい目線が合わないのです。お互いぶつかって数馬が杜若を落とし、友右衛門が拾ってあげるとこで、はい目線合いました!一目会ったその日から状態です〜。ここから一昔前の少女まんがなラブコメが始まりました。

友右衛門の目がほんとにハート形になったかのよう。恋にまっしぐら、身も心もふにゃふにゃ、へたれ友右衛門の出来上がり(笑)数馬から目を離せないその姿ったら、可愛いよ、可愛いよ友右衛門。

数馬もほけ〜っと恋に落ちてます。どこかそわそわ。お父ちゃんの面影を友右衛門のなかにちょっと見つけちゃった?とか?そんな感じかしらん。

「浅草観世音仁王門の場」
「夢であったか」って、数馬いつの間に着替えてそこにいるん?数日前の出会いで夢見心地ってことですか?あれ?でもまた杜若持ってるなあ。時系列がよーわからん。にしても数馬はヒロインだけあってお着替えいっぱーい、です。

数馬母お民@吉弥さん、芯の強いお母様。息子に父の仇討ちを忘れないように諭します。この後、急に亡くなる、という雰囲気はあまりなかったな。体が弱っていても気持ちを強く持っている、みたいな感じがあるともっと良かったかも。

友右衛門と数馬、再会。あら?2度目じゃないらしい。それぞれの中間同士のこぜりあいを友右衛門が仲裁したとか。一応ポイントを挙げてるらしい友右衛門。毎日、浅草寺にお参りしてる数馬会いたさに日参する、ストーカーちっくな、もとい情熱的な友右衛門。嬉しいそうな顔してるのよね、ここの友右衛門。数馬は一応平静顔を装ってる風情。

その場を去ろうとする数馬に友右衛門が「お袖に汚れが…」と引き止め袂に恋文を(笑)周囲にもバレバレな恋心。なんかねえ純情で一途でやることもちょい無骨でヘタレな友右衛門が可愛いよ、可愛いよ。

恋文を袂に忍ばせてあるのを見つけた数馬の反応が、これまた可愛いんだよ。ドギマギしちゃて。やっぱラブコメだ。

図書、なぜに姓を印南に変えているんだろう?友右衛門の妹きく@芝のぶさんに結婚申し込み。前妻と似た人を選ぶとは…。

きくちゃんは図書のことを気に入ってるらしい。悲劇まっしぐら。

医者玄庵@幸太郎さん、友右衛門兄妹の親代わりとか。パルコ歌舞伎の洪庵先生雰囲気がにちょっと似てる?

図書と友右衛門はすれ違い。この後すぐに友右衛門は出奔しちゃったってことだよな。友右衛門がきくに打ち明け話をしても先の展開は同じだよね、ならば妹には訳を話して欲しかったなあ。

「細川屋敷内玄関先の場」
なんと友右衛門、武士の身分を捨て数馬の主人、細川家にご奉公。をいをい、そこまでするのかよ。でも恋ボケはしてるけど、仕事はしっかりこなして中間から足軽へ出世。元来、まじめな性格らしい。

数馬登場、さっそく友右衛門が例の「お袖に汚れが…」作戦(笑)。無事、恋文を袖のなかに。ほんとに恋に夢中でへたれすぎな友右衛門。きりりとした男前なお前はどこへ行ったっ。でもこれでダメなら諦める覚悟はしてるわけで、そこら辺はストーカーなイヤなやつではないのよね。ちょっとホッ(笑)

数馬、恋文もらって嬉しそうだねえ。乙女ちっくな喜びよう。可愛いなあ。あっ、あざみの前で恋文落としちゃいかんだろう。

あざみちゃん、それを読んで嫉妬に燃えまくり。きーっ、と悔しがる姿が可愛いよ。少女マンガのもろライバルキャラです。春猿さん、似合すぎ。ちょい、一本調子な台詞回しがキャラに似合いすぎて、ツボにハマりました。イケイケGOGO(古っ)、あざみちゃん。

