文芸投稿発表作品

gon
名前 : gon(ゴン)
gonjirojp@yahoo.co.jp
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題名:「やさしい唄」
 
こころあそんで
だれとあそぶ
とおいおくにのしらぬひと
いしけって
かえるにあたって
しらぬおひとのこころがひらいた
 
こころあそんで
あなたとあそぶ
ひーろいそらのしらぬくも
あめふって
ちょうちょにあたって
しらぬおひとがかさをあてがった
 
こころあそんで
ほしぞらあそぶ
どこへいってもしらぬゆめ
あさがきて
おひさまあたって
しらぬおひとのおめめをひらいた
 
こころあそんで
ばったがあそぶ
きちきちとんでしらぬくさ
つゆおりて
しもがかさなり
しらぬおひとがなみだをながした
 
こころあそんで
 


題名:「ねむい春」

 
公園の桜木は
いまだにさみしそう
蕾を出したり引っ込めたりして
 
わたしがそうなのだ
臆病に
もう季節が終わったように装い
 
開いた手に
陽が射し
握りしめると闇になり
 
紛らわしい生の息づかいが
うるさく吸って吐いて
ひとり丘に佇んで
 
これからも佇んで
飛んでくる蝶と
ねむい春を戯れて
 

 
題名:「遠い雑踏」
スクランブルは
ときとして生き方を変える交差点
往ったり戻ったり
まわったり
出会ったり別れたり
そして ジグゾーパズルを埋めていく
1ピースから1000ピースになり
ほったらかしの感情が増えていき
知らない色や形で
新しいゲームをつくり出す
 
ナンパ通りの昼下がり
所在なげに歩く女
いまを駆けめぐっている男の目
連れ添い歩く楽しさより
行為の消化で充足したい人たち
 
ガラス張りのビル壁に
自分と向き合い
雑踏の中で 個 が 孤 になる
 
夕暮れは昼と夜の別れどき
 
盛り場の路地の
なお路地裏は
ゴミ出しにしか使われない
ちょっとすえた生活の場
シンナーのビニール袋が
少年のいらだちを
地面に残す
 
性別をクリアーした会話が
夜にくっついてきた
イエスかノーか
好きか嫌いか
うまいかまずいか
金持ちか貧乏か
ビルと歩道の直角が
揺るぎないように
好みと主張にこだわる
是と非しか存在しない思い込みに
街の夜は悲しい音を出す
 
それが融けていくとき
あふれる光と陰で
男と女は
デジタル感情を終え
指と指の軽い触れ合いを知った
おでこをつき合わせて
しわとしわに笑い
街は生き返る
 
霞んだ物憂げなサンライズ
昨日を噛みしめ
つなげたい今日
忘れたい今日
その狭間は
ビルの無機質を覆い
ひとの営みに
なにかをつくっていく
 
遠い雑踏の中で
スクランブルは暖かくなっていく
 

題名:「駿河の惨次」
“おひけぇなすって
手前の出自、おそれながら徳川初代のご隠居場所、駿河にござんす 駿河駿河と申しましてもいささか廣うござんす 浅間神社にお参りし 富士の御山を駆け登り 白い花弁の端取草(ツマトリソウ)を眺めつつ 「白波うち寄する駿河の国」は鷹匠町と発します”
 
粋と遠く離れて
泥の道を這いずり回って
股旅者はそれでも粋がって
生きる術(すべ)だとすがりついて
きょうもあしたも
「おひけぇなすって」
 
そもそもだ
鷹匠町にハグレ者など居はしない
嘘偽りがみえみえでも
虚勢を張って
二尺七寸の長脇差(ながどす}ばかりを
見せびらかしては意気がって
 
一体てめぇは何者なんだ
血の雨降らした訳じゃあるまい
竹槍に向かった訳じゃあるまい
ささくれ立った三度笠から
ウロキョロ目の玉を右左
今日もドヤはお堂の中
人生「凶」にまっしぐら
情けないうらぶれの
なまくらの凶ともなれば
久方ぶりの賭場で丁半でもあるまい
 
小銭をかすめて
地蔵さんの饅頭喰っては
青息吐息の日々じゃあねえか
それでもおまえは
あきらめずしがみつき
六十五年の歳月(としつき)に
何を得たやら知らないうちに
長脇差は三本目の足となり
よたらよたらよろめいて
「おひぃかぇなすぅぅって」
 
惨次は今日も粋がり
酒を喰らって肝を傷め
明日をも知れねぇ命をも
永らえるにどんな訳があるっていうんだい
 
それにしても
それにしてもだ
「いい生き方だったぜぃ」と
何時どんなときに言うつもりなんだ
そもそもこれからも生きるおつもりかい?
斜めに構えて
錆びついてぎくしゃく歩いて
渡世の仁義も忘れ果て
喰い意地色気もどこへやら
 
世の中薄っぺらな「狭間」じゃねいか
深刻ぶった顔つきほど中身はねぃが
かといって
どんな面構えをつくったら
いいというんだぃ
 
それでも前を見据えて
ススキをくわえて
川端沿いに歩いていくか
なあ 惨次
 

題名:「無題」
こころあそんで
だれとあそぶ
とおいおくにのしらぬひと
いしけって
かえるにあたって
しらぬおひとのこころがひらいた
 
こころあそんで
あなたとあそぶ
ひーろいそらのしらぬくも
あめふって
ちょうちょにあたって
しらぬおひとがかさをあてがった
 
こころあそんで
ほしぞらあそぶ
どこへいってもしらぬゆめ
あさがきて
おひさまあたって
しらぬおひとのおめめをひらいた
 
こころあそんで
ばったがあそぶ
きちきちとんでしらぬくさ
つゆおりて
しもがかさなり
しらぬおひとがなみだをながした
 

題名:「浪花節は死んだのさ其の一」
コンスタントが現世のならいになり
マニュアルが生き生きと蠢いている
ヒトは個として羽ばたいているのだろうか
 
”無宿人と人は呼ぶー
 なんの因果か聞かれもせずー
 口にも出さない昔事
 錆びた長脇差(ながどす)ただ重く
 メシ屋の片隅薄暗いー
 今日はきのうの続きだとー
 芋を串刺しあんぐりと
 口に入れては舌で押し
 この一膳が食い納め
 さても重い空の下
 出てはみたけど雨しずくー”
 
このような日
物欲しげな もの憂さというのだろう
空っ風のときは雨は降らないのに
それが同時に来た
生理で生きて
倦怠で実感する老醜なのか
 
体の臭味は知ってはいる
胡乱な目つきといわれないように
溌剌としたメン玉の上下運動を試してみる
空が曇った春の霞みに
きょうも呻いて目を閉じる
 

題名:「浪花節は死んだのさ 其の弐」   
そう遠くない日本に
一節唸る 浪花節があった
”伊兵ェは赤子を抱き上げてー
 「おまえのカカァは土の中。
  いまさら泣いても追っつかね。
  俺の指でもしゃぶれよ」とー
  土くれだらけの親指を
  そっと赤子にくわえさせー
  涙しぼって見る空はー
  赤く染まってカラス鳴くー
  伊兵ェ、あしたはどこへ行くー”
 
世の母と娘は さぞ
悲しい運命(さだめ)にのせられて
目をつぶって顎を突き出した浪曲師の
唾飛ぶ最前列にまばたきせず
おのれの流れを知ったつもりで 涙する
 
深く澱んだ怨念を聴いて
このサビも生きる糧だった
現在(いま)が我が世と信じたつもりが
湿り気の多い気合いとなって
ああ、日本人だと知る季節(とき)なのか
 
義理や人情、心意気
任侠の世界に育った男伊達も 
ITとやらに呑み込まれ
白髪頭を振り立てて
口泡とばしても時計は動く
哀しい波は息つく間もなく押し寄せ
目やにを擦ってまわりを見渡し
軒昂はあってもつい溜息か
 
「なんかブラックホールだな・・・」
負け惜しみの独り言に もはや
浪花節はない
立ち上がって生きようと
群れなし枯れたセイダカアワダチ草の
その根のたくましさを憎たらしく
け飛ばしてみた
 

題名:「ヤマ(炭坑)の跡」
ヤマは燃えとったばい
五郎太夫の時から燃えとったとばい
明治大正昭和と
日本を引っ張ってきたばってん
油がしゃしゃり出てきて
おれは燃え尽きたと
仕方なく火を消したとよ
 