数馬、友右衛門にお礼の返信。すれ違いざまにぽいっと投げ渡してるんですけど…いいのか。なんてバレバレなっ。あざみに現場を見つけてと言わんばかり。

友右衛門もその場で大声出して読むなよ〜(読んでくれないと観客はわかりません)。数馬ったら部屋へ忍んできてね(はーと)な返信。狂気乱舞な友右衛門、良かったね、良かったね〜。なぜか応援しちゃうんだよなぁ。

「細川屋敷内数馬の部屋の場」
来てくれるか心配しながら部屋で待つ数馬。へえ、数馬も不安なんだ。ちょっと意外。

友右衛門、忍んできたー。「胸がドキドキいたしてならぬ」だって、可愛い〜。

想い想われ同士だった友右衛門と数馬。ひしっと抱き合い、あらもうそっち方向へ?はやっ。

灯りを消し寝室へいざなう数馬。おや、慣れてるねえ。閨ではすっかり主導権を握ってる。くるくる、あ〜〜れ〜〜、と帯を解かれているのは友右衛門のほうでした(笑)さすが殿の寵愛を受けてるだけあるわ。勿論、数馬は殿の色小姓だよね〜。

にしてもシルエットロマンスなラブシーンは正直こっぱずかしいんですけど。なんというか正視できなかったっす。あ、いや観てましたけどね、どこに焦点合わせようかな?とか。目がうろうろして終わってしまった私…もったいないことしたかも。でも、再演の折にはシルエットじゃないのがいいなあ。押し倒してキス、で暗転とか。

このラブシーンを目撃していたのは観客だけではなかった。そう!あざみちゃんがですね、見ちゃってたんですよ。「恋しい人を男に寝取られるなんて〜」きぃ〜。なんて可哀想なあざみちゃん。すいません、笑いのツボでした、ここ。そうよね、女に取られるならまだしも男に取られちゃ、どうしようもない。でも諦めないのがあざみちゃんの良いところ♪

コトが終わった友右衛門と数馬。数馬が袴を、ふんっと気合入れて結びながら出てきたのは生々しかったっす(笑)友右衛門のはだけまくりな着物は染ファンへのサービスショットでしょうかあ。生足たっぷり。つい凝視な私…えっ?

想いがかなった友右衛門、自信がついたんでしょうかね。凛々しさが戻ってきたというか、へたれ具合が減りました。声の調子がね、違うわけで。

でも数馬のほうが上手です(笑)ここで友右衛門に自分に仇がいることを告白。力を貸してねっ、もう逃さないわよっ。ちょっと計算ちゃんな数馬くん。

ということで、めでたく?義兄弟の契り。お互いの血をすすりあう姿はさっきのラブシーンより色っぽいんですけど。

あざみ、殿へ告げ口です。このご注進のせいで「不義密通の疑い」で捕まえられちゃう数馬。捕まる前に長持ちに友右衛門を隠すわけですが(すっかり間男な友右衛門)なぜに鍵をかける〜〜〜。逃げられないじゃん。

「細川屋敷内広間の場」
細川の殿様@段治郎さん、奥方様@吉弥さん登場。姉さん女房なのねん。でも仲良さそうかも。

不義密通がバレた友右衛門と数馬。殿の前に引き出された友右衛門たら、長持ちのなかで袴をはいたわけ?

細川のお殿様(細川越中守)、怒りまくり。そりゃあ、可愛い数馬を身分卑しい男に寝取られちゃったんだもん、怒るよねえ。「手打ちにしてくれるわ」と激高しております。

友右衛門と数馬、庇い合っております。らぶらぶなのね。いちゃついてるいるようにしか見えないし〜。

友右衛門、まっすぐに殿と顔を合わせて命をかけて覚悟の訴え。殿、その姿に惚れたでしょ?ねえ、ねえ?俺好みかも…とか思ったに違いない。いきなり、寛大になったのはそのせいだよね、とか思った私。数馬の仇討ちにもちょっと惹かれたんだろうけど、それより友右衛門の男気に惚れた、のほうが正しそう。あっ、顔も好みだったりして?美形好きな殿様だしね。

んで、友右衛門はこの太っ腹な殿様に感動したよね。許してくれた殿様に命かけることをここで決めたんじゃないかね〜。見つめ合う殿と友右衛門にもうひとつの愛があったことを疑わないわっ。あっ、腐女子発言ですか?これ?