♪御底からー 百斤篭 荷なうして
   艶で来るサマー わしがサマー
      ゴットン ドッコイ
 
炭坑(ヤマ)の男は
どうしていいかわからんかった
鳥取から出てきた欣しゃんは
古里にも戻れんかったと
ばってん
そんな人ん 大勢おんなしゃるけん
寂しかなかと
 
炭住の松原乃湯が無くなってしもた
煉瓦の煙突だけを残して無くなってしもた
 
ヤマの男ん汗は いま
地中にもぐってくさ
くーさい匂いば
坑道に浸みこんじょるばい
 
おじいしゃん、おばあしゃん
元気しちょうとや
おじいは近くのスーパーで買ってきた
ワンカップの酒ば
おばあは小さな缶ビールば畳の上に置いた
 
ボタ山の三角錐は鋭く蒼空を裂き
ハッパの余韻は夜泣きの子守歌
 
今でも7割がた、石が眠っているという
 

題名:「こそ泥お花」  
腰巻き捲って
これと目を付けたさる商家に
そぞろにもぐり
目の先一尺斜めにかまえ
 
ユッタリヌッタリ
 
遠い廊下の向こうには
きっとあたしを待っている
「あたし」がいるとは知らないで
いよいよまなこは細くなる
 
刻(とき)は進み
暮六(くれむつ)になって
お花は雨戸をこじ開けた
 
ユッタリ ヌッタリ
 
軋む足下に苛立って
とうとう
跳ねはね跳んで跳ね跳んで
奥座敷にたどり着き
 
襖の桟に水垂らし
引いては戻す躊躇いは
何の因果か知らないが
恐い半分興味半分
 
エイと開け放ち
見えた暗闇はおのれの心か
火打ちカチカチ行燈に
灯した光は自分のまなこ
 
お花は盗むか盗むまいか
迷っているうちに
まなこに見据えられ吸い取られ
自我のなかに還っていった
 
ユッタリ ヌッタリ
 
永劫回帰に包まれて
お花は自分を盗んで自分に盗まれ
はてさて幸せいかほどと
今夜も腰巻き捲りあげ
盗人稼業に精を出す
 
死に装束は似合わないと
男に言われたお花の心情は
緋色の腰巻きをまとうことで
その迷いに応えた
 
蹴出しの風は
畳の埃を払い舞い
朝の一条の陽が差す障子の穴に
掌をかざして
真っ赤に透き通った一点に
自分の色をみつけた
 
陽光(あかり)を盗んでケラケラ笑い
「ああ、あたしはお花だよ」
現在(いま)を愛して今夜も
ユッタリヌッタリ忍び込む
 

題名:「河内節もどき」     
♪サテモーみなさま この世のおもしろさ
 人が人ゆえ つくり出す
 やきもちこころが 宙を舞い
 今日も横目で エエェエエエー
 ガン飛ばす
 
 暴走族のアンチャンはァ
 爆音ふかして 蛇走り
 とにかく群れては パイプ振り
 カッコばかりが いかめしく
 ひとりじゃ 喝上げされるほう
 「これが若さだ 青春だ」
 
やることないから たむろして
 弱い人間 みっけては
 よってたかって いたぶって
 ついでに財布 ひったくり
 人の迷惑 楽しんで
 ゾクだカシラと 粋がって
 仲間内の 小さな世界
 やがてヤクザに 引っかかり
 抜ければ リンチの花が咲く
 
 ワイの考え いうたろか
 世間は広いぞ 意地がありゃ
 チマチマ日本を 飛び出して
 アジア、アフリカ、ヨーロッパ
 南北アメリカ、オセアニア
 行きたきゃ 南極、北極と
 バシリの君を 待っている
 ついでに困った 人助け
 自分のメシを 分けてあげ
 子供の垢を 落としたり
 急病人を 助ければ
 アンチャンほんとの 侠客だ
 
 サテモーみなさま この世の面白さ
 お山が 茜に染まっても
 最近カラスは 帰らない
 ついでに子供も 帰らない
 親子共々 鳴き声は
 「ケータイ ケータイ」 
 
 いまはどうだろ 世の中は 
 乾いて千切れた 愛の風
 心離れて  エエェエエエー  
 きょうも 乱れ飛ぶゥ
 

戻ります

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神奈川県 蒼天社