結局、二人を許し、友右衛門を武士として取り立てて、数馬を友右衛門預かりにして満面の笑みの殿様。俺って、俺って、いい男(じーん)とばかりに自分に酔う殿様、素敵すぎ。お気に入りを二人も側におけるのが嬉しいんでしょ〜。

まるく収まったかにみえたそのなかで一人茫然自失なあざみちゃん。どーしてそうなるわけ?頭真っ白、ぽかーん。ああ、なんて可哀想なあざみちゃん(笑)

<第二幕>
「本石町玄庵宅の場」

幕開けはチャリ場。思いっきり遊んでます。お昼休憩でゆるんだ客を舞台に集中させようという魂胆かな。

NHK教育で染ちゃんがやっている「歌舞伎たいそう」を踊り始める面々(國矢、喜太郎、福太郎、はしの)。一緒に踊りたいなあと思ったけどさすがに恥ずかしいのでやめた(笑)

紫之助@國矢さんの父ちゃん近江屋判兵衛@欣也さんの「何をしのすけ?」が可笑しい。

紫之助の芝居好きは血でしょ〜。父ちゃんもすっかりノリノリで芝居してるじゃん(笑)

玄庵先生曰く「芝居狂いは医者には治せない病気」。どきっ!わ、わたしのこと?

様々な小ネタがいっぱいありましたがそれは他の感想ブログでどうぞ。すいません、お笑いはあんまり知らないのです。ハンカチ王子はわかったけどね…。

チャリ場が終わったら本筋へ。四年間も音信不通な友右衛門を心配する玄庵先生。そこへ友右衛門と数馬がっ。つーか、なぜに四年間も音信不通なわけ?どう考えても解せないんですけどっ。友右衛門の律儀でマジメな性格から言って親代わりの先生夫婦や妹きくちゃんを四年もほっておくわけないと思うのよねっ。しかも細川の殿様がちゃんと友右衛門の元主人の秋山家に筋を通してくれてるわけだし、音信不通をする意味がないわけで。そりゃ、物語的にいくと、きくちゃんと連絡とったら横山図書の正体が早々にバレる危険性はあるのだけど、そこは色々考えて欲しかった<脚本家の今井先生っ。

手紙のやりとりはしててもその時点では図書が数馬の敵とイコールにならなくて(ほら、姓が違ってるし今の立場的にまさか会津藩にいた図書とは思っていなかったとか)、たまたま最近、夫が脅されているのに気が付きどうもヘン?と思ったきくちゃんが兄を呼びよせて相談したら、って展開でもいいんじゃない?

友右衛門がその四年ゆえに家族に薄情なキャラになるのは、どうしても解せないっ。恋に盲目ゆえに出奔したのまではわかる。でも落ち着いたら色んな部分で筋を通す男であってほしいのよ。だからこそ、ラストの殿への忠義の覚悟が際立つんだからさ〜。

それでもまあ、友右衛門が本当に申し訳なさそうに謝ったり、自害しようとしたきくちゃんをそのまま置いていくのが辛そうにしている姿があっただけでもまだしも救われましたが。でも曲がりなりにも妹の夫が数馬の敵だった、という部分で一瞬でも数馬の助太刀を逡巡してしまう、とかそういう部分が欲しかった。きくちゃん、「兄に任せろ」という言葉を信じて待っていたと思うよ。兄としては全然ダメじゃん。そんなのやだ〜。

んで、ここでの数馬の態度がまた物足りないというかちょっと薄情に見えたというか…。もう少し愛する友右衛門の家族に対して愛情を持って欲しかったりしました。なんだか紹介されてもそっけなく見えたんだけど…。ここの場は友右衛門の義兄弟なら家族も同様と言うってくれてる玄庵夫婦やきくちゃんに、「これから私を弟と思っていただき末永く仲良くしていただきたい。これからはちょくちょく伺わせていただきます」とか。なんていうのかなあ、親しみを感じてる、な雰囲気を出して欲しかった。それがあれば、最後、数馬はちゃんときくちゃんを責任もって世話をしてくれるだろう、って思えてきくちゃんが救われるんだけどなあ。図書が敵と知れた後、ほんとに敵を討つことしか考えてないんだよねえ。きくちゃんを心配する友右衛門を無理矢理引っ張っていくし。うーん、うーん、もう少しきくちゃんへは申し訳なさを見せてくれても…。

にしても、きくちゃんは図書と幸せだったらしいから、この後の展開は本当に悲惨。夫も殺され、頼りの兄も死んでしまうんだもんなあ。

友右衛門と数馬、細川のお屋敷へ一目散へと走り出す。客席まわってるよ。あーん、通路脇の席に座りたかったっ。

数馬がこけて、友右衛門が助け起こそうと「数馬!」って呼ぶシーン好き。というか染ちゃんのその心配そうに数馬を呼ぶ声が素敵…ああ私もその声で呼ばれたいっ。

「細川屋敷内広間の場」
なぜに細川家に図書がいるんだ〜都合良すぎ(笑)細川の殿様となごやかに歓談。酒を断ってるとは、図書も悪人じゃないんだよね。心が弱いだけで…。でも同情できるキャラだと数馬のあだ討ち部分がちょっと複雑な気分になりまする。

図書と入れ違いに友右衛門と数馬が殿にお目通り。わざわざ奥方自ら取次ぎしてくれるなんて照葉様もこの二人はお気に入りのなのね。わかるわ、その気持ち♪

殿は殿で数馬のあだ討ちのために図書を屋敷から出させないようにするなんて、四年たってもやっぱりお気に入り。

「奥御殿仇討ちの場」
細川の家臣たちに足止めを食らう図書、だけど強い強い。さすがは剣術指南役。猿弥さんは体つきのわりに身のこなしが軽いです。

逃げ惑う図書に「数馬の命を助けてくれたら逃がしてあげる」とはあざみちゃん、なんですとー。四年たっても、男に取られてもまだ数馬のことが好きやったんか。哀れじゃ。でも火付けは死罪だぞ〜。考え直せっ。友右衛門が殺されても数馬があざみちゃんになびくとは到底…。恋は盲目。

数馬、なぜかお着替えして図書を追いかけてきましたっ。さっそく戦いに挑む二人。数馬、ひらりひらりとなかなかに華麗な殺陣です。でも図書のほうが上手でちょっと押されぎみ。

あざみ「数馬を助ける約束のはず、嘘をついたのねっ」とすがるも図書「偽りではない、方便じゃ」。おー、この台詞は使える(笑)こういうとこは小ずるい図書。ようやく悪人ぽくなってまいりました〜。

あざみちゃん、激昂のあまりか、数馬を助けようとしてか短剣片手に図書に挑みます。よろよろ弱々で、はっきり言って邪魔っ。数馬の邪魔をしているようにしか見えませんっ。

数馬、大ピーンチ。ようやく来ました、来ました友右衛門。やっぱりお着替えしてるし…(笑)あっでもそのブルーの衣装お似合いよ。

友右衛門と図書の立ち回りは、出来る者同士な殺陣なのでスピード感が凄まじいです。早すぎて太刀筋が見えないくらい。とにかく見ごたえありです。21日夜の時は図書の刀が曲がってましたし。一歩間違えるとほんとに怪我するんじゃないかと。にしても染ちゃんの殺陣は本当に鋭くて綺麗だなあ。猿弥さんも負けじと軽やかに動いていたし、この二人の殺陣はもっと見たかったなあ。

友右衛門、図書に致命傷を負わせたところで、トドメは数馬に任せます。愛だわね。

そこへタイミングよく細川の殿様登場。最後のトドメを刺すところを見届けます。見たかったんでしょうなあ。たぶん、二人の剣修行を折に触れ見ていて腕前を信頼してたんじゃないかと。よくやった、と目を細めて嬉しそう。

が、めでたしめでたしと言っていられない状況がっ。まずはあざみちゃん、自分のしでかしたことに顔面蒼白。もう死ぬしかない、と自害しようとするけど数馬に止められちゃう。でもここは死なせてあげたかったなあ。「寛大なご処置を」って、たぶんさすがの細川の殿様でも火付けを庇うのは無理ぽな気がする…。よしんば寛大な処置で命を永らえても、あざみちゃん辛いやね。

あざみちゃんが引き立てられる時、数馬は辛そうな顔をしている。自分ゆえにあざみちゃんを狂わせてしまったのがわかっているからねぇ…罪な男じゃ。友右衛門は目を合わせようとせずまっすぐ前を向いている。それがあざみに対する思いやり、のように思えた。ライバルに哀れみの目を向けられるほど屈辱なことはないからねえ…。

それから屋敷中に火が回って大変な状況ですっ。照葉様、キンキラな防災頭巾がお似合いで…。

宝物殿にも火がまわりはじめたということで殿様が「家康公から賜りし御朱印状を焼失したら、細川家の一大事」と取りに行こうとします。そこは友右衛門、殿の恩義に報いるためにと自分が行く決心を。見つめ合う、殿と友右衛門。ここの場、お互い気持ちがピーンと張ってて目と目でも会話してた、ような。

すでに死を覚悟した友右衛門、一緒に行くという数馬に「殿と奥方をお守りしろ」と置いていく。今生の別れと知りつつきっぱりと一人、宝物殿へと向かう友右衛門。あだ討ちを遂げることができたし、数馬は一人でやっていけると確信できていたからこその行動かな。数馬より殿への恩義を優先した友右衛門。もうひとつの愛に殉じることにしたんだろう。それだけ数馬のことも信頼してたわけで。だって数馬強い子だもの。

一人、駆け出す友右衛門が、かっこいいんだよ。花道七三での低い見得の美しいこと。そして走り抜けるその姿が大きく見えた。惚れ惚れ。えーっと、かなりの贔屓目ですが染ちゃん、花道立たせると日本一!って言いたくなった。

「宝殿炎上の場」
火事が屋敷中に飛び火した訳は猿と犬と猫のせいですってよ、奥さん(誰だよ?)。猫の尻尾パタパタに煽られた火が宝物殿までっ。

会場中が煙に巻かれはじめましたっ。もくもくと視界も曇ってきます。真っ赤な照明に照らされた幕がゆらゆらと揺らされ、臨場感たっぷり。ハイテンションな講談師のナレーションも手伝って、ドキドキワクワク。

花道から友右衛門登場。あれ?スレンダーな友右衛門が体格がよくなってるぞ〜。数分の間に太ったか(笑)着物がすでに焼きただれ、炎が付き、ぶすぶすと煙がふいております。(この装置を仕込んだ着物のせいで着膨れ友右衛門なのであった)

火が噴く(本火もあり)なかを走り回る、走り回る友右衛門。百廻りのスピード、はやっ。キレがいい回転じゃのう。しかも普通より長くないか?ふええ、なんだかこちらの気分もヒートアップしてきちゃう。もうね、見惚れてるだけでした。

友右衛門、まさしく命がけ、真っ直ぐに、なんのためらいなく御朱印状を守るためだけに。火が付いた御朱印の箱(これも本火だった、やけどしなかったかな?染ちゃん)を見つけ、中から御朱印状を取り出し逃げ出さんも、火の手に囲まれ絶対絶命。死を覚悟した友右衛門、布の包んだ御朱印状を口にくわえ、ふっと一瞬目を閉じ、おもむろに刀に手をかける。この時友右衛門が思い浮かべたの数馬?細川の殿様?どちらだろう。私は殿かな?ってちょっと思ったのでした。殿のために、今そこにいるのだから。「殿、この友右衛門、命をかけて御朱印状を守ってみせます」と心の中で呟いたんじゃないかなあ。この一瞬の友右衛門の静謐さに胸打たれた私なのでした。

そして切腹。ここがまた一気に妙なハイテンションになる切腹で(笑)切腹して次々に内臓を取り出す友右衛門。そこの講談師の語りは「これが肝臓、これが腎臓、これが小腸。三つ合わせて勧進帳(肝腎腸)ーっ!」。おーい、そこでギャクかよっ。どうやら元々、講談にあるオチなんだそうですがっ。ここは賛否両論凄まじいですけど、私は実はアリでした。なんつーの、笑いに落としてはいるけど、切腹する友右衛門の迫力は衰えてなかったから。でも、思いっきり悲壮感ある切腹も見たいとは思うよ、勿論。

噂の火の粉、キターー。うわあ、きれい。三階から見ると、赤いセロファン紙がキラキラしてほんとに火の粉のように見えた。次の日、一階で観劇した時は火の粉を浴びるのが嬉しくて(笑)

火事場はとにかく生で見ないと興奮は伝わらないと思う。まさしくエンターテイメントでした。

「奥庭仮御座所の場」
友右衛門の見事な死体ぶりに目が釘付け。ほんとにピクリとも動かない。体からまだ煙が燻っていて、顔にも火傷の跡がクッキリと。でも美しい死顔でした。壮絶な死にかただったけど満足して逝ったんだろうなあ。へたれで可愛い友右衛門から後半、凛々しい友右衛門に変貌しておりました。

数馬の「義兄上様いのう〜」と泣きじゃくる姿は可愛らしくも哀れ。すっぱりと置いてかれちゃったんだもんね。

細川の殿様、泣きそうな顔してたよ。堪えきれないものが体から溢れていた。うん、そうだよね、殿様、友右衛門のこと本当に好きだったんだよね。こういう表情をしてくれてありがと、段治郎さん。殿と友右衛門の絆、確信させていただきました(笑)

ここの場面、家臣たちもみんな本当に辛そうに泣きそうな顔してるの。なんだか感動しちゃったな。なんだろう、友右衛門が亡くなったことを皆が惜しんでるってすごーくよく伝わってきた。それがこの芝居の座組みのお互いの信頼度にも繋がって気がして。

数馬、一人取り残されて…。歌舞伎ぽくないエンディング。どうなんでしょ、ここ必要かな?うーん、切ないシーンと言えばそうなんだけど、バックにはムード歌謡だし…。

数馬は友右衛門がいなくなって初めて友右衛門のことを本当に愛していたんだ、と思い知らされたのかもしれないなあ、なんてネ。今までは愛されるのが当たり前だったから。

嘆く数馬の背後に見守るように在り日の姿の友右衛門。幽霊キターー、つーか、おまえは『阿修羅城の瞳』の翼鬼(椿)かよっ。桜の代わりに杜若の花びらがハラハラと。

【まとめ】
ということで私のツッコミ感想は終わりとさせていただきます。実際、まさしくこのツッコミをしながら観てました。今回の復活狂言、全体的にはまだまだかなり荒い芝居だったと思います。でも若さ溢れるパワーがそこにありました。面白い芝居を作り上げようという想い、観客を楽しませようとする心意気、それが十二分に伝わってきました。楽しくて楽しくて、爽快感とパワーをもらえた芝居でした。この芝居に関わった全員にありがとうを!


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